Vinyl Record Reviews
Fontaines D.C.(フォンテインズ D.C.)は、アイルランド・ダブリン出身のポスト・パンク/インディー・ロック・バンド。ダブリンの音楽学校BIMMで出会ったGrian Chatten(ボーカル)、Conor Deegan III(ベース)、Carlos O’Connell(ギター)、Conor Curley(ギター)、Tom Coll(ドラム)の5人によって結成された。
メンバー全員が詩作に深い関心を持ち、W.B.イェイツやパトリック・カヴァナ、ジェームズ・ジョイスといったアイルランドの文豪やビート詩人の影響を共有していた。バンド名は映画『ゴッドファーザー』の登場人物ジョニー・フォンテインに由来し、米国の同名バンドとの重複を避けるためにダブリン・シティを表す「D.C.」が追加された。
敏腕プロデューサーのダン・キャリーと組み、2019年にPartisan Recordsからデビュー・アルバム『Dogrel』を発表。ダブリンの都市生活やアイデンティティを生々しく描き出した鋭利なポスト・パンク・サウンドが世界的な脚光を浴び、マーキュリー賞やアイヴァー・ノヴェロ賞にノミネートされた。
続く2020年の2ndアルバム『A Hero's Death』ではグラミー賞「最優秀ロック・アルバム」にノミネート。2022年の3rdアルバム『Skinty Fia』では、ロンドン移住後の疎外感やアイリッシュとしてのアイデンティティをダークで重厚なゴシック・サウンドへと昇華し、全英・アイルランド両チャートで初登場1位を記録。2023年のBRITアワードで「最優秀インターナショナル・グループ賞」を受賞した。
2024年に名門XL Recordingsへ移籍し、アークティック・モンキーズらを手がけたジェームズ・フォードをプロデューサーに迎えた4thアルバム『Romance』をリリース。従来のポスト・パンクの枠組みを大胆に脱ぎ捨て、大友克洋の『AKIRA』やグランジ、シューゲイザー、ヒップホップのエッセンスを貪欲に取り入れた壮大なディストピア的世界観を構築し、全英チャート2位を記録。世界的スタジアム・アクトとしての地位を決定づけた。
最大の特徴は、Grian Chattenの強いダブリン訛りによるスポークン・ワード的な力強いボーカルと、詩情と怒りが生々しく同居するリリックである。そこに、ツイン・ギターが織りなすソリッドかつ重層的なリフと、タイトで直線的なリズム隊が重なり、独特の緊迫感を生み出す。アイルランドの文学的遺産と現代の若者の実存的苦悩をロックの攻撃性と直結させ、2020年代を代表するロック・バンドとして圧倒的な評価を確立している。