Vinyl Record Reviews
Bernard Purdie(バーナード・パーディ、本名:Bernard “Pretty” Purdie)は、1939年6月11日生まれ、アメリカ・メリーランド州エルクトン出身の伝説的ドラマー/バンドリーダーだ。「世界で最も多くの録音に参加したドラマー(The World's Most Recorded Drummer)」と称され、ジャズ、ソウル、ファンク、ロック、ポップスに至るまで、20世紀後半のポピュラー音楽の根幹を支え続けたグルーヴ・マスターである。
パーディの名を不滅のものにしているのが、彼独自の発明であるシグネチャー・ビート「パーディ・シャッフル(Purdie Shuffle)」だ。ハイハットとバスドラムが刻む3連符のハーフタイム・フィールを土台に、スネアドラムの極めて繊細なゴーストノート(弱音の装飾音)を自在に絡め合わせたこのグルーヴは、絶妙な「タメ」と跳ねるような推進力を両立させている。
このビートはドラム史におけるひとつの到達点とみなされ、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムによる「Fool in the Rain」や、TOTOのジェフ・ポーカロによる「Rosanna」のハーフタイム・シャッフルなど、後世のロック/ポップスにおける歴史的名演へと受け継がれていった。
1960年代初頭からニューヨークのスタジオ・シーンで頭角を現したパーディは、アトランティック・レコードをはじめとする名門レーベルのファーストコール・ドラマーとして君臨した。特に「クイーン・オブ・ソウル」ことアレサ・フランクリンの現場では、長年にわたり音楽監督およびドラマーを務め、「Rock Steady」の強烈なファンク・グルーヴや、歴史的傑作ライブ盤『Aretha Live at Fillmore West』(1971年)の圧倒的な演奏を主導した。
さらにキング・カーティス、マイルス・デイヴィス、ギル・スコット=ヘロン、ダニー・ハサウェイ、ニーナ・シモン、B.B.キング、ホール&オーツなど、ジャンルの垣根を越えて無数の名盤にその名を刻んでいる。
パーディの手腕は、完璧主義で知られるドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカー率いるスティーリー・ダン(Steely Dan)の現場でも決定的な役割を果たした。どれほど卓越したスタジオ・ミュージシャンであっても容赦なく差し替えることで知られた彼らが絶大なる信頼を寄せ、『The Royal Scam』をはじめ、『Aja』収録の「Home at Last」や『Gaucho』収録の「Babylon Sisters」において、パーディ・シャッフルの模範的テイクを録音に残した。
妥協を許さない緻密なプロダクションにおいて、揺るぎないタイム感と有機的な躍動感を同時に吹き込むパーディのドラミングは唯一無二の価値を持っていた。
スタジオ・ワークと並行して、リーダーとしてもPrestigeやFlying Dutchmanといった名門レーベルから『Purdie Good!』(1971年)や『Soul Is... Pretty Purdie』(1972年)などのソロ・アルバムを発表した。これらはソウル・ジャズやヘヴィ・ファンクの傑作として愛され、のちにヒップホップ黎明期から現代に至るまで数多くのプロデューサーにサンプリングされるレア・グルーヴの至宝となっている。
自らの名を冠したビートを生み出し、半世紀以上にわたって音楽シーンのリズムの基準を定義し続けたBernard Purdieは、今日においてもすべてのリズム・セクションにとって最大の道標であり続けている。