Jason Isbell - Southeastern (2013)
Jason Isbell『Southeastern』(2013)
アメリカ・アラバマ州マッスル・ショールズ近郊出身のシンガー・ソングライター、ジェイソン・イズベル(Jason Isbell)が2013年6月に自身のレーベルSoutheastern Recordsから発表した通算4作目のスタジオ・アルバム。元ドライヴ・バイ・トラッカーズのギタリストとしても知られる彼が、深刻なアルコール依存症からのリハビリを経て、完全に断酒した状態で書き上げた2010年代アメリカーナ/ルーツ・ロック屈指の金字塔である。
生々しい感情を捉えた一発録りとデイヴ・コブのプロダクション
レコーディングはテネシー州ナッシュビルのフォーリング・ロック・スタジオ(Falling Rock Studio)で行われた。プロデュースには、クリス・ステイプルトンやスタージル・シンプソンらを手掛けてアメリカーナ界に新風を吹き込んだ名匠デイヴ・コブ(Dave Cobb)を起用。コブはイズベルの歌声が宿すエモーションをありのままに捉えるため、アコースティック・ギターの弾き語りによる一発録り(ワンテイク)を重視した。過剰な装飾や編集を削ぎ落とし、ボーカリストの息遣いと弦の擦れる音が間近に迫る親密な音響空間を作り上げている。
本作のレコーディング完了直後にイズベルと結婚したパートナーであり、断酒の大きな支えとなったアマンダ・シャイアーズ(Amanda Shires)がフィドルとハーモニー・ボーカルで参加。彼女の繊細なストリングスと声の重なりが、アルバム全体に深い陰影と温もりをもたらしている。
人間の脆さと再生を描く楽曲群
アルバムの幕を開ける「Cover Me Up」は、自らの過ちへの贖罪とアマンダへの深い愛、そして断酒への不退転の決意を絞り出すように歌い上げた代表曲である。また、ガンに侵された女性と過ごす切なくやるせない日常を冷徹かつ慈しみをもって描写した「Elephant」や、孤独と旅情をアマンダのフィドルとともに綴った「Traveling Alone」、ロード・ムーヴィーのような疾走感を持つ「Flying Over Water」など、飾り気のない言葉で人間の弱さと再生の光を捉えた珠玉の楽曲が並ぶ。
本作は批評家筋から満場一致の絶賛を浴び、第13回アメリカーナ・ミュージック・オナーズ&アワードにおいて「Album of the Year」「Artist of the Year」「Song of the Year(Cover Me Up)」の主要3部門を独占。ソロ・アーティストとしての地位を決定づけた。
USオリジナル盤の特徴
本盤(Southeastern Records - SE-9984)は2013年にリリースされたUSオリジナル初版アナログ盤。厚手の見開きジャケット(ゲートフォールド・スリーブ)仕様で、当時のMP3ダウンロード・コード付きカードが封入されている。自主レーベルからのリリースでありながら、2010年代のアメリカン・ルーツ・ミュージック史を塗り替えた記念碑的ファースト・プレスである。
トラックリスト
- A1 Cover Me Up 4:52
- A2 Stockholm 2:49
- A3 Traveling Alone 4:27
- A4 Elephant 3:37
- A5 Flying Over Water 3:58
- A6 Different Days 3:34
- B1 Live Oak 3:35
- B2 Songs She Sang In The Shower 3:56
- B3 New South Wales 3:53
- B4 Super 8 3:25
- B5 Yvette 4:28
- B6 Relatively Easy 4:45