Dire Straits - Brothers In Arms (1985)
Dire Straits『Brothers In Arms』:デジタル時代の幕開けを告げ、世界を熱狂させた1980年代ロックの最高峰
1985年5月にリリースされたDire Straits(ダイアー・ストレイツ)の通算5作目となるスタジオ・アルバム『Brothers In Arms』(邦題:ブラザーズ・イン・アームス)は、全英アルバムチャートで通算14週にわたり首位を独占し、全米Billboard 200でも9週連続1位を記録した。全世界での累計売上は3,000万枚を超え、1980年代のポピュラー音楽界を代表するモンスター・アルバムとして語り継がれている。CD(コンパクト・ディスク)の爆発的な普及を牽引した記念碑的なタイトルであると同時に、アナログLPとしても名匠の手による高品位なマスタリングが施された至高のオーディオ・マスターピースである。
カリブ海モントセラトでのフルデジタル録音と音響美
本作のレコーディングは、ジョージ・マーティンが西インド諸島の楽園モントセラト島に設立した伝説の「AIR Studios」にて、1984年11月から1985年2月にかけて行われた。ミックスはニューヨークのThe Power Stationで仕上げられている。プロデュースはフロントマンのマーク・ノップラー(Mark Knopfler)と名エンジニアのニール・ドーフスマン(Neil Dorfsman)が共同で担当。ドーフスマンの緻密を極めた録音エンジニアリングは高く評価され、第28回グラミー賞で最優秀エンジニアド・アルバム賞(非クラシカル部門)を受賞した。
当時としては先駆的であったソニー製の24トラック・デジタル・マルチトラック・レコーダー「Sony PCM-3324」をスタジオに導入し、録音・ミックス・マスタリングに至る全工程を完全デジタル(DDD)で敢行。テープ・ヒスノイズから解放された圧倒的な静寂のなかで、マーク・ノップラーの指弾きギターの繊細なニュアンスや息遣いが極めてリアルに再現されている。
オマー・ハキムの電撃招聘とスティングの飛び入り参加
制作過程における緊迫したドラマも見逃せない。当初バンドの正規ドラマーであるテリー・ウィリアムズがドラムを叩いていたが、デジタル録音の厳格なタイム感と音像の輪郭に合致しないと判断され、急遽ニューヨークからトップ・セッション・ドラマーのオマー・ハキム(Omar Hakim)が呼び寄せられた。ハキムはスタジオに入るや否や、わずか数日間のセッションでアルバムの大半のドラムトラックを完璧に差し替える驚異的な職人技を披露した(なお、「Money For Nothing」冒頭のドラマティックなスネアのロールのみウィリアムズの演奏がそのまま残されている)。
また、キーボード奏者ガイ・フレッチャーが新加入したことで、アラン・クラークとともに壮麗なシンセサイザーの音響レイヤーが構築された。さらに、休暇でモントセラト島を訪れていたポリス(The Police)のスティングがスタジオに立ち寄ったことをきっかけに、「Money For Nothing」へゲスト参加が決定。ポリス自身のヒット曲「Don't Stand So Close to Me(高校教師)」のメロディを織り交ぜながら歌った「I want my MTV」のファルセット・コーラスは、楽曲を象徴するキラー・フレーズとなった。
収録曲の魅力:痛烈な風刺から胸を打つ反戦叙情詩まで
アルバムは、親しみやすいポップ・チューンから重厚な社会派バラードまで、ノップラーの卓越したソングライティングが余すところなく発揮された楽曲が並ぶ。
全米1位を獲得した「Money For Nothing」は、電化製品店の配達員の視点からMTVに群がるロックスターたちをアイロニカルに風刺した大ヒット曲である。ワウペダルを中途半端な位置で半踏み状態にして得られたマーク・ノップラーの太く粘りのあるディストーション・ギターのリフと、初期の3Dコンピューター・グラフィックスを大胆に採用したミュージック・ビデオは世界中に衝撃を与え、第3回MTVビデオ・ミュージック・アワードで最優秀ビデオ賞に輝いた。
陽気なハモンド・オルガンのリフとロカビリー調のシャッフル・ビートが心地よい「Walk Of Life」は、全英2位・全米7位を記録する世界的人気曲となった。オープニングを飾る「So Far Away」では静謐な旅情と哀愁が描かれ、「Your Latest Trick」ではブレッカー・ブラザーズ(マイケル・ブレッカー、ランディ・ブレッカー)やクリス・ホワイトの艶やかなサックスが都会の夜の静けさを演出する洗練されたAORの極致を提示している。
そしてアルバムの掉尾を飾るタイトル曲「Brothers In Arms」は、1982年のフォークランド紛争の痛切な記憶を着想源として書かれた厳かな反戦歌である。マーク・ノップラーが奏でるギブソン・レスポールの咽び泣くような叙情的なトーンと、ストリングス・シンセの重厚なハーモニーが溶け合い、戦場に散った兵士たちへの祈りを崇高な美しさで描き出した不朽の名曲である。
アートワークとUKオリジナルLP(VERH 25)の真価
アルバム・ジャケットを飾るのは、澄み渡るスカイブルーの空に浮かぶ1937年製「ナショナル・スタイルO(National Style "O")」レゾネーター・ギターである。マーク・ノップラー自身が長年愛用するこの名器をデボラ・フェインゴールド(Deborah Feingold)が撮影したヴィジュアルは、ダイアー・ストレイツの音楽的ルーツと本作の澄み切った音響空間を見事に象徴している。
VertigoレーベルからリリースされたUKオリジナルLP(VERH 25)は、カスタム・インナー・スリーブが付属する。当時のアナログLPの収録時間の物理的制約から、CD版と比較して各楽曲の長さが短くエディットされてカッティングされている点もコレクターズ・アイテムとしての特徴だ。マスタリングはニューヨークの名門Masterdiskにて巨匠ボブ・ラドウィグ(Bob Ludwig)が手掛けており、ランアウト部にはその誇り高い証である「RL」のイニシャルが手彫りで刻まれている。デジタル・レコーディングならではの卓越したS/N比と透明感に、アナログ盤特有の図太い中低域と豊かな温かみが宿ったサウンドは、オーディオファイルにとって今なお手放せない逸品である。
トラックリスト
- A1 So Far Away 4:04
- A2 Money For Nothing 7:00
- A3 Walk Of Life 4:10
- A4 Your Latest Trick 4:49
- A5 Why Worry 5:16
- B1 Ride Across The River 6:59
- B2 The Man's Too Strong 4:40
- B3 One World 3:40
- B4 Brothers In Arms 6:49
動画プレイリスト
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So Far Away (Remastered 1996)
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Money For Nothing (Remastered 1996)
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Walk Of Life (Remastered 1996)
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Your Latest Trick (Remastered 1996)
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Why Worry (Remastered 1996)
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Ride Across The River (Remastered 1996)
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The Man's Too Strong (Remastered 1996)
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One World (Remastered 1996)
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Brothers In Arms (Remastered 1996)
このアーティストについて
Dire Straits(ダイアー・ストレイツ)は、稀代のギタリスト/ソングライターであるマーク・ノップラーを中心に、1977年にロンドンで結成されたイギリ...
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