The Weeknd - Beauty Behind The Madness (2015)
The Weeknd 2015

The Weeknd - Beauty Behind The Madness (2015)

Pop Hip Hop Funk / Soul Soul Contemporary R&B

The Weeknd『Beauty Behind The Madness』

2015年に登場したThe Weekndの『Beauty Behind The Madness』は、2011年のミックステープ三部作で築いた匿名性の高い暗い作風から、ポップの中心へ踏み出したアルバムだ。前作『Kiss Land』はBillboard 200で2位まで上がったものの、本人はヒット・シングルが生まれなかった点を物足りなく受け止めていたという。その流れの中で、Republicのアーバン部門A&R責任者Wendy Goldsteinに相談し、Ariana GrandeとMax Martinをつないだ「Love Me Harder」が生まれた。この曲はHot 100で7位となり、The Weekndにとって初のトップ10シングルになった。

制作背景と曲作り

Max Martinはそのまま新作にも参加し、報じられたところでは、The Weekndは手元にためていた曲を使わず、ゼロから一緒に書くことを求めたという。最初に取りかかったのが「In the Night」だった。GQのインタビューでは、Martinのスタジオがかつてマリリン・モンローの家だったことに触れ、「『In the Night』という曲のコンセプトは彼女の寝室で思いついた」とも語っている。

Republicはこの時期、映画『Fifty Shades of Grey』のサウンドトラックにもThe Weekndを送り込んだ。いくつもの場面向けに曲を試した末に生まれたのが「Earned It」で、劇中で2回流れる唯一の曲になった。共作・プロデュースはStephan Moccio、録音はサンタモニカで行われ、6/8拍子の弦を効かせた室内楽的なR&Bとして仕上がっている。

「The Hills」はトロントの自宅スタジオで制作された。Emmanuel “Mano” Nickersonが作ったデモにIllangeloが手を加え、そこにThe Weekndがトップラインを乗せたという。Illangeloは後のインタビューで、この曲を初期ミックステープのスタイルに立ち返りつつ、ポップなアレンジ、コード、速めのテンポを持ち込んだものと説明している。曲の最後には、エチオピア系である彼のルーツを示すアムハラ語の子守歌が置かれている。

「Can't Feel My Face」はMax MartinとAli Payamiのプロデュースで、ロサンゼルスとストックホルムで録音された。アルバムのエグゼクティブ・プロデューサーはThe Weeknd、DaHeala、Illangelo。ほかに「Tell Your Friends」はKanye Westのプロデュース、「Dark Times」にはEd Sheeran、「Prisoner」にはLana Del Reyが参加している。録音地はトロント、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンタモニカ、ストックホルムにまたがる。

時代の中での位置

本作は2015年8月28日にXO/Republicから発売された。2011年のミックステープで、暗いオルタナティヴR&Bの旗手として登場したThe Weekndが、ここでポップのど真ん中へ進んだ形になる。Max Martinとの共作が明らかになった時点で、ファンの間では、謎めいたアンチヒーローが持ち味の陰影を捨てて明るいポップに走るのかと驚きが広がった。

批評では、ディスコ、ファンク、ソウル、アート・ロック、トラップを取り込んだ音が指摘され、Michael Jacksonの『Thriller』『Bad』との関係もよく語られた。The Weeknd本人は2016年のLos Angeles Timesのインタビューで、Michael Jacksonは「自分にとってすべて」であり、歌い始めるきっかけは『Off the Wall』だったと話している。そのうえで、「マイケルになろうとしているわけではない」とも述べていた。Pitchforkのレビューは「Can't Feel My Face」のベースラインを「別次元の『Thriller』から来たよう」と評し、Rolling Stoneはそのヴォーカルの見せ場を「Don't Stop 'Til You Get Enough」になぞらえている。

歌詞の主題は恋愛、成功、孤独、自己嫌悪。「Can't Feel My Face」は、熱い恋の比喩の陰にコカインを歌った曲として広く読まれている。Chicago TribuneのGreg Kotは、このアルバムを「より厳しい真実を狙い、選択と結果についての論評としても機能するポップ」と書いた。The A.V. ClubのSheldon Pearceは、「The Weekndのイメージと現実の溝を巧みに、慎重に埋めている」と評している。

一方で、PitchforkのAndrew Ryceは、楽しむには彼の悪役ぶりを受け入れる必要があると指摘し、The Daily TelegraphのHelen BrownはEd SheeranとLana Del Reyの参加曲を弱いとした。

評価とその後

『Beauty Behind The Madness』はBillboard 200で初登場1位を獲得し、初週41.2万ユニットを記録した。The Weekndにとって初の全米1位アルバムで、3週首位を守っている。「Can't Feel My Face」と「The Hills」は続けてHot 100の1位を獲得し、「Earned It」は3位まで上がった。第58回グラミー賞では最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバムを受賞し、「Earned It」は最優秀R&Bパフォーマンスを受賞、アカデミー賞歌曲賞にもノミネートされた。

後年の記録としては、2015年に世界で最も売れたアルバムのひとつとなり、Spotifyでは2015年に最もストリーミングされたアルバムでもあった。2017年にはギネス世界記録で「1年間で最もストリーミングされたアルバム」として認定されている。「The Hills」はThe Weekndにとって初のダイアモンド認定曲になり、2024年には英Guardianが彼の最高の曲に選んだ。「Can't Feel My Face」もダイアモンド認定を受け、Rolling Stoneの2015年年間ベスト・ソング1位に選ばれている。2020年のRolling Stone「史上最高のアルバム500」改訂版では442位に入っている。

盤のレーベル表記はRepublic Recordsで、見開きジャケット仕様。各レコードは150グラムと記されている。2023年のメキシコ製再発盤とは別物として扱われる。

トラックリスト

  1. A1 Real Life 3:43
  2. A2 Losers 4:41
  3. A3 Tell Your Friends 5:34
  4. B1 Often 4:09
  5. B2 The Hills 4:02
  6. B3 Acquainted 5:48
  7. C1 Can't Feel My Face 3:33
  8. C2 Shameless 4:13
  9. C3 Earned It (Fifty Shades Of Grey) 4:37
  10. C4 In The Night 3:55
  11. D1 As You Are 5:40
  12. D2 Dark Times 4:20
  13. D3 Prisoner 4:34
  14. D4 Angel 6:17

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

The Weeknd

The Weeknd

The Weekndは、カナダ・トロント出身のシンガー、ソングライター、プロデューサー、アベル・テスファイの名義だ。1990年2月16日生まれで、エチオピア...

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