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The Miles Davis Quintet(マイルス・デイヴィス・クインテット)は、「モダン・ジャズの帝王」マイルス・デイヴィスが率いた伝説的な5人編成バンドである。固定されたバンドとして永続したわけではなく、時代ごとにメンバーを刷新しながら活動したが、とりわけ1950年代半ばの「第1期黄金クインテット」と、1960年代半ばの「第2期黄金クインテット」は、ジャズの歴史を不可逆的に前進させた最高峰のアンサンブルとして世界中で称賛されている。
第1期黄金クインテットは、マイルス・デイヴィス(トランペット)、当時まだ無名に近かったジョン・コルトレーン(テナー・サックス)、レッド・ガーランド(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラムス)によって結成された。後にキャノンボール・アダレイ(アルト・サックス)が加わりセクステットへと発展した。
マイルスの叙情的で空間を生かしたミュート・トランペットと、コルトレーンの情熱的で音数の多い奔放なテナー・サックス(シーツ・オブ・サウンド)の鮮烈な対比、そしてガーランドの洒脱なブロック・コードと鉄壁のリズム・セクションが融合し、ハード・バップの理想形を体現した。
メジャーであるコロンビア移籍記念作『'Round About Midnight』(1957年)に加え、プレスティッジ・レコードとの契約消化のために1956年のわずか2日間のセッションで吹き込まれた奇跡の4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』は、ジャズ史に永遠に残る不滅の金字塔である。このアンサンブルの成功が、後の『Milestones』や『Kind of Blue』の誕生へと繋がっていった。
第2期黄金クインテットは、マイルス(トランペット)、ウェイン・ショーター(テナー・サックス)、ハービー・ハンコック(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、そして当時弱冠17歳だった天才ドラマー、トニー・ウィリアムス(ドラムス)によって結成された。
ショーターによる先進的でミステリアスな楽曲群を軸に、トニー・ウィリアムスの変幻自在なポリリズム、ハンコックの斬新なモーダル・ボイシング、カーターの伸縮自在なベースがスリリングに呼応。コード進行の束縛から解放され、テンポや拍子をメンバー同士の呼吸で変化させる「タイム・ノー・チェンジ」と呼ばれる極限のインタープレイを完成させた。
『E.S.P.』(1965年)、『Miles Smiles』(1967年)、『Sorcerer』(1967年)、『Nefertiti』(1968年)などのスタジオ名盤や、シカゴでの伝説的ライヴ盤『Live at the Plugged Nickel』を録音。アコースティック・ジャズの極致に達したこのアンサンブルは、後にエレクトリック楽器を導入し『In a Silent Way』や『Bitches Brew』へと至るジャズ・ロック/フュージョン革命の母体となった。
第2期黄金クインテットの解体後、マイルスとショーターにチック・コリア(エレクトリック・ピアノ)、デイヴ・ホランド(ベース)、ジャック・ディジョネット(ドラムス)が加わった編成は、公式スタジオ録音を残さなかったことから「ロスト・クインテット」と呼ばれる。
公式スタジオ盤こそないものの、ヨーロッパ・ツアー等で繰り広げられた凄まじい熱量のエレクトリック・フリー・ファンクのライヴ音源が後年発掘・リリースされ、アコースティックからエレクトリック期へのミッシング・リンクとして絶大な評価を受けている。
The Miles Davis Quintetは、単なるリーダーの伴奏グループにとどまらず、メンバー全員が対等にぶつかり合い音楽の地平を拡張する実験場であった。コルトレーン、ハンコック、ショーター、トニー・ウィリアムスら、その後のジャズ界を牽引する巨匠たちを育み、ハード・バップからモード・ジャズ、そしてエレクトリックへの転換点となったこのクインテットの歩みは、そのまま20世紀後半のモダン・ジャズの進化そのものである。