Ween - 12 Golden Country Greats  (1996)
Ween 1996

Ween - 12 Golden Country Greats (1996)

Rock Pop Folk, World, & Country Funk / Soul Alternative Rock Country Rock

Ween『12 Golden Country Greats』レビュー

Weenの『12 Golden Country Greats』は、1996年に発表されたカントリー色の強いアルバムで、バンドの作風を知るうえで外せない一枚だ。アメリカ・ペンシルベニア州ニュー・ホープ出身のデュオとして出発したWeenは、もともとジャンルをまたぐ曲作りで知られてきたが、この作品ではその振れ幅をかなりはっきりした形でカントリー・ミュージックに寄せている。とはいえ、単なる模倣や企画盤の枠に収まる内容ではなく、演奏、編曲、曲の作り込みまで含めて、かなり本気で作られた記録として残っている。

ナッシュビル録音による、異色のWeen

本作は1995年11月2日から8日にかけて、ナッシュビル近郊のBradley's Barnで録音された。プロデューサーにはBen Vaughnを起用し、Dean WeenとGene Weenは主にボーカルに専念している。演奏は「The Shit Creek Boys」と名付けられたセッション・ミュージシャンたちが担当しており、Hargus “Pig” Robbinsのピアノ、Buddy Harmanのドラム、The Jordanairesのコーラス参加など、ナッシュビルの伝統に根差した人選が並ぶ。こうした布陣だけでも、単なるパロディではなく、カントリーという形式そのものを正面から扱った作品であることが分かる。

実際に聴くと、Ween特有のひねりが前面に出る場面はあっても、土台はかなり素直なカントリー・サウンドだ。ストレートなバンド演奏と、語り口のあるボーカルが中心で、過剰なエフェクトやロック的な厚塗りは少ない。曲によってはファンクやポップの気配も混ざるが、全体としてはナッシュビル録音らしい手触りが強い。アルバム全体の流れもきれいで、バラバラなネタの寄せ集めではなく、ひとつの枠組みの中で曲が並んでいく構成になっている。

評価が割れた当時と、その後の見直し

1996年7月のリリース当時は、Weenのそれまでのイメージとの落差もあって、冗談めいた企画として受け止められた面があった。実際には、歌詞に下品さや挑発的な要素が含まれ、そこを理由に距離を置く反応もあった一方で、作曲の精度や演奏の完成度は高く評価された。AllMusicが高い評価を付けたことも知られている。時がたつにつれて、ふざけた着想だけでは終わっていないこと、そしてカントリーの文法をきちんと踏まえていることが見直され、Weenの代表作のひとつとして扱われるようになった。

Weenのディスコグラフィーの中では、実験性が前に出た作品群のなかで、ジャンルの看板をはっきり立てたアルバムという位置づけがある。のちのWeenを振り返るとき、この作品は「何をやるバンドか」を説明しやすい例としてよく参照される。ロック、ファンク、ポップ、フォーク、カントリーを横断するバンドでありながら、この一枚ではカントリーの形式にかなり深く入り込んでいる点が特徴だ。

代表曲と収録曲の印象

収録曲では「Piss Up a Rope」がよく知られている。軽快なテンポと、露骨な言葉を交えた歌詞の対比がこのアルバムの性格を端的に示している曲だ。カントリーの演奏スタイルに乗せて、Weenらしいユーモアと攻撃性が出る。「You Were the Fool」「Fluffy」といった曲も、いかにもナッシュビル録音らしい演奏の上で、歌詞の視点や言い回しにWeenらしさが残る。派手なヒット曲が前面に出るタイプの作品ではないが、アルバム単位で聴くと印象の残り方が強い。

なお、2026年版として出たこのデラックス・エディションは、Ween Store限定の“Powder Blue”仕様で10,000枚限定、ゲートフォールド・スリーブと8ページのブックレット付きという内容だ。元になった30周年記念盤では、オリジナル・アルバムのリマスターに加えて、ナッシュビル・セッション由来の未発表デモやアウトテイクが多数加わり、全36曲に拡張されていた。そこに“I’ve Got No Darkside”や“So Long Jerry”が加わることで、アルバム名の「12曲」という意味合いが別の形で見えてくる構成になっている。

レーベルと再発盤の位置づけ

この2026年盤はRhino Recordsからのリリースで、レーベル番号はR1 728691。Rhinoは再発や編集盤に強いレーベルとして知られており、本作のような再評価の流れに合った再発を多く手がけてきた。本盤はオリジナルの1996年盤と比べると、音源面ではリマスターと追加曲が大きな違いになる。つまり、元のアルバムをそのまま押し出すというより、制作背景やセッションの広がりまで見せる内容になっている。

『12 Golden Country Greats』は、Weenの奇抜さだけで語るには足りない作品だ。ナッシュビルの職人たちによる演奏、アルバムとしてのまとまり、そして後年まで残る収録曲の存在が、この一枚をただのネタ盤ではないところへ押し上げている。

トラックリスト

  1. LP 1: 12 Golden Country Greats Original Album Remastered
  2. A1 I’m Holding You 4:03
  3. A2 Japanese Cowboy 3:02
  4. A3 Piss Up A Rope 3:32
  5. A4 I Don’t Wanna Leave You On The Farm 2:44
  6. A5 Pretty Girl 2:36
  7. B1 Powder Blue 3:15
  8. B2 Mister Richard Smoker 2:41
  9. B3 Help Me Scrape The Mucus Off My Brain 2:45
  10. B4 You Were The Fool 4:27
  11. B5 Fluffy 3:34
  12. LP 2: 12 Golden Demos
  13. C1 I Don’t Wanna Leave You On The Farm 2:38
  14. C2 Piss Up A Rope 3:29
  15. C3 Mister Richard Smoker 2:07
  16. C4 Help Me Scrape The Mucus Off My Brain 2:39
  17. C5 Pretty Girl 2:33
  18. C6 Fluffy 2:40
  19. C7 You Were The Fool 2:50
  20. D1 Powder Blue 2:31
  21. D2 I’ve Got No Darkside 5:04
  22. D3 Maybelle 4:27
  23. D4 I’m Holding You 4:00
  24. D5 So Long Jerry 4:56
  25. LP 3: 14 Golden Outtakes And Demos
  26. E1 I’ve Got No Darkside 5:17
  27. E2 Boston Chicken 2:39
  28. E3 Bad Day In Brownsville 1:11
  29. E4 Good Timing Rhyming Song 1:29
  30. E5 Sweet Texas Fire 2:32
  31. E6 Twinkle 2:19
  32. E7 If You Can’t Look Me In The Eye 1:52
  33. E8 I’m Gonna Fix Your Ass 4:55
  34. F1 Fool To Cry 4:14
  35. F2 Spaghetti 3:17
  36. F3 I’ll Miss You 2:56
  37. F4 Maybelle (Waste Version) 4:29
  38. F5 Scum Of This Town 1:55
  39. F6 So Long Jerry 5:36

動画プレイリスト

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