David Bowie - Let's Dance (1983)
David Bowie『Let's Dance』:ナイル・ロジャースと若きSRVを得て、80年代のポップ・ゴッドへと完全転生した金字塔
1983年4月にリリースされたDavid Bowie(デヴィッド・ボウイ)の通算15作目となるスタジオ・アルバム『Let's Dance』は、彼を1970年代のアート・ロックのカリスマから、世界中を熱狂させるグローバルなメガ・ポップ・スーパースターへと劇的に脱皮させた記念碑的作品である。全英アルバムチャートで初登場1位を獲得し、全米Billboard 200でも4位まで登り詰め、全世界で1,000万枚以上のセールスを記録した。長年所属したRCAレコードを離れ、EMI Americaと当時の音楽界で前代未聞とされた巨額契約(約1,750万ドル)を結んで発表された移籍第1弾であり、ボウイのキャリアにおける最大の商業的成功を収めた。
RCAからEMIへの電撃移籍とナイル・ロジャースのプロデュース
1970年代の『ジギー・スターダスト』からベルリン三部作(『Low』『"Heroes"』『Lodger』)、そして前作『Scary Monsters (and Super Creeps)』に至るまで、アヴァンギャルドで先鋭的な表現を追求してきたボウイは、1980年代を迎えて徹底的に明快でダンサブルなヒット・アルバムを作ることを決意した。そのパートナーとして白羽の矢が立ったのが、シック(Chic)の首領でありダイアナ・ロスらを手掛けていた天才プロデューサー、ナイル・ロジャース(Nile Rodgers)である。
ボウイがスイスのアジトで12弦アコースティック・ギターを爪弾いて作ったフォーク調の素朴なデモ曲を、ロジャースは最先端のファンク、ポスト・ディスコ、そしてダンサブルなビートへと鮮やかに昇華させた。レコーディングはニューヨークの「The Power Station」にて、わずか17日間という驚異的な短期間で完了した。名エンジニアのボブ・クリアマウンテン(Bob Clearmountain)による録音とミックスは、巨大で抜けの良いスネアドラムのゲート・リバーブや、ディレイを巧みに配置したリズムギターなど、1980年代ポピュラー音楽の音響プロダクションにおける新たな世界基準を決定づけた。
無名だったスティーヴィー・レイ・ヴォーンの衝撃的抜擢
本作のサウンドを他の追随を許さない唯一無二のものに仕立て上げた最大の要因が、当時ほぼ無名だったテキサス出身のブルース・ギタリスト、スティーヴィー・レイ・ヴォーン(Stevie Ray Vaughan, SRV)の全面的な起用である。1982年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでヴォーンの熱狂的な演奏を目撃したボウイが直接オファーを出し、アルバム全編のリード・ギターを委ねた。
ナイル・ロジャースが統率する洗練されたダンス・グルーヴの只中に、ヴォーンのストラトキャスターが奏でる生々しく獰猛なブルース・ソロが突き刺さる音像は世界中に強烈な衝撃を与えた。この大胆な異種交配はアルバムにロックとしての骨太なエッジを与え、スティーヴィー・レイ・ヴォーン自身にとっても世界的なメジャー・ブレイクへの足がかりとなった。さらに、ドラムにはオマー・ハキム(Omar Hakim)とトニー・トンプソン(Tony Thompson)、ベースにはカーマイン・ロハス(Carmine Rojas)ら超一流のファンク・ミュージシャンが集結し、強靭なグルーヴの屋台骨を支えている。
収録曲の魅力:キラー・チューンと名曲の再構築
全8曲が収録されたアルバムは、新境地を切り拓いたオリジナル曲と過去の楽曲の鮮烈な再解釈が絶妙にブレンドされている。
オープニングを飾る「Modern Love」(全英2位/全米14位)は、リトル・リチャードを思わせる跳ねるピアノと分厚いホーン・セクション、そして疾走感あふれるビートに乗せて神や愛に対する懐疑を歌った爽快なロックンロールである。アルバムの表題曲「Let's Dance」は、米英両国のシングルチャートで同時に第1位を獲得したボウイ最大のヒット曲だ。うねるファンキーなベースラインとクリアマウンテンによるディレイが効いたリズムギター、そして終盤にかけて炸裂するスティーヴィー・レイ・ヴォーンの灼熱のギター・ソロは圧巻の完成度を誇る。
また、「China Girl」(全英2位/全米10位)は、1977年に盟友イギー・ポップのソロ・アルバム『The Idiot』のために共作した名曲のセルフ・カバーである。当時経済的に困窮していたイギーを支援する目的も兼ねて取り上げられたこの曲は、ヴォーンの哀愁漂うオリエンタル風ギター・フレーズと洒脱なカッティングによって、モダンで蠱惑的なポップ・ナンバーへと見事に生まれ変わった。さらに、1982年に映画のためにジョルジオ・モロダーと共作した「Cat People (Putting Out Fire)」をダイナミックなロック・アレンジで劇的に再録音し、英国ニューウェイブ・バンドのメトロ(Metro)が1977年に発表したカルト・ナンバー「Criminal World」を洗練された解釈でカバーするなど、楽曲の配置にも緻密な意図が込められている。
アートワークとUKオリジナルLP(AML 3029)の仕様
カバー・アートには、著名な写真家グレッグ・ゴーマン(Greg Gorman)が撮影した、ボクシング・グローブを嵌めてシャドウボクシングをするボウイの姿がフィーチャーされている。新たな時代のリングに立つファイターとしての決意が表現されたアイコニックなヴィジュアルである。
UKオリジナルLP(EMI America: AML 3029)には、歌詞とクレジットが全面に印刷された厚紙のカラー・インナー・スリーブが付属する。センターラベルは上部のグレーから下部のホワイトへと移り変わるグラデーション仕様となっており、1980年代以降のEMI Americaのフォーマットを象徴している。ニューヨークのMasterdisk(Bob Ludwig)でマスタリングされたマスターテープを受け、アビイ・ロード・スタジオのペントハウスにて名エンジニアのニック・ウェブ(Nick Webb)がUK盤のカッティングを担当した。ランアウト部には手彫りで「NICKZ」および「PENTHOUSE」の刻印が刻まれている。クリアマウンテンによるクリスプな音像と、英国プレスの静粛で温かみのある音質が同居した、80年代ロック/ダンス・ポップを語る上で欠かすことのできないレコードである。
トラックリスト
- A1 Modern Love 4:46
- A2 China Girl 5:32
- A3 Let's Dance 7:38
- A4 Without You 3:08
- B1 Ricochet 5:14
- B2 Criminal World 4:25
- B3 Cat People (Putting Out Fire) 5:09
- B4 Shake It 3:49
動画プレイリスト
このアーティストについて
David Bowieは、1947年1月8日にロンドンのブリクストンでデヴィッド・ロバート・ジョーンズとして生まれた、イギリスのシンガー、ミュージシャン、ソ...
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