The Supreme Jubilees - It'll All Be Over (1980)
The Supreme Jubilees 1980

The Supreme Jubilees - It'll All Be Over (1980)

Funk / Soul Soul Gospel

The Supreme Jubilees『It'll All Be Over』レビュー

The Supreme Jubileesの『It'll All Be Over』は、1980年にUSの自主レーベルS & K Recordsから出た、グループ唯一のアルバムである。フレズノの2つの家族、Kingsby家とSanders家を中心に結成されたゴスペル・ソウル・グループが残した1枚で、教会音楽の土台を持ちながら、当時のソウルやファンクの感触をしっかり取り込んだ内容になっている。収録時間は34分ほどで、旧約聖書的な終末観を歌いながらも、演奏の手触りは意外なほど軽く、柔らかいグルーヴが前に出る。

フレズノの家族バンドから生まれた1枚

アーティストの成り立ちがまず特徴的だ。中心にいるのはJoe Kingsby、Dave Kingsby、David Kingsby Jr.のKingsby家と、Leonard Sanders、Phillips Sanders、Tim Sanders、Melvin SandersのSanders家。後者はフレズノのWitness of Jesus Christ教会で育ち、父のMarion Sandersが牧師を務めていたという背景を持つ。そこにギタリストのLarry Priceが加わり、録音されたのがこのアルバムである。家族単位の結束と教会での歌唱経験が、そのままコーラスの厚みや一体感に直結している。

本作の位置づけも明快だ。The Supreme Jubileesの唯一のアルバムであり、グループの記録としてはここで完結している。1980年のUS盤オリジナルはプレス枚数500枚ともされる私家盤で、当時から広く流通した作品ではなかった。のちに埋もれたまま長く語られにくかったが、コレクターのDavid Haffnerがサンアントニオのレコード店で見つけたことをきっかけに再評価が進み、2014年にはLight in the Atticからリマスター再発された。再発盤ではJessica Hundleyがライナーノーツを担当している。

録音のエピソードと、曲の手触り

録音はフレズノのTrac Record Co.で始まり、ベースの太さを求めるグループとエンジニアのあいだで意見が合わず、4曲、つまりアルバム片面分を録ったところでセッションが止まったという話が残る。残りはヴァイセリアのSierra Recording Studioで完成した。制作現場の緊張感はあるが、仕上がった音はむしろ落ち着いていて、歌声とリズムの呼吸がよく揃っている。

タイトル曲“It'll All Be Over”は本作の核になる曲で、再発後に特に注目を集めた。英The Independent on Sundayは、この曲を神々しいコーラスが数秒で頭と体に残るレイドバックしたファンキー・ソウルとして紹介している。実際、冒頭からコーラスのまとまりが強く、そこにディスコの影響を受けた滑らかなビートが重なる。派手な展開で押すのではなく、同じフレーズを丁寧に積み重ねながら熱を上げていく作りで、曲が進むほど歌の切実さが前に出る。

また、ヴァイセリア滞在中にLeonard Sandersが眠っている間に霊的な体験をし、翌日タイトル曲の自分のパートを一発録りで仕上げたというエピソードも残る。こうした背景を踏まえると、歌の運びにある切迫感や、コーラスの揺るがないまとまりが、単なる演奏技術以上のものとして聴こえてくる。

ゴスペルとソウルのあいだにあるもの

このアルバムの面白さは、ゴスペルの厳しさとソウルの身体性が、どちらかに寄り切らずに並んでいる点にある。Cross Rhythmsは本作をファンクとカルテット・ゴスペルを混ぜ合わせた作品として高く評価し、MOJOも高評価を与えた。実際、演奏は教会音楽の規律を保ちながら、ベースとドラムが前に出る場面ではかなりファンキーだ。とはいえ、強く踊らせる方向へ振り切るのではなく、祈りの言葉を支えるためのグルーヴとして機能している。

同時代のゴスペル・ソウルの流れで見ると、Mighty Clouds of JoyやGospel Keynotesのようなグループと並べて語られる素地がある。だがThe Supreme Jubileesは、より小回りの利く編成感と、家族由来のコーラスのまとまりが印象を残す。派手なプロダクションよりも、声の重なりとリズムの粘りで聴かせるタイプで、フレズノという土地のローカルな空気もはっきり感じる。

オリジナル盤と再発盤のあいだ

1980年のUSオリジナル盤はS & K RecordsのSK 78129。レーベル名はSandersとKingsbyの頭文字を取ったもので、家族の自主運営による発表だったことがわかる。再発盤は2014年のLight in the Attic盤で、作品自体の評価を広く知らしめた役割が大きい。オリジナル盤が私家盤として埋もれていたのに対し、再発盤では資料性と音源の魅力がまとまって提示されている。

『It'll All Be Over』は、1枚だけ残されたアルバムでありながら、フレズノの教会文化、家族の結束、70年代末から80年代初頭のゴスペル・ソウルの感触を一つにまとめた記録になっている。大きなヒット曲を並べる作品ではないが、タイトル曲を中心に、声とリズムがぶつからずに噛み合う瞬間がしっかり残る1枚である。

トラックリスト

  1. A1 It'll All Be Over 3:00
  2. A2 Do You Believe 3:53
  3. A3 Thank You Lord 5:50
  4. A4 I Am On The Lord's Side 3:40
  5. B1 You Don't Know 2:00
  6. B2 Standing In The Need Of Prayer 4:55
  7. B3 Got A Right 3:43
  8. B4 We'll Understand 3:49
  9. B5 Stop Today 3:48

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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