The Weeknd - Starboy (2016)
The Weeknd『Starboy』
カナダ・トロント出身のシンガーソングライター/プロデューサー、ザ・ウィークエンド(The Weeknd、本名:エイベル・テスファイ[Abel Tesfaye])が2016年11月25日に自身のレーベルXOおよびRepublic Recordsから発表した通算3作目のスタジオ・アルバム。世界的ブレイクを果たした前作『Beauty Behind the Madness』(2015年)に続く作品で、本リリースは2017年2月に米国で発売されたゲートフォールド仕様・半透明レッド・ヴァイナルの2枚組アナログ盤(規格番号:B0025919-01、マスタリングはニューヨークのSterling Soundにてトム・コイン[Tom Coyne]とAya Merrillが担当)。A面からD面まで全18曲を収めている。
制作背景と参加陣
本作では、2011年のデビュー・ミックステープ『House of Balloons』を手がけた盟友ドック・マッキニー(Doc McKinney)がテスファイとともに共同エグゼクティブ・プロデューサーを務め、サーカット(Cirkut)を中核に据えた制作が進められた。さらにフランスのエレクトロニック・デュオであるダフト・パンク(Daft Punk:トーマ・バンガルテル&ギ=マニュエル・ド・オメン=クリスト)をはじめ、マックス・マーティン(Max Martin)、アリ・パヤミ(Ali Payami)、ベニー・ブランコ(Benny Blanco)、カシミア・キャット(Cashmere Cat)、メトロ・ブーミン(Metro Boomin)、フランク・デュークス(Frank Dukes)、ディプロ(Diplo)、ラブリンス(Labrinth)、ベン・ビリオンズ(Ben Billions)、ジェイク・ワン(Jake One)、そしてア・トライブ・コールド・クエストのアリ・シャヒード・ムハンマド(Ali Shaheed Muhammad)といった多彩なプロデューサー陣が集結。ゲスト・アーティストにはダフト・パンク(2曲)、ラナ・デル・レイ(Lana Del Rey)、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)、フューチャー(Future)が参加している。
アルバム・タイトルの『Starboy』は、2016年1月に死去したデヴィッド・ボウイ(David Bowie)の1972年の代表曲「Starman」へのオマージュであり、テスファイ自身、本作がボウイと、同じく2016年4月に急逝したプリンス(Prince)から「1000パーセント影響を受けた」と語っている。加えて、ザ・スミス(The Smiths)、トーキング・ヘッズ(Talking Heads)、バッド・ブレインズ(Bad Brains)といったニュー・ウェイヴ/ポスト・パンク勢や、幼少期に聴いて育ったウータン・クラン(Wu-Tang Clan)や50セント(50 Cent)のようなヒップホップのボースティング(誇示・ブラガドシオ)の美学、映画『スカーフェイス』のトニー・モンタナ像などもテーマに反映された。
ジャケットはナビル・エルダーキン(Nabil Elderkin)が撮影・デザインを担当。鮮やかな赤と青のコントラストの中で、テスファイがそれまでのトレードマークだったドレッドヘアをばっさりと切り落とした新しい姿を見せ、首に掛けた十字架とともに「過去の自分からの再生(Reborn)」を象徴している。グラント・シンガー(Grant Singer)監督による「Starboy」のミュージック・ビデオでも、この新しいペルソナがネオンの十字架で過去の自分を葬り去る演出が置かれ、アルバム発売直前の2016年11月23日には同監督による12分間の短編映画『M A N I A』も公開された。
収録曲の要点
アルバムの幕開けと幕引きを飾るのは、ダフト・パンクとの2つのコラボレーション曲だ。オープニングのA1「Starboy」が重厚なドラムと不穏なシンセ・リフの上でセレブリティの虚飾や傲慢さをクールに歌い上げる一方、掉尾を飾るD4「I Feel It Coming」では、マイケル・ジャクソンの『Off the Wall』や『Thriller』を支えた伝説的セッション・ミュージシャンであるジョン・“JR”・ロビンソン(JR Robinson:ドラムス)、ネイザン・イースト(Nathan East:ベース)、ポール・ジャクソン・ジュニア(Paul Jackson Jr.:ギター)が演奏に参加し、ダフト・パンクのボコーダー・コーラスとともに軽やかでメランコリックなディスコ・ファンク/ソフト・ロックが展開される。
