Pet Shop Boys - Release (2002)
Pet Shop Boys『Release』
イギリスの世界的ポップ・デュオ、ペット・ショップ・ボーイズ(Pet Shop Boys)が2002年4月にパーロフォン(Parlophone)から発表した通算8作目のスタジオ・アルバム『Release』。前作『Nightlife』(1999年)までのエレクトロニック/ダンス・ビート中心のプロダクションから劇的な転換を図り、アコースティック・ギターや生楽器を前面に押し出したオーガニックで内省的なポップ・サウンドを探求した異色の重要作である。
制作背景と豪華なコラボレーション
本作最大の話題は、元ザ・スミス(The Smiths)の名ギタリストであり、ニール・テナントとユニット「エレクトロニック(Electronic)」を組んでいた盟友ジョニー・マー(Johnny Marr)の全面参加だ。オープニングを飾る「Home and Dry」や「Birthday Boy」をはじめ、アルバムの随所で繊細かつ表情豊かなギター・プレイを披露し、アルバムの温もりあるサウンドスケープを決定づけている。
アルバムのタイトルは当初『Home』と予定されていたが、親交のあった世界的現代写真家ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)の助言によって『Release』へと変更された。本作はヴィジュアル面でも世界的な写真家・映像作家とのコラボレーションが実現しており、ティルマンスがロンドン地下鉄ユーストン駅のネズミを追った生々しいハンディカメラ映像で話題を呼んだ「Home and Dry」のミュージック・ビデオを監督。さらにブルース・ウェーバーが「I Get Along」、マーティン・パーが「London」のビデオを手掛けた。また、グレッグ・フォーリーが手掛けた花のミニマルなエンボス・ジャケットは、グラミー賞最優秀レコーディング・パッケージ賞にノミネートされている。
時代の文脈とアイロニー
2000年代初頭のクラブ・ミュージック全盛期において、ダンス・ポップの頂点を極めていた彼らがあえて打ち出した「ギター主体のアルバム」という試みは、エレクトロ・ポップの枠組みを自ら軽やかに脱構築する大胆なステートメントとなった。
また収録曲「The Night I Fell in Love」では、当時過激で同性愛嫌悪的なリリックで物議を醸していたラッパーのエミネム(Eminem)を風刺。少年ファンと男性ラッパーがバックステージで恋に落ちるというストーリーをユーモラスかつアイロニカルに描き、ポップ・ミュージックにおける同調圧力や世相への鋭いカウンターを提示した。
サウンドの魅力と後世への評価
シンセサイザーの装飾を大幅に削ぎ落としたことで、ニール・テナントの憂いを帯びた歌声とメロディの美しさが際立ち、フォーク・ロックやアコースティック・ポップに通じる親密な温もりがアルバム全体を包み込んでいる。全英アルバム・チャートで7位を記録し、「Home and Dry」は全英14位にランクインした。
発売当初はダンスフロア向けのビートを求めた層から賛否両論を呼んだものの、現在ではペット・ショップ・ボーイズのソングライティングの深さと叙情性を証明する、キャリア屈指の美しい名盤として高く再評価されている。
トラックリスト
- A1 Home And Dry
- A2 I Get Along
- A3 Birthday Boy
- A4 London
- A5 E-Mail
- B1 The Samurai In Autumn
- B2 Love Is A Catastrophe
- B3 Here
- B4 The Night I Fell In Love
- B5 You Choose
動画プレイリスト
このアーティストについて
Pet Shop Boysは、1981年にロンドンで結成されたイングランドのデュオで、メンバーはNeil TennantとChris Loweの2人。Tennantが主にボーカルとキーボ...
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