The Temptations - Cloud Nine (1969)
The Temptations 1969

The Temptations - Cloud Nine (1969)

Funk / Soul Funk Soul Psychedelic

The Temptations「Cloud Nine」(1969)

The TemptationsのCloud Nineは、1969年のグループ像をはっきりと示すアルバムだ。Motownの中でも屈指のコーラス・グループとして知られていた彼らが、ここで従来のソウル・グループ然とした佇まいから一歩踏み出し、より硬質でリズムの強いサウンドへ移っていく。その転換点に立っていたのが、プロデューサーのNorman Whitfieldだ。WhitfieldはBarrett Strongとの共作を軸に、The Temptationsをサイケデリック・ソウルの方向へ導いていく。本作はその流れが本格的に形になった重要作として扱われている。

グループの転換点としての位置づけ

1960年代のThe Temptationsは、洗練されたハーモニーとステージングでMotownを代表する存在だった。だが1968年、David Ruffinが脱退し、Dennis Edwardsが加入する。Cloud Nineは、その体制変更後に出た初のスタジオ・アルバムでもある。メンバー交代とサウンドの変化が重なったことで、グループの次の段階を示す作品になった。旧来のスムーズな歌唱だけでなく、リズムの押し出し、ベースのうねり、ギターやパーカッションの細かな動きが前面に出てくる構成が印象的だ。

この時期のMotownは、The Temptationsだけでなく、よりファンク寄りの表現へ広がっていく途中にあった。Sly & The Family Stoneの影響がWhitfieldに与えた刺激も大きく、Otis Williamsが1968年に「Dance To The Music」をWhitfieldに薦めたことが、サウンド更新のきっかけになったと伝えられている。結果として本作には、従来のモータウン・サウンドとは異なる、当時の黒人音楽の変化に呼応した手触りがある。

タイトル曲「Cloud Nine」の存在感

このアルバムを語るうえで外せないのがタイトル曲「Cloud Nine」だ。1969年の第11回グラミー賞でBest Rhythm & Blues Performanceを受賞し、Motown史上初のグラミー受賞曲になった。グループにとってもレーベルにとっても、かなり大きな意味を持つ一曲である。

曲の中心には、歌の掛け合いと反復するリズムがある。メロディを大きく伸ばして聴かせるタイプというより、短いフレーズを積み重ねて熱量を作る作りだ。The Temptationsの持ち味である整ったコーラスは残しつつ、演奏の推進力が前に出る。聴感としては、ソウル・グループのレコードというより、バンド感の強いファンク作品に近づいている。ここでのDennis Edwardsの歌声は、従来のDavid Ruffinの滑らかさとは違う輪郭を持ち、曲の荒さと噛み合っている。

録音をめぐる話題

「Cloud Nine」のリード・ボーカルについては、David Ruffin在籍時に録音されたテイクへDennis Edwardsの声が一部重ねられたのではないか、という見方が長く語られてきた。実際の制作過程をめぐっては議論が残るが、少なくとも完成した音源では、Ruffin期からEdwards期への移行がそのまま作品の緊張感になっている。メンバー交代の空気が、そのまま録音の表情に残っているような印象だ。

1969年当時の響き

本作はBillboard Pop Albumsチャートで4位を記録しており、方向転換が商業的にも成立していたことがわかる。1969年という年は、ソウルやR&Bがより社会的で、よりリズム中心の表現へ向かっていた時期でもある。The Temptationsはその流れの中で、コーラス・グループの枠にとどまらない存在へ変わっていった。後のPsychedelic ShackAll Directionsへ続く道筋も、このアルバムでかなりはっきり見えてくる。

同時代の文脈で見ると、Sly & The Family Stoneのようなファンク/サイケデリックの要素を持つグループ、あるいはJames Brown以降のファンクの強いビート感と並べて語られることが多い。The Temptationsはその中で、複数人のボーカルが作る分厚いハーモニーを残しながら、サウンドの芯をリズムへ寄せていった。そこにこの作品の特徴がある。

US盤について

今回のUS盤はGordyレーベルのGS939。盤の表記はGS939、バックカバーは939、ラベルはS-939となっている。ランアウトの「H」スタンプで示されるプレスも確認されている。GordyはMotown傘下の主要レーベルで、この時期のThe Temptationsのオリジナル盤を語るうえで重要な存在だ。1960年代末のGordy盤らしい、Motown系ソウルの流通と制作体制がそのまま詰まった一枚になっている。

まとめ

Cloud Nineは、The Temptationsが1960年代型のソウル・グループから、より硬質でファンク寄りの表現へ移る節目の作品だ。タイトル曲の受賞歴だけでなく、Dennis Edwards加入後の新体制、Whitfield主導のサウンド変化、そしてMotown全体の方向性の更新が重なっている点に意味がある。華やかなハーモニーのグループとしての顔と、リズムを前に押し出す新しい顔。その両方が同居しているアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Cloud Nine 3:27
  2. A2 I Heard It Through The Grapevine 3:00
  3. A3 Run Away Child, Running Wild 9:38
  4. B1 Love Is A Hurtin' Thing 2:28
  5. B2 Hey Girl 2:38
  6. B3 Why Did She Have To Leave Me (Why Did She Have To Go) 2:56
  7. B4 I Need Your Lovin' 2:35
  8. B5 Don't Let Him Take Your Love From Me 2:31
  9. B6 I Gotta Find A Way (To Get You Back) 2:56
  10. B7 Gonna Keep On Tryin' Till I Win Your Love 2:32

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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