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Юрий Антонов(ユーリ・アントーノフ、本名 Юрий Михайлович Антонов/ユーリ・ミハイロヴィチ・アントーノフ、1945年2月19日生まれ)は、旧ソビエト連邦およびロシアを代表する伝説的な作曲家、シンガーソングライター、キーボード奏者である。キャッチーで洗練された旋律とロックの躍動感を融合させ、ソ連国営レーベル「メロディヤ(Melodiya)」を通じて数千万枚規模のレコード・セールスを叩き出した、東欧ポピュラー音楽史上屈指のメガスターとして知られる。1997年にはロシア連邦人民芸術家の栄誉を授与された。
ウズベク共和国のタシュケントで軍人の家庭に生まれたアントーノフは、戦後ベラルーシに移住。モロデチノ音楽学校でアコーディオンを専攻し、合唱指揮やピアノを修めた。ミンスクのベラルーシ国立フィルハーモニーでの指導員や伴奏者を経て、プロの音楽家としてのキャリアを切り拓く。
1969年、レニングラードでソ連初の公式ロック/ポップ・グループ(VIA)のひとつ「ポユシチエ・ギタルィ(歌うギターたち)」にキーボード奏者として加入。ここで自ら作曲を手掛けた叙情的なバラード「君より美しい人はいない(Нет тебя прекрасней)」がソ連全土で爆発的なヒットを記録し、稀代のメロディメーカーとして一躍その名を知らしめた。
1970年代末から1980年代初頭にかけて、アントーノフは当時ソ連屈指の実力派アート・ロック/ハード・ロック・バンドであった「アラクス(Araks / Аракс)」をバック・バンドに迎え、スタジオ録音とツアーを敢行した。このコラボレーションによって、彼のメロディックな楽曲は、シンセサイザーの鮮烈なリフ、歪んだエレキギター、重厚なドラムを伴う西側のAORやソフト・ロックに匹敵するダイナミックなサウンドへと劇的な進化を遂げた。
この黄金期にメロディヤから発表されたEP盤群からは、「黄金の階段(Золотая лестница)」「鏡(Зеркало)」「アナスタシア(Анастасия)」「軽やかな足取りで/思い出す(Я вспоминаю)」など、現在もロシアで歌い継がれる国民的メガヒットが次々と誕生した。
1981年には、オデッサ映画スタジオ制作のミュージカル映画『女性たちを守れ(Берегите женщин)』の全劇伴および挿入歌を担当。アラクスとともに演奏した瑞々しい楽曲群がスクリーンを彩り、若者層を中心に熱狂的な支持を集めた。
1983年には、待望のフル・アルバム『君の家の屋根(Крыша дома твоего)』をメロディヤからリリース。親しみやすく温もりあふれる表題曲はソ連全国民的なアンセムとなり、アルバムは当時のソ連国内で天文学的な販売数を記録した。
ソ連体制下の厳しい検閲制度の中で、西側の良質なソフト・ロック、ディスコ、ニューウェイヴの語法を卓越したセンスで消化し、情緒豊かな東欧のエストラーダ(大衆歌謡)と高次元で結実させたユーリ・アントーノフ。その音楽は、アンダーグラウンドのロックと体制側の公式音楽の間にあった壁を取り払い、世代やイデオロギーを超えて人々の心を掴んだ。ソビエト・ポップ/ロック史における最も偉大なソングライターの一人である。