The Zombies - Begin Here (1965)
The Zombies 1965

The Zombies - Begin Here (1965)

Rock Rock & Roll Beat Rhythm & Blues

The Zombies『Begin Here』(1965)

ザ・ゾンビーズの1作目にあたる『Begin Here』は、1965年の英国デッカ盤として登場したアルバムだ。すでにシングル「She’s Not There」が全米2位、「Tell Her No」が全英6位を記録していた時期の作品で、バンドにとってはヒット曲を出した直後にまとめられた初期の決定盤でもある。英St Albans出身の5人組による、ビート・バンドとしての骨格と、R&B、ロックンロールの吸収ぶりがはっきり出た一枚だ。

制作背景とアルバムの性格

このアルバムは、ツアーの合間を縫うように1964年6月から12月にかけてセッションが進められた。プロデューサーはケン・ジョーンズ。コリン・ブランストーンは当時の制作を「とにかく性急で、あっという間だった」と回想している。オリジナル曲の数がまだ十分でなかったこともあり、収録曲はカヴァー中心の構成になっている。

実際、アルバムを通して聴くと、単なるコピー集ではなく、バンドの演奏のまとまりと、すでに芽生えている曲作りの感覚が同居している。ジョーンズはワンテイクを基本に進め、バンド側の意向よりも勢いを優先した場面もあったとされるが、そのぶん生々しいテンションが残っている。足音やコインを落とす音を加えた「The Way I Feel Inside」、ジョーンズ自身が書いたインスト「Work ’N’ Play」など、細部に制作側の色も見える。

収録曲と聴きどころ

UK盤『Begin Here』は、ジャケットではタイトルを前面に出しつつ、レーベル面にはアルバム名が記されていない仕様。赤/銀のディープ・グルーヴ、いわゆる“耳”つきのDeccaラベル、フロント・ラミネートの厚紙ジャケット、紙製のポリライナー入り内袋といった、1960年代半ばの英国盤らしい作りになっている。

音の中身は、オープニングの「Road Runner」から勢いがある。ボ・ディドリー系の跳ね方を持つ曲を、英国ビート・バンドの感触でまとめているのが面白い。「She’s Coming Home」や「You Make Me Feel Good」では、後のゾンビーズらしいメロディ重視の感覚がすでに顔を出す。「I Must Move」や「I Remember When I Loved Her」などでは、コリン・ブランストーンの声の輪郭がはっきりしていて、のちの『Odessey and Oracle』へ続く入口としても聴ける。

「The Way I Feel Inside」は短い曲だが、アルバムの中で印象が残る1曲だ。静かな進行に、わずかな効果音が入ることで、他のカヴァー曲とは違う空気が生まれている。ここにすでに、ゾンビーズが単なるR&B志向のバンドでは終わらないことが見える。「Work ’N’ Play」のようなインストも、演奏力を示すだけでなく、当時の英国ビート・バンドにあった余白をそのまま記録している。

UK盤と米国盤の違い

この作品は、米国では先に『The Zombies』という別タイトル・別曲順で発売され、ビルボード200で39位を記録している。つまり、英国盤『Begin Here』はオリジナルの本国盤でありながら、米国盤とは内容が異なる。英国盤のほうは、収録曲の並びや選曲の重心がより“デビュー・アルバム”らしく、バンドの当時の立ち位置をそのまま残した印象が強い。

なお、今回の盤は1965年のUKオリジナル・モノ盤で、ラミネート・スリーブやDeccaの内袋まで含めて、当時の初回仕様がそろっている。後年の再発盤と比べると、音像のまとまりや盤面の雰囲気も含めて、時代の記録としての重みがある。

1960年代英国ロックの中で

『Begin Here』を同時代の英国ロックと並べると、The BeatlesやThe Kinksのような自作曲中心の路線とは少し違い、R&Bやロックンロールのカヴァーを足場にしている点がはっきりしている。その一方で、ゾンビーズは演奏の整い方とメロディの作り込みで個性を出していて、単なるビート・グループに収まりきらない。後年のサイケ・ポップ文脈で語られることの多い彼らだが、この時点ではまだ、英国的なR&B解釈とポップ感覚の接点を探っている段階にある。

のちに『Odessey and Oracle』が評価を高め、2019年にはロックの殿堂入りも果たすが、その出発点として見ると『Begin Here』は重要だ。ヒット曲を抱えた若いバンドが、限られた時間の中でアルバムをまとめ上げた記録。その速さと未完成さが、そのまま初期ゾンビーズの魅力になっている。

トラックリスト

  1. A1 Road Runner
  2. A2 Summertime
  3. A3 I Can't Make Up My Mind
  4. A4 The Way I Feel Inside
  5. A5 Work 'N' Play
  6. A6 You've Really Got A Hold On Me
  7. A7 She's Not There
  8. B1 Sticks And Stones
  9. B2 Can't Nobody Love You
  10. B3 Woman
  11. B4 I Don't Want To Know
  12. B5 I Remember When I Loved Her
  13. B6 What More Can I Do
  14. B7 I've Got My Mojo Working

動画プレイリスト

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