Elvis Presley - Elvis Presley (1956)
Elvis Presley 1956

Elvis Presley - Elvis Presley (1956)

Rock Rock & Roll Rockabilly

Elvis Presley / Elvis Presley(1956年・US盤)

エルヴィス・プレスリーのデビュー・アルバム『Elvis Presley』は、1956年にRCA Victorから登場した作品で、ロックンロール史の中でも特に重要な位置を占める1枚だ。収録内容は、1954〜55年にSun Studioで録音された5曲と、RCA移籍後初のセッションとなる1956年1月のナッシュビル録音、さらに同月のニューヨーク録音を合わせた全12曲構成。まだ若い時期のプレスリーが、Sun時代の荒々しい感触と、メジャー・レーベル移籍後の音作りを同じアルバムの中で並べて見せる内容になっている。

この盤はUSリリースの初期盤で、レーベルはRCA Victor LPM-1254。リリースノートにある通り、ラベル中央には“N E W O R T H O P H O N I C” HIGH FIDELITY の表記が入り、ジャケット右上にはグリーンのロゴボックスが置かれている。モノラルLPとしての時代感がそのまま残る仕様で、後年の再発盤とは見た目の印象もかなり違う。1950年代半ばのRCA Victorらしい、整った商業盤の体裁の中に、当時の新しいロックンロールの熱がそのまま封じ込められている。

作品の位置づけ

エルヴィスにとって本作は、単なる初LPではなく、全国区のスターとしての輪郭を決定づけたアルバムでもある。RCAがSun Recordsから契約を買い取ったのは1955年11月21日で、当時としては非常に大きな投資だった。その後に制作された新録音と、すでに存在していたSun録音をまとめたこのアルバムは、プレスリーがローカルな存在から一気に大衆市場へ移っていく過程を示す資料でもある。

収録曲の中では「Blue Suede Shoes」「Tutti Frutti」「I Got a Woman」など、のちに代表曲として繰り返し参照される楽曲が並ぶ。カバー曲中心の構成だが、当時のロックンロールが持っていたR&B、カントリー、ゴスペルの混ざり方が、曲順の流れの中でそのまま伝わってくる。いわゆる“完成されたアルバム”というより、若い歌手の勢いと選曲の力で押し切るタイプの作品で、そこに初期ロックの性格がよく出ている。

聴こえ方と演奏の印象

実際に耳を通すと、まず声の近さが印象に残る。Sun録音の5曲は、空気の薄い部屋で一気に鳴らしたような生々しさがあり、RCA録音に移ると音の輪郭が少し整う。その差がそのまま1枚の中に収まっているため、エルヴィスの変化が分かりやすい。ギター、ベース、ドラムという基本編成はシンプルだが、リズムの押し出し方が強く、特にアップテンポ曲では歌の入り方と語尾の切り方に独特の推進力がある。

「Blue Suede Shoes」のような曲では、原曲の持つ跳ね方を保ちながらも、エルヴィスの発声が前に出る。「I Got a Woman」ではゴスペル由来の高揚感が、ロックンロールの形式に置き換えられている感じがある。こうした曲の並びを通して聴くと、後のロック・シンガーたちが参照したのはメロディだけでなく、歌い出しの間、息の使い方、アクセントの置き方だったことが見えてくる。

ジャケットと評価

表ジャケットは1955年7月31日、フロリダ州タンパのFort Homer Hesterly Armoryで撮影された写真を使用している。長くPopsie Randolph撮影とされてきたが、のちの調査でWilliam V. “Red” Robertsonの撮影だったことが判明している。ピンクと緑の文字で縁取られたデザインは、後年まで強く記憶されることになり、The Clashが『London Calling』でこの構図を参照したことでも知られる。ロック史の中で、アルバム・ジャケットの記号としても機能した一枚だ。

発売後はBillboardで10週連続1位を記録し、ロックンロール・アルバムとして初めて全米チャートを制覇した作品として扱われている。初のミリオンセラーでもあり、エルヴィスが単なるヒット歌手ではなく、アルバム単位でも市場を動かす存在になったことを示す記録になった。1950年代のロックンロールはシングル中心で語られがちだが、このアルバムはLPという形式でも十分に大きなインパクトを持ち得ることを見せた例でもある。

同時代とのつながり

この時期のエルヴィスを考えると、同じくロックンロールの基盤を作ったチャック・ベリーやリトル・リチャード、カントリー寄りの感触を持つカール・パーキンスらとの比較が浮かぶ。だが『Elvis Presley』では、それらの要素がひとりの歌手の声にまとめられている点が特徴的だ。演奏スタイルの幅広さよりも、歌い手としての存在感が前面に出る。のちのロック・ボーカリストたちがここから影響を受けたのは、技巧よりも、歌そのものが空気を変える感覚のほうだろう。

RCA Victorの1956年盤という物理的な条件も含めて、このレコードはエルヴィスの初期像を知るうえで欠かせない。Sun録音の粗さと、RCA録音の明瞭さ、その両方を一枚でたどれることに、このアルバムの面白さがある。ロックンロールがまだ新しい名前だった時代の、出発点の記録として強い存在感を持つ作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Blue Suede Shoes
  2. A2 I'm Counting On You
  3. A3 I Got A Woman
  4. A4 One-Sided Love Affair
  5. A5 I Love You Because
  6. A6 Just Because
  7. B1 Tutti Frutti
  8. B2 Tryin' To Get To You
  9. B3 I'm Gonna Sit Right Down And Cry (Over You)
  10. B4 I'll Never Let You Go
  11. B5 Blue Moon
  12. B6 Money Honey

動画プレイリスト

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