Fontaines D.C. - Dogrel (2019)
Fontaines D.C.『Dogrel』
アイルランド、ダブリン出身のFontaines D.C.が2019年に発表したデビュー・アルバム。ダブリンの音楽学校BIMMで出会った5人が、詩や文学への共通の関心を土台に結成したバンドで、作品名の『Dogrel』は「doggerel(粗削りな民衆詩・酒場詩)」に由来する。格式ばった詩ではなく、日常の言葉や口語の側に重心を置く姿勢が、このタイトルにもそのまま表れている。
制作背景・エピソード
バンド名は映画『ゴッドファーザー』の歌手ジョニー・フォンテインに由来し、同名バンドとの重複を避けるために「ダブリン・シティ」を表す「D.C.」が加えられた。自主制作シングルで注目を集めたのち、ブルックリンのPartisan Recordsと契約し、ロンドンにあるダン・キャリーのスタジオ(Mr. Dan's Studio)で本作を録音した。スタジオはキャリーの自宅を兼ねており、アットホームな環境の中で過度な加工を抑えた生々しいライブテイクが重ねられた。キャリーは完成前から、この作品がマーキュリー賞にノミネートされるとメンバーに語っていたという。
アルバムには、歌詞を印刷したカードボード製のインナー・スリーブとダウンロードコードが付属した。150枚のみ、Resident Recordsでオビ付きで販売された盤もあった。クレジットには、℗ & © 2019 Partisan Records LLC / Knitting Factory Records / Fontaines D.C.と記されている。
時代の文脈
2010年代末のUKとアイルランドではポストパンクの再評価が進み、その流れの中でFontaines D.C.はダブリンの新しい代表格として受け止められた。彼らは、急速な再開発が進むダブリンの変化や、若者の焦燥を歌詞に落とし込み、アイルランドの現代の空気を記録した作品として熱烈な支持を獲得した。
サウンド・聴きどころの評され方
ザ・フォール直系の反復的で荒々しいポストパンクの推進力と、ザ・ポーグスやザ・ダブリナーズといったアイリッシュ・フォークの精神性が融合した独自のサウンドが特徴。強いダブリン訛りで言葉を叩きつけるグリアン・チャッテンの歌唱は、街頭の詩人のようなスポークンワーズ的リアリティを放つ。
収録曲では、「Big」の性急な疾走感、「Liberty Belle」のモータウンビートとガレージロックの交錯、「Boys in the Better Land」の冷徹なギターリフ、そしてアイルランド伝統のフォーク・バラッドの哀愁を讃えた「Dublin City Sky」に至るまで、パンクの衝動と深い詩情が共存する構成が高く評価された。
評価
リリース後は高い評価を受け、アイルランド・チャートで4位、UK Albums Chartで9位を記録した。さらにRough TradeとBBC Radio 6 Musicで2019年のAlbum of the Year第1位に選ばれ、2019年のマーキュリー賞にもノミネートされた。
トラックリスト
- A1 Big
- A2 Sha Sha Sha
- A3 Too Real
- A4 Television Screens
- A5 Hurricane Laughter
- A6 Roy's Tune
- B1 The Lotts
- B2 Chequeless Reckless
- B3 Liberty Belle
- B4 Boys In The Better Land
- B5 Dublin City Sky