Black Sabbath - Black Sabbath (1970)
Black Sabbath『Black Sabbath』(1970, UK Vertigo / VO 6)
Black Sabbathのデビュー作『Black Sabbath』は、1970年のUKロックを語るうえで外せない1枚である。バーミンガム出身の4人組が、ブルース・ロックを土台にしながら、もっと重く、もっと遅く、もっと不穏な方向へ音を押し広げた作品で、後年「ヘヴィメタルの出発点」として扱われることも多い。実際に聴くと、派手な技巧で押すというより、リフの重さ、音の間、そしてOzzy Osbourneの歌い回しが前に出る。録音の空気も含めて、荒々しさがそのまま残っている盤である。
デビュー作としての位置づけ
Black Sabbathは、Tony Iommi、Ozzy Osbourne、Geezer Butler、Bill Wardの初期ラインナップで1968年に結成された。もともとはPolka Tulk Blues Band、ついでEarthを名乗っていたが、イタリアのホラー映画『Black Sabbath』に由来する現在の名に落ち着いた。このアルバムは、その名義変更後の最初のフルアルバムであり、バンドの方向性を最初に明確に示した作品でもある。
同時代のハードロックと比べると、演奏の密度よりも空気感が前に出る。サイケデリックな広がりより、湿った音像と鈍いグルーヴ。Led ZeppelinやDeep Purpleが同じ時代にロックの拡張を進めていた中で、Black Sabbathは別の入口を作った感じがある。ブルースの語法を残しながら、そこに暗さと重さを強く持ち込んだ点が、この作品の核である。
録音の背景とサウンド
このアルバムは、1969年10月16日にロンドンのRegent Sound Studiosで、ほぼ1日、約12時間のセッションでまとめられたとされる。スタジオは本来2日押さえられていたが、バンドはライブの勢いを保ったまま録音を進め、オーヴァーダビングも最小限にとどめた。結果として、音の輪郭は少し粗いが、そのぶん演奏の生々しさがそのまま入っている。
プロデュースはRoger Bain。アルバム全体を通して、ギターのリフは前に出すぎず、ベースとドラムが低い位置で粘る。Bill Wardのドラミングは、派手なフィルよりも推進力の維持に役立っていて、Geezer Butlerのベースは単なる土台以上の動きを見せる。Tony Iommiのギターは、後の作品ほど厚くはないが、その分、リフの形がはっきり聞こえる。
表題曲の存在感
最も有名なのはやはり表題曲「Black Sabbath」である。雨音と鐘の音から始まり、トライトーンがゆっくりと鳴り出す導入は、この曲の象徴的な場面として知られている。いわゆる「悪魔の音程」と呼ばれてきた不協和音を、あえて正面から使った構成で、当時のハードロックの文脈ではかなり異質だった。曲のテンポも遅く、音数で押すのではなく、ひとつひとつの音を重く置いていく作りになっている。
この1曲だけでも、後のヘヴィメタルが重視する要素がかなり見える。リフ中心の構成、不穏なテーマ、低速の圧力。ここから派生した影響は大きく、Doom MetalやStoner Rockの系譜をたどると、このアルバムを起点に置く説明がしやすい。
収録曲とアルバムの流れ
本作は、表題曲のほかにも「N.I.B.」「The Wizard」「Behind the Wall of Sleep」など、後に代表曲として扱われる曲を含む。特に「N.I.B.」は、印象的なイントロとリフで知られ、アルバムの中でも存在感が強い。全体としては、単独の名曲を並べたというより、重いリフの連なりでアルバムの世界を作っている印象が強い。
また、UK盤とUS盤では曲順と収録内容が異なる。US盤では「Evil Woman」が外れ、代わりに「Wicked World」が入った構成になっている。今回のVertigo UK盤は、オリジナルの英国発売仕様で、ゲートフォールド・ジャケットと“swirl”ラベルが特徴的である。Vertigo初期の渦巻きデザインは、この時期のプレスを象徴する見た目としても知られている。
オリジナルUK盤としての特徴
UK Vertigoの初期プレスでは、ラベルの渦巻きロゴの配置や、見開き内袋の表記に細かな違いがある。初回盤では、スピンドルホール上にswirlロゴ、下にVertigo表記が入る。後発盤では配置が変わるため、コレクターの間では判別点になる。見開き内側の著作権表記に誤植があり、初期は “Copyright subsists in all Stereo recordings…” と印字され、その後修正された仕様もある。
ジャケット写真のモデルはLouisa Livingstoneで、暗い色調の中に立つ姿がアルバムの雰囲気とよく合っている。内容だけでなく、見た目も含めて、1970年初頭の不穏な空気をよくまとった1枚である。
この作品の重み
Black Sabbathにとって本作は、単なるデビュー作以上の意味を持つ。バンドの後年の代表的な重厚さや暗さは、すでにここでかなり形になっている。まだ音の整理は粗いが、その粗さがむしろ効いている。ブルース・ロックの延長線上にありながら、そこから別のジャンルの入口を作ったアルバムとして、今も参照され続けている作品である。
トラックリスト
- A1 Black Sabbath
- A2 The Wizard
- A3 Behind The Wall Of Sleep
- A4 N.I.B.
- B1 Evil Woman, Don't Play Your Games With Me
- B2 Sleeping Village
- B3 Warning