Various - 2 x 10 Beat-Erfolge (1975)
Various『2 x 10 Beat-Erfolge』(1975)レビュー
1975年にGDRのAmigaから出たコンピレーション盤が、この『2 x 10 Beat-Erfolge』だ。アーティスト名はVarious、つまり複数の演奏者による編集盤で、タイトルどおりビート系の楽曲を20曲並べた内容になっている。Amigaは東ドイツを代表する国営レーベルで、ポップスやロック、ジャズの編集盤を数多く出していたが、本作もその流れの中にある1枚。単独のアーティスト作品というより、当時の流行曲をまとめて聴かせるための実用的なレコードとして作られている。
この作品のポイントは、1975年という時点でのビート/ポップ・ロックの空気を、編集盤という形で切り取っていることだ。収録曲は20曲あり、A面・B面それぞれ10曲ずつを収める構成。レーベルのシリーズ表記にはAmiga JazzやFür Dichが見えるが、本作はその中でもポップ寄りの編集盤として位置づけられる。ジャケットやレーベルの作りも含めて、東ドイツ盤らしい実用性の強さがある。
収録内容と録音の特徴
リリースノートによると、A2、A4、A7、A10、B1、B3、B6、B7、B10はRundfunk der DDRで録音されたもの。つまり、当時の東ドイツ放送局の録音資産も使いながら編まれている。こうした編集盤では、既発曲をそのまま並べるだけでなく、放送用に録られた音源を交えることが多く、レコード全体の性格が少し変わる。本作でも、単純なベスト盤というより、放送局の音源と市販盤の音源が混在する編集スタイルが見えてくる。
また、いくつかの曲はオリジナル盤より短い版で収録されている。A3、B1、B5あたりがその例として挙げられており、ラジオ向け、あるいは編集盤向けに尺を整えた形でまとめられている。こうした処理は、当時のコンピレーションでは珍しくない。曲単体の完成度を見せるというより、LP全体の流れを優先した作りだ。
Amiga盤としての位置づけ
Amigaは旧東ドイツの音楽文化を支えた重要なレーベルで、国営体制のもとでもポップスやロックを広く扱っていた。本作のような編集盤は、ヒット曲を効率よく集める役割を担っており、当時のリスナーにとっては新しい音楽へ触れる入口でもあったはずだ。西側のロックやポップが世界的に広がっていた1970年代半ば、東ドイツ側でもそうした空気を自国の流通の中で受け止める必要があった。その意味で、この盤は時代の需要に沿った編集物として読める。
タイトルにある「Beat-Erfolge」は直訳すれば“ビートのヒット”という意味合いで、60年代のビート・ブームの延長線上にある言い方だ。ただし中身は単なる懐古ではなく、1975年時点でのポップ・ロックの聴きやすさを前面に出した編集盤として機能している。ビート、ロックンロール、ポップ・ロックが同じ棚で扱われていた時代感覚が、そのまま反映された1枚だ。
聴感上の印象
実際に通して聴くと、1曲ごとの性格がはっきりしていて、テンポの切り替えが早い。20曲入りという分量もあって、アルバム単位での統一感より、次々に曲が変わる編集盤らしい推進力が前に出る。曲の長さが抑えられているものもあり、展開を長く引っぱるより、サビやリフの印象を残す作りが目立つ。こうしたまとめ方は、ラジオの番組編成に近い感触もある。
収録曲の中には、後年の再編集盤にも拾われたものがあり、単なる一時的な寄せ集めでは終わっていない。個々の曲が持つ要素、たとえばメロディの分かりやすさやリズムの立ち方が、その後も使い回されるだけの強さを持っていたことがうかがえる。編集盤でありながら、収録曲の選び方によって当時のポップスの輪郭が見えるところが面白い。
同時代との関係
同じ時代の編集盤と比べると、この作品は派手な企画性よりも、日常的に聴かれることを意識した作りが際立つ。西側の大型ヒット・コンピレーションのような華やかさではなく、国営レーベルらしい整理された構成。とはいえ、収録曲の中身はロックンロール寄りの勢いとポップな親しみやすさを持ち、当時のビート系の魅力を素直に伝えている。
『2 x 10 Beat-Erfolge』は、名盤として大きく語られるタイプの作品ではないが、1975年の東ドイツでどんな音楽が編集され、どんな形で流通していたかを知るにはわかりやすい1枚だ。オムニバス盤らしく、曲そのものの顔ぶれで聴かせる内容であり、Amigaのカタログの中でも時代の空気を強く残す資料的な存在として見ておきたい。
トラックリスト
- A1 Kati Kovács Und Locomotiv GT Rock'n Roller 2:18
- A2 Horst Krüger-Band Ich Kann Barfuß Durch Dornen Gehn 2:31
- A3 Die Puhdys Langstreckenlauf 2:23
- A4 Nina Hagen Und Die Gruppe "Automobil" He, Wir Fahren Auf's Land 2:37
- A5 Gruppe "Bergendy" Verzeih, Daß Ich Dich Liebe = Darabokra Töred A Szivem 2:56
- A6 Veronika Fischer & Band Klavier Am Fluß 3:00
- A7 Reinhard Lakomy Und Sein Ensemble Heute Bin Ich Allein 2:17
- A8 Maryla Rodowicz Und Ihre Gruppe Mary Lou = Dwe Wesela 2:10
- A9 Veronika Fischer & Band Auf Der Wiese 3:58
- A10 Zsuzsa Koncz Und Die Gruppe "Fonograf" Warum, Sage Mir = Karoly Át 2:41
- B1 Die Puhdys Wie Ein Pfeil 2:13
- B2 Horst Krüger-Band Ohne Ein Wort 2:38
- B3 OMEGA-Ensemble Sie Ruft Alle Tage Herbei 3:00
- B4 Czeslaw Niemen Dziwny Jest Ten Swiat = Seltsam Ist Die Welt 3:35
- B5 Uschi Brüning , Orchester Günther Fischer Hochzeitsnacht 2:08
- B6 Christiane Ufholz , Stephan Trepte Und Die Gruppe "Lift" Komm Doch Einfach Mit 2:25
- B7 Gruppe "General" Die Säge = A Fürész 2:25
- B8 Angelika Mann , Reinhard Lakomy Und Sein Ensemble Mir Doch Egal 3:10
- B9 Gruppe "Electra" Wenn Du Mich Fragst 2:22
- B10 László Tolcsvay Tanzmaschine 2:30