Portishead - Third (2008)
Portishead『Third』(2008)レビュー
Portisheadの『Third』は、1997年の前作から長い沈黙を経て2008年に発表された3作目のスタジオ・アルバムである。バンドは1991年にブリストルで結成され、ダミー・ヘッド、トリップホップの代表格として語られてきたが、この作品ではその初期イメージをなぞるだけではない展開を見せる。電子音楽とロックの要素を軸にしながら、リズムの組み方、音色の選び方、曲の進行にかなり強い変化が入っている。
11年ぶりの新作という位置づけ
前作『Portishead』から『Third』までの11年は、バンドにとって空白の長さがそのまま作品の背景になっている。ジェフ・バーロウはツアーや私生活の変化を経て活動を止め、しばらく音楽への関心も薄れていたという。その後、ザ・コーラルの制作に関わった経験が転機になり、再び制作意欲が戻ったとされる。こうした経緯を踏まえると、『Third』は単なる復帰作ではなく、バンドの作り方そのものを組み替えた作品として見えてくる。
実際に聴くと、いわゆるPortisheadらしい陰影のある質感は残しつつ、以前よりも打楽器的な推進力が前に出ている。ビートはゆっくりでも、停滞せずに進む曲が多い。トリップホップの文脈で聴くと、かなり異質な作りに感じる場面がある。
サウンドの変化と収録曲の印象
このアルバムでは、クラウトロック的な反復や、ジョン・カーペンターの映画音楽を思わせる不穏さが取り入れられている。アナログ・シンセサイザーも多用され、Minimoog、Korg MS-20、ARP 2600といった機材名が制作背景に挙がるのも特徴的だ。音の輪郭はくっきりしていて、昔のPortisheadにあったサンプル主体の質感とは違う手触りがある。
冒頭の「Silence」は、もともと「Wicca」という題名だった曲で、ポルトガル語の語りを含むサンプルから始まる。作品全体の入口として、静けさよりも緊張感を先に置く構成になっている。「Machine Gun」は、その後の展開を象徴する1曲で、硬いビートと機械的なシンセの往復が印象に残る。終盤のシンセ・アウトロは、映画音楽的なイメージを狙ったものとして知られている。「Threads」では、ホークウインドを参照した角笛のような音色が使われており、音の作り込みがかなり細かい。
Beth Gibbonsの歌は、このアルバムでも中心にある。ただし、メロディを前面に押し出すより、曲の内部で感情の圧を保つ役割が強い。歌声がはっきり聴こえる瞬間も、周囲の音がそれを包み込む瞬間もある。そこにアルバム全体の不安定さが出ている。
代表曲と評価
『Third』では「Machine Gun」が代表曲としてよく挙げられる。アルバムの方向性を最も端的に示す曲で、Portisheadの過去作を知っているほど驚きが大きい。ほかにも「The Rip」のように、静かな立ち上がりから別の質感へ移る曲があり、アルバムの構成に緩急を与えている。
批評面でも評価は高く、Metacriticでは高得点を記録し、NMEは9/10、Pitchforkは8.8/10を付けた。2008年の年間ベスト・アルバムでも上位に入っており、復帰作としての注目度だけでなく、作品そのものの完成度が評価された流れが見える。
同時代の中での『Third』
Portisheadは、Massive AttackやTrickyと並んでブリストル・サウンドの文脈で語られてきたが、『Third』はその系譜をそのまま継ぐというより、そこから距離を取った作品に近い。ダウンテンポやトリップホップの枠組みだけでは収まりにくく、エレクトロニック、ロック、サイケデリック・ロックの要素が交差する。結果として、90年代の代表作としての『Dummy』や『Portishead』とは違う場所に置かれるアルバムになっている。
2008年という年にこの内容で出てきたこと自体が、作品の性格をよく表している。懐かしさを狙うより、時間の空白を含めて更新した一枚。Portisheadというバンドの輪郭を、別の角度から見せたアルバムである。
作品情報
- アーティスト: Portishead
- タイトル: Third
- オリジナルリリース年: 2008年
- リリース国: Europe
- レーベル: Island Records
- 収録曲で注目される曲: 「Silence」「Machine Gun」「The Rip」
トラックリスト
- A1 Silence 5:01
- A2 Hunter 3:59
- A3 Nylon Smile 3:20
- B1 The Rip 4:31
- B2 Plastic 3:31
- B3 We Carry On 6:28
- C1 Deep Water 1:33
- C2 Machine Gun 4:46
- C3 Small 6:47
- D1 Magic Doors 3:32
- D2 Threads 5:48