Exuma - Exuma (1970)
Exuma『Exuma』(1970, Mercury)レビュー
Exumaのセルフタイトル作『Exuma』は、1970年にUSのMercuryから登場したデビュー作である。アーティスト名と同じ題名を掲げたこの1枚は、バハマ出身のシンガー/ソングライター、Tony McKayことExumaが、故郷の民謡、ジャンカヌー、オベア信仰、グリニッジ・ヴィレッジのフォーク感覚を持ち込んで組み上げた作品集になっている。ロック、レゲエ、ファンク、フォーク、ゴスペル、カリビアンの要素が同居しているが、どれか一つに収まりきらない。歌、リズム、語り口、演奏の質感がそのまま作品の輪郭を作っている。
バハマの記憶をそのまま持ち込んだデビュー作
Exumaは1942年、バハマのCat Island生まれ。若い頃に建築を志してニューヨークへ渡り、そこでフォーク・シーンに接近した。Bob Dylan、Richie Havens、Jimi Hendrix、Barbra Streisandらと共演したという経歴も、この時代のニューヨークの空気を感じさせる。だがこのアルバムで前面に出るのは、都市のフォーク・クラブで磨かれた技巧だけではない。バハマの口承文化、祝祭のリズム、呪術的なイメージが、曲の構造そのものに入り込んでいる。
アルバムには「Exuma, The Obeah Man」「The Junk Band」「Dambala」など、作品の核を示す曲が並ぶ。「Dambala」は後にNina Simoneが取り上げたことでも知られ、Exumaの楽曲が同時代のミュージシャンに届いていたことが分かる。商業的な大ヒット作ではないが、こうしたカバーの存在が、この作品の射程の広さを裏づけている。
音の中心にあるもの
実際に聴くと、まず声の押し出しが強い。発声はフォークの語りに近い場面もある一方で、ゴスペル的な高揚や、呪文のような反復もある。曲によっては旋律よりもリズムの進行が前に出て、打楽器や手拍子の感触が先に残る。ジャンカヌー由来の祝祭感が、単なる装飾ではなく推進力として機能している印象だ。
一方で、サイケデリックな処理も目立つ。録音時に照明を落とし、キャンドルのもとで歌を進めたというエピソードが残っているが、出来上がった音像にもその空気が反映されている。音の数を積み上げるタイプではなく、空間を残しながら歌とリズムを置いていく作りで、聴き手の注意は自然と言葉と反復に向かう。ジャケットの絵画をExuma自身が手がけている点も含め、音とビジュアルの両方で世界観を組み立てた作品である。
同時代の中での位置
1970年前後のフォークやサイケデリック・ロックの文脈で見ると、このアルバムはかなり特殊だ。米国のフォーク・シーンに接続しながら、バハマの土着性をそのまま前に出しているため、北米のシンガーソングライター作品とも、一般的なカリブ音楽とも少し違う。比較対象として名前が挙がりやすいのは、民族音楽の要素をロックへ持ち込んだアーティストや、スピリチュアルな表現を強く打ち出したシンガーたちだが、Exumaはそのどれとも距離がある。
後年、この作品は「フリーク・フォーク」の文脈で語られることが多い。だが当時の時点では、そうした分類よりも先に、Exuma自身のキャラクターと世界観が立っている。タイトル曲を含むアルバム全体が、ひとりの語り部が自分の土地の記憶を都市へ持ち込んだ記録として聴こえる。
Mercury盤としての1970年リリース
今回のUS Mercury盤は1970年のオリジナル・リリースで、7桁カタログ番号導入後の時期にあたる。ゲートフォールド仕様で歌詞インサート付きという点も、この作品が単なる音源集ではなく、言葉まで含めて読ませる作りだったことを示している。盤そのものは後年の再発ではなく、最初の形に近い時期のリリースとして位置づけられる。
Exumaのデビュー作は、派手な売れ筋の作品ではないが、バハマ由来のリズム、オベアの語彙、フォークの語り、ロックの硬さがひとつの盤面でぶつかる記録として残っている。ジャンル名を並べただけでは見えにくいが、聴くほどにこの人が何を持ち込み、何をそのまま鳴らしたのかが分かる1枚である。
トラックリスト
- A1 Exuma, The Obeah Man 6:16
- A2 Dambala 5:34
- A3 Mama Loi, Papa Loi 4:32
- B1 Junkanoo 3:24
- B2 Seance In The Sixth Fret 7:14
- B3 You Don't Know What's Going On 3:27
- B4 The Vision 8:14