またB1「Secrets」では、ティアーズ・フォー・フィアーズ(Tears for Fears)の1982年曲「Pale Shelter」(ローランド・オーザバル作)と、ザ・ロマンティックス(The Romantics)の1983年曲「Talking in Your Sleep」という2つの80年代ニュー・ウェイヴ名曲を大胆にサンプリング/インターポレートしている。ほかにも、ラナ・デル・レイがバック・ヴォーカルで参加したダークなトラップ・チューンA2「Party Monster」および彼女をフィーチャーしたB3「Stargirl Interlude」、ダンス・パンク調のA3「False Alarm」、自己言及的なリリックが光るA4「Reminder」、マックス・マーティン&アリ・パヤミ制作による2ステップ/ディスコ・ハウス調のA5「Rockin'」やマイケル・ジャクソン風のファンク・ポップC2「A Lonely Night」、アリ・シャヒード・ムハンマドらが共同プロデュースしケンドリック・ラマーが客演したB4「Sidewalks」、フューチャーを迎えたD2「All I Know」、そして後年に大きく再燃したR&BバラードD3「Die For You」まで、全18曲にわたり幅広いアプローチが繰り広げられる。
当時の位置づけと反応
『Starboy』は、初期三部作『Trilogy』のダークで退廃的なオルタナティヴR&Bから、前作を経てグローバルなポップ・スターへと駆け上がったザ・ウィークエンドが、80年代のニュー・ウェイヴやシンセ・ポップ、エレクトロ・ファンク、ディスコ・ブギーと、2010年代後半のトラップやコンテンポラリーR&Bを本格的に融合させた転換点の作品として位置づけられる。ここで確立された80年代シンセ・ポップ回帰のサウンド設計は、のちの『After Hours』(2020年)や『Dawn FM』(2022年)へと直結していく。
発売初週には全米で34万8,000アルバム換算ユニット(うち純売上20万9,000枚)を記録し、米Billboard 200とカナダのアルバム・チャートで初登場1位を獲得。収録18曲すべてが同時に米Billboard Hot 100入りを果たした。シングルでは「Starboy (feat. Daft Punk)」が全米1位、「I Feel It Coming (feat. Daft Punk)」が全米4位を記録。批評面ではMetacriticで67点(25媒体平均)を獲得し、英『デイリー・テレグラフ』紙のニール・マコーミック(Neil McCormick)は「きらめくエレクトロニカとしなやかでメロディックなヴォーカルが融合した、驚くほどシームレスで贅沢なグルーヴ」と称賛した。
さらに収録曲「Die For You」は発売から6年後の2022年〜2023年にTikTokを通じて世界的に再燃し、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)を迎えたリミックス版を経て2023年3月に米Billboard Hot 100で1位を獲得する異例のロング・ヒットとなった。第60回グラミー賞(2018年)では「最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞」を受賞し、全米レコード協会(RIAA)からは6×プラチナ認定を受けている。
トラックリスト
- A1 Starboy 3:50
- A2 Party Monster 4:09
- A3 False Alarm 3:40
- A4 Reminder 3:38
- A5 Rockin’ 3:52
- B1 Secrets 4:25
- B2 True Colors 3:26
- B3 Stargirl Interlude 1:51
- B4 Sidewalks 3:51
- B5 Six Feet Under 3:57
- C1 Love To Lay 3:43
- C2 A Lonely Night 3:40
- C3 Attention 3:17
- C4 Ordinary Life 3:41
- D1 Nothing Without You 3:18
- D2 All I Know 5:21
- D3 Die For You 4:20
- D4 I Feel It Coming 4:29
動画プレイリスト
このアーティストについて
The Weekndは、カナダ・トロント出身のシンガー、ソングライター、プロデューサー、アベル・テスファイの名義だ。1990年2月16日生まれで、エチオピア...
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