Peter, Paul And Mary - Peter, Paul And Mary (1962)
Peter, Paul And Mary『Peter, Paul And Mary』
ピーター・ポール&マリー(Peter, Paul And Mary)の1962年作『Peter, Paul And Mary』は、グループ名をそのまま冠した記念碑的デビュー・アルバム。1961年に結成されたピーター・ヤーロウ、ノエル・ポール・ストゥーキー、メアリー・トラヴァースの3人が、ニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジで活動を重ねながら形にした最初の1枚である。敏腕マネージャーのアルバート・グロスマンが新たなフォーク・トリオとして企画し、ミルト・オークンを音楽監督・編曲家に迎えてそのスタイルを確立した。
制作背景・エピソード
結成のきっかけは、フォーク・リバイバルの潮流の中で新たなグループを求めていたアルバート・グロスマンの構想にあった。彼はグリニッチ・ヴィレッジのシーンで活動していた3人を引き合わせ、音楽監督のミルト・オークンとともに、それぞれの個性を活かした3声のボーカル・ハーモニーを徹底的に練り上げた。ヴィレッジの老舗コーヒーハウス「ザ・ビター・エンド」などでライブを重ねて評判を高め、ワーナー・ブラザーズ・レコードとの契約へとつなげた。
アルバムのジャケット写真はバーナード・コールが撮影したもので、「ザ・ビター・エンド」のレンガ壁の店内で撮られた印象的なカットが使われている。オリジナルのライナーノーツには執筆者のクレジットがなく、カンパニー仕様のインナースリーブが付属する初期プレスも存在する。
収録曲には、ピート・シーガーとリー・ヘイズによる「If I Had A Hammer」(邦題『天使のハンマー』)をはじめ、シーガー作の反戦歌「Where Have All The Flowers Gone」(『花はどこへ行った』)、ヴィレッジの盟友デイヴ・ヴァン・ロンクの「Bamboo」、ヘディ・ウェスト作の「500 Miles」などが並ぶ。ヤーロウとストゥーキーの2本のアコースティック・ギターによるミニマルな伴奏の上で、トラヴァースの凛とした芯のある歌声と男性2人の精緻なコーラスが重なり合うアンサンブルが本作の大きな特徴となっている。
時代の文脈
本作は、1950年代末から続くアメリカのフォーク・リバイバル・ブームがメインストリームへと結実した作品である。キングストン・トリオが切り拓いた親しみやすいカレッジ・フォークの路線を受け継ぎつつ、公民権運動や社会変革のメッセージを帯びたプロテスト・ソングを堂々と取り上げ、フォーク・ミュージックが社会的メッセージと高いポピュラリティを両立できることを広く証明した。
1962年3月に発売されたアルバムはビルボードのアルバム・チャートで1位を獲得し、Top 10に30週以上、通算185週にわたってチャートインするロングセラーを記録。全米で200万枚以上を売り上げてダブル・プラチナに認定された。シングルでも「Lemon Tree」が全米35位、「If I Had A Hammer」が全米10位のヒットとなっている。
また、彼らの大成功は、同じくグロスマンがマネージメントを手がけていたボブ・ディランの楽曲を世に広める決定的な足がかりとなった。次作以降でディランの「Blowin' in the Wind」などをいち早く取り上げ、全米的なプロテスト・ソングの潮流を決定づけていく。
後世への影響
「If I Had A Hammer」は、1963年の第5回グラミー賞において「最優秀フォーク録音賞」と「最優秀ボーカル・グループ賞」の2部門を受賞。公民権運動のアンセムとして時代を象徴する1曲となった。洗練されたアコースティック・アンサンブルと3部コーラスのスタイルは、のちのフォーク・ロック(ザ・バーズやサイモン&ガーファンクルなど)やシンガーソングライター・ムーブメントへ直接つながる道を拓いた。
なお、本US盤はWarner Bros. Recordsのモノラル初回盤(カタログ番号:W 1449)。レーベル面は当時の灰色地にWBシールドを配した仕様となっている。
トラックリスト
- A1 Early In The Morning
- A2 500 Miles
- A3 Sorrow
- A4 This Train
- A5 Bamboo
- A6 It's Raining
- B1 If I Had My Way
- B2 Cruel War
- B3 Lemon Tree
- B4 If I Had A Hammer
- B5 Autumn To May
- B6 Where Have All The Flowers Gone