Vinyl Record Reviews
Millie Jacksonは、1944年7月15日にジョージア州トムソンで生まれたR&B/ソウル・シンガー、ソングライター、元モデルだ。本名はミルドレッド・ヴァージニア・ジャクソン。ファンクとソウルを軸に活動し、1960年代前半から歌手としてのキャリアを始めている。
母親の死後、ニューアークやニューヨーク周辺に移り住み、ブルックリンを拠点に『JIVE』や『Sepia』といった雑誌のモデルとして活動していた。歌手として注目されるきっかけは1964年、ハーレムのナイトクラブ、スモールズ・パラダイスのタレント・コンテストで優勝したことだった。
当初からステージでは長い語りを交えることがあり、本人は緊張して客に話しかけていたことが始まりだと話している。レーベル側がそのライブ感を作品にも取り入れたことで、後のスタイルにつながっていった。
1971年にはSpring Recordsから発表した「A Child of God」がR&Bチャートで22位に入り、その後も「Ask Me What You Want」「My Man, a Sweet Man」などでR&Bトップ10ヒットを重ねている。
1974年のアルバム『Caught Up』は大きな転機になった作品だ。不倫関係の三角関係を、愛人と妻それぞれの視点から描いたコンセプト・アルバムで、マッスル・ショールズで録音された。グラミー賞にもノミネートされている。
この作品で前面に出た、際どさのあるユーモラスな長い語りは、その後のトレードマークとして定着した。翌年には続編『Still Caught Up』も発表している。
Millie Jacksonの歌唱でよく語られるのが、楽曲の中に入る長いスポークン・パートだ。単に歌うだけでなく、会話のような語りを挟みながら展開するスタイルで、ステージ上のやり取りがそのまま作品に反映されている。
この手法は、後のラップの先駆けのひとつとして扱われることもある。本人が意図してそうしたというより、ライブでの振る舞いが作品化されていった流れとして見たほうが近い。
RIAAでゴールド認定を受けたアルバムは3作ある。1979年にはアイザック・ヘイズとのデュエット・アルバム『Royal Rappin's』も発表している。
WhoSampledでは、彼女の音源が300曲以上でサンプリングされていることが確認できる。ヒップホップ以降の世代にも素材として使われてきたことがわかる数字だ。
また、娘のキーシャ・ジャクソンも歌手として活動している。
Millie Jacksonは、ソウルやファンクの文脈の中で、歌と語りを行き来するスタイルを強く打ち出したアーティストだ。作品ごとにその特徴がはっきり出ていて、ヒット曲、コンセプト・アルバム、サンプリングの多さまで含めて、活動の足跡を追いやすい存在になっている。