The Soul Searchers - Salt Of The Earth (1974)
The Soul Searchers『Salt Of The Earth』(1974)レビュー
ワシントンD.C.周辺で1960年代後半に結成されたThe Soul Searchersが、1974年にSussexから発表した2作目のアルバムが『Salt Of The Earth』だ。前作『We The People』(1972)から2年を経て出た本作は、のちに「ゴーゴー・ミュージックの創始者」と呼ばれるChuck Brownを中心としたバンドの初期像を、そのまま残したような内容になっている。まだ後年のソウル・ファンク・バンドとしての輪郭が固まり切る前段階で、ファンク、ソウル、バラードが同じ盤の中に自然に並ぶ構成が特徴的だ。
録音はヴァージニア州フォールズチャーチのAmerican Star Recording Studioで行われている。演奏の芯はタイトで、リズムの押し引きがはっきりしている。Chuck Brownのエレクトリックギターとリードボーカルを軸に、ベース、ドラム、ホーンが前へ出すぎずにまとまり、曲ごとの温度差をそのまま聴かせる作り。ソウル・グループとしての推進力と、ファンク・バンドとしての粘りが同居している印象が強い。
アルバムの位置づけ
本作はThe Soul Searchersの2枚目のアルバムで、バンドの初期キャリアを語るうえで外せない1枚だ。後年のChuck Brown & The Soul Searchersへつながる前史として見ると、ここにはすでにD.C.らしいリズムの感覚が見えている。ゴーゴー・シーンの完成形そのものではないが、その土台になったバンドの空気がはっきり残る。
レーベルはSussex。Bill Withersの初期作でも知られたロサンゼルス拠点のレーベルで、1970年代前半のアメリカン・ソウル/ファンクの一角を担っていた。The Soul Searchersのようなバンドがここから作品を出していた事実だけでも、当時のレーベルの方向性が見える。なお、Sussexは1975年に閉鎖しており、本作はその前の時期のリリースになる。
収録曲の聴きどころ
アルバム全体はファンクを軸にしながら、曲ごとの色がはっきりしている。Bacharach & David作の「Close To You」を取り上げているのがまず目を引く。原曲の有名さを踏まえつつ、ソウル・バンドらしい解釈で組み替えているため、単なるカバーに収まっていない。こうした選曲からも、バンドがストレートなファンクだけで完結していなかったことがわかる。
バラードの「We Share」も重要な1曲だ。硬質なリズムで押す曲が並ぶ中で、この曲はアルバムに呼吸を与えている。演奏の密度を保ちながら、歌ものとしての輪郭も崩していない点が印象に残る。
そして本作を語るうえで外せないのが、B3収録のインストゥルメンタル「Ashley's Roachclip」だ。3分半過ぎに現れるKenneth Scogginsのドラム・ブレイクは、ヒップホップ以降の文脈で非常に有名になった。Eric B. & Rakim「Paid In Full」をはじめ、Run-D.M.C.、Slick Rick、Milli Vanilli、EMF、Duran Duran、P.M. Dawnなど、多数の楽曲で参照されたブレイクとして知られている。1曲単位で見ても、この盤の存在感を決定づける中心曲になっている。
サウンドの印象
聴感上は、派手な装飾よりもバンド全体のグルーヴが前に出る。ベースとドラムの噛み合いが明確で、ギターはリズムの隙間を埋める役回りが多い。ホーンも前面に出る場面はあるが、全体の中では推進力を補強する配置。ファンク・バンドとしての骨格がしっかりしているため、曲のタイプが変わってもアルバムのまとまりが崩れにくい。
同時代のファンク/ソウルと比べると、James Brown周辺の鋭さや、Sly & The Family Stoneの混成的な広がりとは少し違い、もっとバンド単位の現場感が強い。スタジオ作品でありながら、演奏の呼吸がライブに近い。D.C.周辺のブラック・ミュージックが持っていた、踊れることと歌えることを同時に保つ感覚が、この盤にも通っている。
影響の広がり
『Salt Of The Earth』の影響は、まず「Ashley's Roachclip」のブレイクを通じて後年のヒップホップに深く入り込んだ点にある。サンプリングの定番として語られることが多いが、盤全体もまた、1970年代ファンクの資料的な価値を持っている。Chuck Brownの後の活動を知る入口としても機能し、The Soul Searchersというバンドの初期像を確認するには十分な内容だ。
1974年のUS盤としての『Salt Of The Earth』は、ファンク・アルバムでありながら、ソウル、カバー曲、インストゥルメンタル、そして後世に残るブレイクまでを1枚に収めた作品だ。派手な語り口よりも、演奏の積み重ねと曲順の流れで聴かせる盤であり、The Soul Searchersの出発点を知るには重要な記録になっている。
トラックリスト
- A1 I Rolled It You Hold It 4:58
- A2 Blow Your Whistle 3:01
- A3 Close To You 4:23
- A4 Funk To The Folks 4:14
- B1 Ain't It Heavy 5:58
- B2 Windsong 5:00
- B3 Ashley's Roachclip 5:36
- B4 We Share 2:49
- B5 If It Ain't Funky 3:59