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Phyllis Hyman(フィリス・ハイマン/1949–1995)は、ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ、ピッツバーグ育ちのアメリカのソウル/R&B歌手、ソングライター、女優。180cmを超える彫刻のような長身と洗練された気品、そして豊潤でスモーキーな低音域(コントラルト)を誇り、フィリー・ソウル、ダンス/ディスコ、クワイエット・ストーム、ジャズ・バラードを自在に行き来した唯一無二の歌姫である。
ハイマンの才能にいち早く目をつけたのが、名ジャズ・ドラマーのノーマン・コナーズ(Norman Connors)であった。1976年に発表されたコナーズの名盤『You Are My Starship』への客演で大きな注目を集めた彼女は、名門Buddah Recordsと契約を結ぶ。
1977年にセルフタイトルのデビュー・アルバム『Phyllis Hyman』を発表。トム・ベル作の「Loving You — Losing You」などを収録し、都会的で洗練されたフィリー・ソウルの正統後継者として確固たる評価を獲得した。
Buddah RecordsがArista Recordsに吸収合併されたことで、ハイマンはクライヴ・デイヴィス率いるアリスタへ移籍。ここでの最大の芸術的・商業的ハイライトとなったのが、1979年にリリースされた4thアルバム『You Know How to Love Me』である。
元マイルス・デイヴィス・バンドのジェームス・エムトゥーメ(James Mtume)とレジー・ルーカス(Reggie Lucas)の黄金プロデュース・チームが手掛けたタイトル曲は、華麗なストリングスと疾走感あふれるベースライン、そしてハイマンの力強くも優美なシャウトが完璧な調和を見せる奇跡のナンバー。世界中のクラブ・フロアやR&Bチャートを席巻し、ガラージ/ダンス・クラシックの不滅の金字塔となった。
音楽活動と並行して舞台女優としても傑出した才能を発揮した彼女は、1981年、デューク・エリントンの音楽を称えるブロードウェイ・ミュージカル『ソフィスティケイテッド・レディーズ(Sophisticated Ladies)』に出演。トニー賞助演女優賞にノミネートされ、シアター・ワールド賞を受賞するなど、舞台人としても大成功を収めた。
1980年代半ば、アリスタの画一的なポップ路線に反発したハイマンは、故郷のルーツであるギャンブル&ハフ率いる名門フィラデルフィア・インターナショナル・レコード(PIR)へ移籍。1986年の『Living All Alone』、1991年の『The Prime of My Life』を発表し、後者からのリード・シングル「Don't Wanna Change the World」が悲願の全米ビルボードR&Bチャート第1位を獲得。成熟したアーバン・コンテンポラリー/クワイエット・ストームの頂点に立った。
しかし長年にわたる双極性障害(躁鬱病)との過酷な闘病の末、1995年6月30日、46歳の誕生日を目前にしてニューヨークの自宅アパートで自ら命を絶った。
情感豊かな表現力と深みのあるヴォーカリゼーションは、今なお「シンガー・オブ・シンガーズ(歌手が憧れる歌手)」として称賛され、エリカ・バドゥ、ジル・スコット、アニタ・ベイカーなど後進のネオ・ソウル/R&Bシンガーに決定的な影響を与え続けている。