Glass Animals - ZABA (2014)
Glass Animals『ZABA』(2014) レビュー
Glass Animalsは、イングランド・オックスフォード出身の4人組。Dave Bayleyを中心にしたインディー・ポップ/ロック・バンドで、2014年のデビュー・アルバムが『ZABA』だ。ここでの盤はUK & Europe盤、Wolf Toneからの初出リリースで、ダブル・ゲートフォールド仕様、金箔の装飾入り、印刷インナー付き。MP3とWAVのダウンロードコードも同梱されている。Side Dの「Psylla」は、LPの表記やレーベル面にクレジットが見当たらない点も、この盤ならではの細部だ。
作品の位置づけ
『ZABA』は、Glass Animalsにとって最初のアルバムであり、同時にPaul Epworthが立ち上げたWolf Toneが最初に契約したアーティストの作品でもある。AdeleやColdplayを手がけたプロデューサーとして知られるEpworthは、ここでは全面的な制作主導というより、ロンドンのWolf Toneスタジオで自由な試行錯誤を後押しする役回りに近い。実際のプロデュースはDave Bayley自身が担っていて、6〜7か月かけて少しずつ形を整えたという制作経緯が残っている。
オックスフォードのインディー・バンドという出自を持ちながら、『ZABA』は当時の英インディーに多かったギター中心の直線的な鳴りから少し外れた場所にいる。打ち込み、サンプル、リズムの置き方、声の重ね方が前に出ていて、Electronic、Rock、Funk/Soul、Popの要素が曲ごとに行き来する。Indie RockやIndie Popの器に、実験性とサイケデリックな処理を詰め込んだ初期作、という輪郭が見えやすい。
アルバム全体の聴こえ方
タイトル『ZABA』は、Dave Bayleyが子どものころに親しんだウィリアム・スタイグの絵本『The Zabajaba Jungle』に由来する。アルバム全体にも、その語感に通じる湿度の高い熱帯感がある。実際に聴くと、音の配置がかなり細かい。低音は丸く、パーカッションは乾ききらず、ボーカルは近いのに少し霞んだ位置に置かれる。曲が進むほど、メロディーよりも質感の変化が耳に残る作りだ。
全体を通して、ビートは跳ねるというより粘る。シンセやエフェクトは派手に鳴り続けるのではなく、隙間を埋めるように入る。そのため、アルバムの流れにはまとまりがある一方、1曲ごとの輪郭はしっかり分かれている。派手な展開で押すタイプではないが、音の層が少しずつ増減することで、曲ごとの温度差が出ている。
「Gooey」を中心にした広がり
先行曲「Gooey」は、このアルバムを語るうえで外せない。Billboard Alternative Songsチャートで19位を記録していて、Glass Animalsの名前を広く知らしめた代表曲だ。レコーディング時には、Bayleyが“Sasha Fierce”と名付けたパイナップルを抱えながら歌ったというエピソードが残っている。ラストのコーラスでは、8種類の異なるキャラクターを演じ分けて多重録音したという話も有名だ。曲の後半で声がにじむように増えていく感覚は、その制作の仕掛けとつながっている。
「Gooey」は、甘さのあるメロディーと、少しねっとりしたリズムの組み合わせが印象的で、『ZABA』全体の方向性を短い時間で示している。インディー・ポップの枠に収まるようでいて、鳴り方はもっと変則的で、サイケデリックな処理が前に出る。ここでのGlass Animalsは、歌を中心にしながら、音の質感そのものを作品の主役にしている。
同時代との接点
『ZABA』が出た2014年は、英国のインディー・ポップやエレクトロ寄りのロックが、従来のギター・バンド像から少しずつずれていった時期でもある。Glass Animalsは、その流れの中で、Tame Impalaのようなサイケデリックな質感や、Alt-J以降の実験的なポップ感覚と並べて語られることがある。とはいえ、『ZABA』は引用よりも、音の湿度や打楽器の配置、声の扱いで個性を作っている。
アルバムの成績としては、UKアルバムチャート92位、豪ARIAチャート12位。大きな商業的ヒットを最初から取った作品ではないが、「Gooey」の広がりを通じて、Glass Animalsの輪郭がここで固まったのは確かだ。後年のポップ寄りの展開を知ってから聴くと、デビュー作としての手探り感よりも、最初から音作りの手法がかなり具体的だったことが伝わってくる。
まとめ
『ZABA』は、Glass Animalsの出発点として、メロディーの親しみやすさと、音響の実験性を同じ場所に置いたアルバムだ。Paul EpworthのWolf Toneから出た初作であり、Dave Bayleyの制作感覚が前面に出た作品でもある。熱帯の湿気を思わせる音像、キャラクターを重ねたボーカル、パーカッシブなリズム、そして「Gooey」のような代表曲。デビュー作らしい勢いと、最初から輪郭のある作りが同居した1枚になっている。
トラックリスト
- A1 Flip 3:42
- A2 Black Mambo 4:05
- A3 Pools 4:48
- B1 Gooey 4:49
- B2 Walla Walla 3:37
- B3 Intruxx 2:49
- C1 Hazey 4:25
- C2 Toes 4:14
- C3 Wyrd 4:05
- D1 Cocoa Hooves 4:31
- D2 JDNT 4:23
- D3 Psylla 3:24