Love Live Life + One - Love Will Make A Better You (1971)
Love Live Life + One『Love Will Make A Better You』――日本の実験的ロックが一つの形を結んだ企画盤
Love Live Life + Oneの『Love Will Make A Better You』は、1971年に生まれた日本のロック作品で、のちにカルト盤として評価を高めていくタイプのアルバムだ。中心にいるのは、サックスの市原宏祐、ギターの水谷公生、キーボードの柳田ヒロ、ドラムの千代西健治、ベースの寺川正興といった腕利きの演奏家たち。そして“+One”として布施明が参加している点が、この作品を強く印象づける。歌謡曲やポップスの文脈で知られる布施明が、こうした自由度の高いロック企画に入っていること自体が、当時としてはかなり異色だ。
制作背景と作品の輪郭
ウェブ上の情報では、このアルバムは少量の自主制作盤として出たとされ、英語詞やヒッピー的な朗読を含む一方で、より歌ものに寄った面も持つ作品として紹介されている。AllMusicは、この盤の特徴を「片面まるごとの即興曲」と「もう片面のソング志向」の対比に見ている。つまり、ひとつの方向に収まりきらない構成が、この作品の核にある。
参加メンバーの顔ぶれも重要だ。Love Live Lifeは、1960年代のビートから1970年代のより実験的なロックへ移る途中に位置する、日本ロック史の要所として語られてきた。そこに、ジャズやソウルの感覚を持つ演奏家たちが集まり、さらに布施明が加わることで、単なるロック・バンド作品ではない広がりを持った。ProgArchivesでは、1971年2月に「有名なセッション・ミュージシャン」と布施明が集まって作り上げたアルバムとして紹介されている。
時代の文脈――ニュー・ロック、ジャズ・ロック、サイケデリックの交差点
この作品は、60年代末から70年代初頭の日本にあったニュー・ロック、ジャズ・ロック、サイケデリックの流れの中で見ると位置づけやすい。単純な歌謡曲の延長でもなく、完全なジャズ作品でもなく、ロックの枠を使いながら即興性や長尺の展開を持ち込んでいる点が特徴だ。ポーランド語圏の研究でも、People『Ceremony: Buddha Meet Rock』や佐藤允彦『Amalgamation』などと並ぶ重要作として挙げられており、当時の日本で実験性の強いロックがひとつの到達点に近づいていたことを示している。
Love Live Life自体も、1960年代のビート・グループ的な感覚から、70年代のより複雑な音作りへ移る橋渡しとして語られることが多い。この盤は、その流れをわかりやすく示す一枚だ。英語詞、朗読、即興、曲としてのまとまり、そのどれか一つに絞らず、複数の方向を同居させているところに時代の空気が出ている。
また、布施明の参加はキャリア上でもかなり異色の出来事だ。70年代初頭の彼が、歌謡曲やポップスの枠を越えてこうした企画に加わったことは、当時の日本の音楽シーンにおけるジャンルの往来を示す例として見られている。
聴きどころとして語られてきた点
AllMusicは、この作品の魅力を自由即興と歌ものの二面性に整理している。片面まるごとの即興曲がある一方で、もう片面には曲としての輪郭を持つトラックが並ぶため、アルバム全体に振れ幅がある。ここで重要なのは、演奏の巧さだけではなく、ジャズ的なアンサンブル、サイケデリックな展開、そして布施明のヴォーカルがどう組み合わされているかという点だ。
この組み合わせは、単に珍しいというだけでなく、当時の日本のロックが海外のサイケデリックやジャズ・ロックの影響を受けながら、独自のかたちを探っていたことを示している。派手なヒット曲で広く知られた作品ではないが、構成そのものが作品の個性になっている。
後世での再評価と再発文化の中での位置
この盤は、オリジナル期の商業的な大ヒット作というより、のちの再発や海外のコレクター文化の中で価値が高まった作品として扱われている。Light in the Atticの再発告知でも、海外リスナーから強い支持を受けてきた作品として紹介され、非公式ブートレグが出回ったことにも触れられている。そうした流通のされ方自体が、このアルバムの後年の評価を物語っている。
2022年のKing Records盤は、Record Day 2022の12月限定リリースとして出た再発で、オリジナルの1971年盤を今のリスナーが手に取りやすくしたものだ。オリジナル盤が少量流通の企画盤として扱われてきたのに対し、この再発盤は発掘・再評価の流れの中で位置づけられる。つまり、当時のヒットチャートを追う作品ではなく、後年になってから価値が広く認識されたタイプのレコードだ。
日本のロック史の中でも、この作品は「歌もの」と「実験」の境目に立つ記録として残っている。布施明の参加、セッション・ミュージシャン中心の編成、即興とソング志向の同居。その組み合わせが、1971年という時代の空気をそのまま刻んでいる。
トラックリスト
- A1 The Question Mark 17:59
- B1 Runnin' Free 3:41
- B2 Love Will Make A Better You 4:23
- B3 Shadows Of The Mind 8:43
- B4 Facts About It All 2:57