Phyllis Hyman - You Know How To Love Me (1979)
Phyllis Hyman『You Know How To Love Me』(1979)
1979年に米Aristaからリリースされたフィリス・ハイマンの通算4作目(Arista移籍第2弾)のスタジオ・アルバム『You Know How To Love Me』。ジャジーでディープな表現力を持つ屈指の女性ソウル・シンガー、フィリス・ハイマンが、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったジェームス・エムトゥーメ&レジー・ルーカスのプロデュース陣とがっちりタッグを組み、永遠のガラージ/ディスコ・アンセムとなった表題曲をはじめ、洗練されたアーバン・ソウルの真髄を刻み込んだ歴史的名盤である。
制作背景・エピソード
本作のプロデュースおよび主要曲のソングライティングを手掛けたのは、マイルス・デイヴィスの電化バンド出身で、ステファニー・ミルズの大ヒット連打でも手腕を発揮した名コンビ、ジェームス・エムトゥーメとレジー・ルーカス(Mtume/Lucas Productions)。レコーディングにはエムトゥーメ(Key, Perc)とルーカス(G)をはじめ、ハワード・キング(Ds)、バジル・フィアリングトン(B)、ヒューバート・イヴス(Key)、さらにバック・コーラスとしてタワサ・アジーやグウェン・ガスリーら東海岸ソウル/ファンクの最重要プレイヤーが集結した。
フィリスのトレードマークである深く芳醇なコントラルト(低音域)ヴォーカルの魅力を最大限に活かすべく、エムトゥーメ&ルーカスは洗練されたコードワークと跳躍感のあるグルーヴを提供。エモーショナルな歌唱とモダンなダンス・ビートが奇跡的な調和を遂げた。
時代の文脈
1979年は、大衆化したディスコ・ブームが反動を迎える一方で、ニューヨークのアンダーグラウンド・クラブやブラック・ラジオでは、より洗練された本物志向のダンス・ミュージック(後のガラージ、ポスト・ディスコ、80sアーバン・ブギー)へと進化を遂げていた転換期。本作はその結節点に位置し、ストリングスとホーンが舞う華麗なオーケストレーションと、引き締まったファンクの骨格、そして本格派ソウル・シンガーの圧倒的な声量が融合した、80年代ブラック・コンテンポラリーの先駆けとなった。
サウンド・聴きどころ
最大のハイライトは、7分半に及ぶオープニング・トラック「You Know How To Love Me」だ。躍動するベースラインと鋭いカッティング・ギター、高揚感を煽るストリングスに乗せて、フィリスの伸びやかで力強いヴォーカルがフロアを歓喜の渦に巻き込む。ダンス・クラシックスの頂点に君臨するこの名曲のほか、艶やかで甘美なミディアム「Some Way」や「Under Your Spell」、彼女の情感豊かな低音が胸を打つバラード「Complete Me」など、ダンスの高揚とメロウな寛ぎが完璧なバランスで配されている。
後世への影響
タイトル曲「You Know How To Love Me」は、ニューヨークの伝説的クラブ「Paradise Garage」でDJラリー・レヴァンが看板アンセムとしてヘヴィ・プレイしたことから、クラブ・ミュージック史に残る不滅のクラシックとなった。後年のハウス・ミュージックやガラージ・ハウス、アシッド・ジャズに決定的な影響を与え、ロビン・Sによるカヴァーをはじめ、現在に至るまで無数のDJやプロデューサーに愛され、サンプリングやリミックスが絶えない。
評価・チャート
アルバムは米BillboardのTop R&B/Black Albumsチャートで最高10位、Billboard 200で最高50位を記録し、フィリス・ハイマンにとってキャリア最大の商業的成功を収めた代表作となった。シングル「You Know How To Love Me」もBillboard R&Bチャートで12位、Disco Top 100で6位、全英シングル・チャートでも47位を記録。早世した名歌姫フィリス・ハイマンのディスコグラフィ中、燦然と輝くマスターピースとして今日まで熱烈に支持されている。
トラックリスト
- A1 You Know How To Love Me 7:34
- A2 Some Way 5:08
- A3 Under Your Spell 4:40
- A4 This Feeling Must Be Love 3:43
- B1 But I Love You 3:05
- B2 Heavenly 4:30
- B3 Hold On 4:12
- B4 Give A Little More 4:04
- B5 Complete Me 5:22