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Barış Manço(バルシュ・マンチョ、1943年1月2日 - 1999年2月1日)は、トルコ・イスタンブール出身のシンガー・ソングライター、作曲家、テレビ番組司会者。トルコの伝統的な民謡や詩歌と西洋のロック、サイケデリック、ファンク、電子音楽を融合させた独自の音楽ジャンル「アナトリアン・ロック(Anatolian Rock)」の創始者であり、トルコ音楽史上最も重要かつ国民的なアイコンとして知られる。名前の「Barış」はトルコ語で「平和」を意味する。
母は1940年代に活躍した著名歌手リッカト・ウヤヌク。音楽一家に生まれ、1960年代にはベルギーの王立美術アカデミー留学やパリでの音楽活動(バンド「Les Mistigris」の結成)を通じて欧州のビート/ポップ・シーンを体得した。トルコ帰国後、本格的に自らの音楽スタイルを確立していった。
1970年、トルコ伝統の弦楽器サズとアコースティック・ギターを組み合わせたシングル「Dağlar Dağlar」が空前の大ヒットを記録し、一躍スターダムに躍り出た。1972年には自身の専属バックバンド「クルタラン・エクスプレス(Kurtalan Ekspres)」を結成し、その後の精力的な活動の基盤を築く。
トルコ共和国建国100周年を見据えて制作された1975年の金字塔アルバム『2023』では、初期モーグなどのアナログ・シンセサイザー、長編のプログレッシブ組曲、土着のファンク・グルーヴを大胆に融合。続く『Yeni Bir Gün』(1979年)でも宇宙的な広がりを持つサイケデリック・プログレを極め、傑作として高く評価された。これらの作品はトルコ国内のみならず、現代の世界的なヴィンテージ・ロック/レアグルーヴ・シーンでも熱狂的な再評価を受けている。
1980年代後半以降は、国営テレビTRTにて長寿番組『7'den 77'ye(7歳から77歳まで)』の司会を務めた。世界150カ国以上を巡りながら子供たちと触れ合い、世界平和や異文化理解を訴え続けた姿は、トルコ国民全員に親しまれる親善大使的存在となった。
Barış Mançoの音楽は、単に西洋のロックを輸入するのではなく、アナトリア地方の伝統旋律や民謡の語り口を骨格に据え、そこにファズ・ギターやモーグ・シンセサイザー、タイトなファンク・ビートを編み込んだ点に最大の独自性がある。民謡の哀愁とフューチャリスティックな電子音が交錯するサウンドは、アナトリアン・ロックの決定的な指標となった。
Barış Mançoは、トルコにおいてロックと伝統文化を架橋する道を切り拓き、後続の世代に計り知れない影響を与えた。1999年に56歳で急逝した際には数十万人規模の見送りが行われるなど、音楽家、教育的な文化人、そして平和の象徴として、トルコの現代史に不滅の足跡を遺している。