Ramones - End Of The Century (1980)
Ramones『End Of The Century』(1980年、US Sire盤)
Ramonesの5作目のスタジオ・アルバム『End Of The Century』は、1980年にUSのSireから出た作品である。パンク・ロックの最初期から走り続けてきたバンドが、プロデューサーにPhil Spectorを迎えて制作したことでも知られる一枚で、Ramonesの作品群の中ではかなり位置の違うアルバムとして扱われてきた。粗い疾走感を前面に出した初期作とは空気が異なり、音の厚みやコーラス、ストリングスの使い方まで含めて、制作の方向性がはっきり表れた内容になっている。
Ramonesの中での位置づけ
Ramonesは1974年にニューヨークで結成されたパンク・ロック・バンドで、シンプルなコード進行、短い曲、直進的なビートを武器に、後のパンクやオルタナティヴ・ロックへ大きな影響を与えた。『End Of The Century』は、そのRamonesがメジャー寄りの制作環境に入った時期の記録でもある。Sireは当時、CBGB周辺のバンドを積極的に抱えていたレーベルで、Ramonesはその代表格だった。US盤のクレジットにはWarner Bros. Recordsのマーケット表記もあり、当時の流通体制も含めて、インディー・パンクのイメージだけでは収まらない一枚になっている。
このアルバムは、RamonesのアルバムとしてはBillboard 200で44位まで到達し、全英アルバムチャートでも14位を記録している。バンドの商業的なピークのひとつとして見られることが多い。初期のRamonesを知っていると、音圧の大きさやアレンジの作り込みにまず耳が向くはずで、同時代のパンク勢の中でもかなり特殊な立ち位置にある。
Phil Spectorとの制作
この作品の最大の特徴は、やはりPhil Spectorの参加である。いわゆる「ウォール・オブ・サウンド」で知られるプロデューサーで、Ramonesの無駄を削った演奏に、逆方向から厚い音像を重ねた。録音は1979年5月にロサンゼルスのGold Star Studiosをはじめ複数のスタジオで行われた。制作費も当時としてはかなり大きく、デビュー作や2作目と比べると規模がまったく違う。
制作現場については、Spectorが細部に強くこだわったことが伝えられている。たとえば「Rock 'N' Roll High School」の冒頭のギターコードを何度も聴き返したという話は有名で、Ramones側には息苦しさもあったようだ。もっとも、当時の証言には食い違いもあり、制作の空気そのものが緊張感のあるものだったことは確かだろう。こうした背景を知ったうえで聴くと、アルバム全体の音の密度が単なる「売れ線化」ではなく、衝突の結果として鳴っていることがわかる。
収録曲と代表曲
収録曲では「Do You Remember Rock 'N' Roll Radio?」がまず目立つ。ロックンロール史への言及をちりばめた曲で、バンドの自己紹介のような役割も担っている。全英シングルチャートでは54位を記録した。「Baby, I Love You」はThe Ronettesの曲のカバーで、Spectorらしいストリングスが前面に出た仕上がりになっている。全英シングルチャート8位のヒットとなり、このアルバムの中でも特に広く知られる1曲になった。
「Chinese Rock」はDee Dee Ramoneが1975年に書いた曲で、ヘロイン中毒を題材にしたナンバー。Richard Hellとの関わりもあり、The Heartbreakersが先に発表していた曲としても知られる。「Danny Says」はマネージャーのDanny Fieldsを題材にしたバラードで、Ramonesの中ではかなり内省的な印象を残す。「Rock 'N' Roll High School」は同名映画との結びつきが強く、当時のバンドのイメージを象徴する曲として定着している。
聴きどころと印象
実際に聴くと、初期作のような乾いたスピード感だけで押し切るアルバムではなく、音の層がはっきりしている。ギターが前に出る場面でも、周囲にコーラスや空間の広がりがあるため、曲の輪郭が変わって聞こえる。Ramonesの演奏自体はいつも通り短く、直線的で、そこにSpectorの作り込んだ音響が重なることで、同じバンドなのに別の角度が見える構成になっている。
一方で、Johnny Ramoneが本作を「薄められたRamones」と評したことも知られている。パンクの速さや荒さを重視して聴くと、確かに違和感が出るアルバムだが、その違和感自体がこの作品の記録でもある。1970年代後半のパンクが、レーベルの拡大やメジャー流通の中でどう変化したか、その一端がここに残っている。
USオリジナル盤について
このUSオリジナル盤はSire SRK 6077で、1980年のリリース。クレジットには「Made in U.S.A.」「Marketed by Warner Bros. Records Inc.」が入り、内袋はカラー仕様で歌詞とクレジットを収録している。バーコードは付かず、プロモ盤にはカバーに金色の“Promotional Copy / Not For Sale”スタンプが入ったものもある。盤としては、80年代初頭のUSロック・アルバムらしい体裁だが、中身はRamonesの歴史の中でもかなり特異な一枚である。
パンクの初期衝動と、60年代ポップの編集感覚がぶつかった作品。『End Of The Century』は、その衝突の記録として今もよく語られるアルバムである。
トラックリスト
- A1 Do You Remember Rock 'N' Roll Radio? 3:50
- A2 I'm Affected 2:51
- A3 Danny Says 3:06
- A4 Chinese Rock 2:28
- A5 The Return Of Jackie And Judy 3:12
- A6 Let's Go 2:31
- B1 Baby, I Love You 3:47
- B2 I Can't Make It On Time 2:32
- B3 This Ain't Havana 2:18
- B4 Rock 'N' Roll High School 2:38
- B5 All The Way 2:29
- B6 High Risk Insurance 2:08
動画プレイリスト
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Do You Remember Rock 'n' Roll Radio? (2002 Remaster)
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I'm Affected (1999 Remaster)
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Danny Says (1999 Remaster)
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Chinese Rock (1999 Remaster)
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The Return of Jackie and Judy (2002 Remaster)
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Let's Go (2002 Remaster)
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Baby, I Love You
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I Can't Make It on Time (1999 Remaster)
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This Ain't Havana (2002 Remaster)
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Rock 'n' Roll High School (2002 Remaster)
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All the Way (2002 Remaster)
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High Risk Insurance (2002 Remaster)