Various - Wayfaring Strangers: Lonesome Heroes (2009)
Various 2009

Various - Wayfaring Strangers: Lonesome Heroes (2009)

Folk, World, & Country Folk Acoustic

Various『Wayfaring Strangers: Lonesome Heroes』について

2009年にNumero Groupから出た『Wayfaring Strangers: Lonesome Heroes』は、Various名義でまとめられたコンピレーション作品だ。タイトルの通り、ひとりで歩くような感覚を軸にした楽曲を集めた内容で、フォーク、アコースティック、カントリーの周辺を静かに横断していく一枚になっている。レーベルはシカゴを拠点にしたNumero Groupで、再発・編集盤の仕事に強いことで知られる。ここでも単なる寄せ集めではなく、ひとつの視点で選び抜いた「作品」として成立している印象が強い。

この種のコンピレーションは、当時のシーンの輪郭を見せる役割が大きい。『Wayfaring Strangers: Lonesome Heroes』も、華やかなヒット曲を並べるタイプではなく、アメリカのフォーク・ロックやアウトロー・カントリー、アシッド寄りのアコースティック作品までを、孤独や放浪の気配を軸に束ねている。70年代前後の、メジャーの表舞台から少し外れた音楽の空気が、曲ごとの温度差を残しながら流れていく構成だ。

作品全体の印象

聴き進めると、派手な展開よりも、弦の鳴りや歌声の距離感が前に出てくる。録音の質感もばらつきがあり、その差がむしろこの盤の面白さになっている。ラジオ向けの整った音というより、個人の歌をそのまま切り取ったような曲が多く、演奏の隙間や息継ぎまで含めて記録されている感じがある。コンピレーションでありながら、通して聴くとひとつの旅のようにまとまるのがこのシリーズの持ち味だろう。

Numero Groupの編集盤は、資料性と聴き物としての面白さの両立に力が入っているが、このタイトルもその延長線上にある。知られざるアーティストを掘り起こしつつ、曲順の流れで世界観を組み立てる作りで、単曲の強さと全体の統一感が両立している。オリジナル盤が存在する曲と、ここで初めてまとまって触れられる曲が混在している点も、この手のコンピらしい構造だ。

注目曲の聴きどころ

この作品でまず印象に残るのは、声とアコースティック・ギターだけで空間を保つタイプの曲だ。伴奏が少ないぶん、歌詞の運びやメロディの細かな揺れがそのまま耳に入る。メロディは大きく跳ねず、語るように進むものが多いが、その控えめな動きがかえって人物像を浮かび上がらせる。孤独を題材にしていても、ただ沈むだけではなく、歩き続けるための体温が残っているのが面白いところだ。

こうした曲は、同時代のシンガー・ソングライター作品と比べると、より土の匂いが強い。洗練されたポップ性より、民謡的な反復や、ブルーグラス寄りの運び、あるいはデモ録音に近いざらつきが前面に出る。James TaylorやJackson Browneのような整った作風とは別の場所にいて、もっとローカルで、もっと素朴な記録として聴こえる場面がある。

もうひとつの軸になる楽曲群

一方で、弾き語りだけに寄らず、バンド編成で少し厚みを持たせた曲もある。ここではペダル・スティールやゆるやかなリズムが入ることで、放浪感がいっそう際立つ。テンポは速くなくても、音の層が増えることで景色が開ける。フォークの枠内に収まりながら、カントリー・ロックやサザン・ソングライターの感触へ自然に接続していく流れだ。

このあたりは、同時代のThe Flying Burrito BrothersやGene Clark周辺の空気とも近いが、より無名性が強い。誰が歌っているかを前面に押し出すというより、曲そのものの所在を見せる編集になっている。ヒット曲を追うというより、当時のアメリカの片隅で鳴っていた歌の断片を拾い上げる感覚に近い。だからこそ、派手さはなくても、曲ごとの輪郭がはっきり残る。

この盤の位置づけ

『Wayfaring Strangers: Lonesome Heroes』は、Various名義の編集盤ではあるが、シリーズの一冊として見ると、Numero Groupが得意とする再評価の姿勢がよく出ている。埋もれた音源を掘り起こすだけでなく、テーマを立てて再配置することで、当時のフォーク/カントリー周辺の別の顔を見せている。2009年のリリースながら、収録曲の時代感はもっと前に遡り、70年代アメリカン・ミュージックの周縁を現在の耳で読み直す役割も担っている。

再発盤というより、編集によって新しい文脈を与えた作品として受け取るのが自然だろう。曲単位で聴けばそれぞれの個性があり、通して聴けば「ひとりで歌うこと」のいくつかのかたちが見えてくる。静かな音量で進むが、記録としての密度は高い。フォークやアコースティックの領域を、別の角度から整理した一枚として印象に残る。

トラックリスト

  1. A1 Before
  2. A2 It's So Profound
  3. A3 As I Walk
  4. A4 No Love Lost
  5. B1 Hummingbirds
  6. B2 Ooh Pah Do Pah Do
  7. B3 R.N.B. II
  8. B4 The Tailor
  9. B5 Little Children
  10. C1 Dear Father
  11. C2 Deep Night
  12. C3 Autumn
  13. C4 Good Morning
  14. D1 Kiss Another Day Goodbye
  15. D2 I Am The Moonlight
  16. D3 Close Of The Day
  17. D4 O'Light

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