Vinyl Record Reviews
Wally Badarou(ウォーリー・バダルー、本名:Waliou Jacques Daniel Isheola Badarou)は、1955年3月22日にパリで生まれたフランスのミュージシャン、シンセサイザー/キーボード奏者、作曲家、プロデューサーだ。父母は西アフリカのベナン(旧ダホメ共和国)出身の医師で外交官でもあった。
1979年、ロビン・スコットのニュー・ウェイヴ・プロジェクト「M」の世界的大ヒット曲「Pop Muzik」(全米1位・全英2位)とアルバム『New York • London • Paris • Munich』にシンセサイザー奏者として参加した。この参加で広く名前が知られるようになる。
この録音をきっかけに、Island Records創設者のクリス・ブラックウェルに招かれ、バハマ・ナッソーのコンパス・ポイント・スタジオを拠点にしたハウス・バンド、Compass Point All Stars(コンパス・ポイント・オール・スターズ)に加入した。
Compass Point All Starsでは、スライ・ダンバー(ドラムス)、ロビー・シェイクスピア(ベース)、バリー・レイノルズ(ギター)、マイキー・チャン(ギター)、ウザイア・“スティッキー”・トンプソン(パーカッション)らとともに演奏した。ここでの仕事は、1980年代の多くの重要作に残っている。
参加作には、グレース・ジョーンズの3部作『Warm Leatherette』(1980年)、『Nightclubbing』(1981年)、『Living My Life』(1982年)をはじめ、トム・トム・クラブ、トーキング・ヘッズ(『Speaking in Tongues』『Naked』)、ブラック・ウフル(『Chill Out』)、グレゴリー・アイザックス(『Night Nurse』)、グウェン・ガスリー、ジョー・コッカー(『Sheffield Steel』)、ジミー・クリフ、ロバート・パーマー(『Riptide』)、ミック・ジャガー(『She's the Boss』)、リジー・メルシエ・デクルー(『Mambo Nassau』)などの作品があり、愛機のSequential Circuits Prophet-5やNew England Digital Synclavierを駆使した。
1980年以降は、イギリスのジャズ・ファンク/ポップ・バンド、Level 42(レヴェル42)と継続的に仕事をしている。1980年の初期録音(『The Early Tapes』)および1981年のデビュー作『Level 42』から1994年の『Forever Now』まで、すべてのスタジオ・アルバムにキーボード、シンセサイザー、プログラミング、共作者として参加した。
ライヴ・ツアーには同行せず公式メンバーにはならなかったものの、マーク・キングらとともにバンドのサウンドを決定づけた「事実上の第5のメンバー」として広く認められている。1985年の『World Machine』や1987年の『Running in the Family』などでは共同プロデュースも担当した。
ソロ名義では1979年に『Back to Scales Tonight』(Barclay)を発表し、1984年にはインストゥルメンタル・アルバム『Echoes』をIsland Recordsからリリースした。これはコンパス・ポイント・スタジオでのセッションの合間に、Prophet-5やSynclavierを使って録音された作品だ。
『Echoes』には「Chief Inspector」「Mambo」「Hi-Life」「Novela Das Nove」「Keys」などが収録されており、バレアリック・ビートやエレクトロ・ファンク、アンビエント/ニューエイジの金字塔としてカルト的な人気を獲得した。「Chief Inspector」は1985年に全英シングル・チャート46位を記録し、「Mambo」はマッシヴ・アタック(Massive Attack)の1991年のデビュー作『Blue Lines』の冒頭曲「Daydreaming」でそのままサンプリングされたことで知られている。
続く1989年の『Words of a Mountain』は、テープを一切使わずSynclavierとデジタル・ミキサーのみで制作された、音楽史上初期の「フル・テープレス(完全デジタル・ホームスタジオ)録音」のひとつとして知られる。
プロデューサーとしては、マリアンヌ・フェイスフル(『A Child's Adventure』)、アラン・シャンフォー、フェラ・クティ(1986年『Teacher Don't Teach Me Nonsense』)、サリフ・ケイタ(1995年『Folon』)、カルリーニョス・ブラウン、トリロク・グルトゥらの作品を手がけている。
1989年には、ジャン=ポール・グードが演出したフランス革命200周年記念パレードの音楽監督も担当した。映画音楽では『カントリーマン』(1982年)、『蜘蛛女のキス』(1985年、追加音楽)から、近年ではベナン返還文化財を扱ったマティ・ディオップ監督のベルリン国際映画祭金熊賞受賞ドキュメンタリー映画『ダホメ(Dahomey)』(2024年、コーネル・ワイルドとの共作)の音楽まで幅広く手がけている。