Millie Jackson - It Hurts So Good (1973)
Millie Jackson 1973

Millie Jackson - It Hurts So Good (1973)

Funk / Soul Funk Soul

Millie Jackson『It Hurts So Good』

アメリカのR&B/ソウル・シンガー、ミリー・ジャクソン(Millie Jackson)が1973年にニューヨークのSpring Records(Polydor配給、規格番号:SPR 5706)から発表した通算2作目のスタジオ・アルバム。1972年のデビュー・アルバム『Millie Jackson』(全米R&B 4位・ポップ27位の「Ask Me What You Want」やR&B 7位の「My Man, A Sweet Man」を収録)に続く作品で、従来のニューヨーク「Media Sound Studios」での録音に加え、アラバマ州シェフィールドの名門「Muscle Shoals Sound Studio(マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ)」でもセッションが行われ、制作の重心がニューヨーク録音からサザン・ソウルの聖地マッスル・ショールズへと移り変わっていく転換期のアルバムとなっている。

制作背景と録音

本作では、1stアルバムからニューヨーク・セッションを支えてきたSpring Records専属プロデューサーのレイフォード・ジェラルド(Raeford Gerald)に加えて、新たにブラッド・シャピロ(Brad Shapiro)がプロデューサーとして迎えられた。編曲・指揮にはジェラルドとシャピロのほかマイク・ルイス(Mike Lewis)も名を連ね、オーケストレーションにはルー・デル・ガット(Lew Del Gatto)とトニー・カミロ(Tony Camillo)が参加している。ニューヨークの華やかなオーケストレーションを伴うジェラルド制作曲と、マッスル・ショールズ・リズム・セクション(Muscle Shoals Rhythm Section)をバックに据えたシャピロ制作曲という、2つの制作体制が並走したアルバムだ。

なかでもブラッド・シャピロがマッスル・ショールズでプロデュースしたタイトル曲「It Hurts So Good」(A4)は、マッスル・ショールズ拠点のシンガーソングライターであるフィリップ・ミッチェル(Phillip Mitchell)が書き下ろし、1971年にKatie Love and the Four Shades of BlackがMuscle Shoals Soundレーベルに初録音していた楽曲のカバーである。ジャクソンによる情感豊かで力強いバージョンが大きな成功を収めたことを機に、彼女は以降の制作拠点をマッスル・ショールズとシャピロとのコンビへ本格的に移行させることになった。

収録曲の流れと当時の位置づけ

冒頭のA1「I Cry」(Gary ByrdとRaeford Geraldの共作)ではドラマチックな語りの導入が置かれ、続くA2「Hypocrisy」(ミリー・ジャクソンと当時の夫Victor Davisの共作)はA面ラストのA6「Hypocrisy (Reprise)」へと受け継がれる。さらにB面ラストにも先行シングルのリプライズであるB6「Breakaway (Reprise)」(レイフォード・ジェラルド作)が配されるなど、アルバムの曲間をリプライズで繋ぐ構成が採られている。こうした語りとリプライズを用いたドラマ仕立ての手法は、翌1974年にマッスル・ショールズで録音されRIAAゴールドディスクを獲得する不倫コンセプト・アルバムの代表作『Caught Up』(グラミー賞ノミネート曲「(If Loving You Is Wrong) I Don't Want to Be Right」収録)のスタイルを直接予告するものとなった。

また収録曲の作家陣も多彩で、タイトル曲と同じくブラッド・シャピロがマッスル・ショールズでプロデュースしたジャッキー・エイヴリー(Jackie Avery)作のディープなサザン・ソウル「Love Doctor」(B3)をはじめ、アシュフォード&シンプソン(Nick Ashford & Valerie Simpson)作の「Don't Send Nobody Else」(A5)、のちにB.T. Expressのヒット曲を手がけるビリー・ニコルズ(Billy Nichols)作の「Good To The Very Last Drop」(B1)と「Close My Eyes」(B5)、Orleansのジョン・ホール夫妻(John Hall & Johanna Hall)作の「Two-Faced World」(A3)など、充実した楽曲群が並んでいる。

タイトル曲「It Hurts So Good」は、タマラ・ドブソン(Tamara Dobson)主演の1973年のブラックスプロイテーション映画『クレオパトラ・ジョーンズ(Cleopatra Jones)』の劇中歌およびサウンドトラックにも起用されて広く注目を集めた。シングルとしては1973年3月の先行曲「Breakaway」が全米R&Bチャート16位、同年8月の「It Hurts So Good」が全米R&Bチャート最高3位・Billboard Hot 100でも最高24位を記録する自身最大のクロスオーバー・ヒットとなり、アルバム自体もBillboard Top Soul Albumsチャートで最高13位を記録した。

後世への影響

ジャクソンが本作でヒットさせた「It Hurts So Good」は、翌1974年にジャマイカの女性シンガー、スーザン・カドガン(Susan Cadogan)によって「Hurt So Good」としてカバーされた。リー・“スクラッチ”・ペリー(Lee “Scratch” Perry)がプロデュースし、ボリス・ガーディナー(ベース)やZap Powのホーン隊が参加したカドガンのバージョンは1975年に全英シングル・チャート最高4位の大ヒットとなり、ラヴァーズ・ロックの歴史的古典として定着している。さらに1995年には元ブロンスキ・ビートのジミー・ソマーヴィル(Jimmy Somerville)によるカバーも全英15位を記録した。

また、サンプリング・ソースとしても知られ、英国のトリップ・ホップ/ダウンテンポ・プロデューサーAim(エイム)の代表作『Cold Water Music』(1999年)のタイトル曲などで本作収録の「It Hurts So Good」がサンプリングされている。2006年には英Ace Records(Southbound)からボーナス・トラックを加えたデジタル・リマスターCDが再発された。

評されたポイント

音楽評論家のロバート・クリストガウ(Robert Christgau)は『Christgau's Record Guide: Rock Albums of the Seventies』で本作に「B」評価を与え、AllMusicのスティーヴン・クック(Stephen Cook)は星3つを付けている。クックは、ニューヨークの華麗なオーケストレーションと、マッスル・ショールズの泥臭くタイトなサザン・ソウル/ファンクのグルーヴが同居する過渡期ならではの魅力を評している。

トラックリスト

  1. A1 I Cry 4:12
  2. A2 Hypocrisy 2:14
  3. A3 Two-Faced World 2:50
  4. A4 It Hurts So Good 3:07
  5. A5 Don't Send Nobody Else 3:22
  6. A6 Hypocrisy (Reprise) 2:00
  7. B1 Good To The Very Last Drop 3:49
  8. B2 Help Yourself 3:05
  9. B3 Love Doctor 2:55
  10. B4 Now That You Got It 2:33
  11. B5 Close My Eyes 3:12
  12. B6 Breakaway (Reprise) 1:56

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Millie Jackson

Millie Jackson

Millie Jacksonは、1944年7月15日にジョージア州トムソンで生まれたR&B/ソウル・シンガー、ソングライター、元モデルだ。本名はミルドレッド・ヴ...

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