3 - … To The Power Of Three (1988)
3 1988

3 - … To The Power Of Three (1988)

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3『… To The Power Of Three』(1988)レビュー

1988年にGeffen Recordsから出た、3の唯一のアルバムが『… To The Power Of Three』。3は、元ELPのキース・エマーソンとカール・パーマーに、ロバート・ベリーを加えた短命のトリオで、プログレッシブ・ロックの文脈にありながら、80年代後半の空気を強くまとった作品として知られている。ELPの名前が先に立つ編成だが、このアルバムはグレッグ・レイク不在で制作されており、同じ系譜の再現作というより、新しい形のバンドとして組み直された一枚になっている。

ELPの延長線上にありつつ、80年代の音に寄った作品

この時期のエマーソンはシンセサイザーの使い方でも70年代の華やかさをそのまま持ち込むのではなく、より整った音像の中でフレーズを組み立てている。そこにパーマーのタイトなドラム、ベリーの歌とベースが重なり、全体はプログレの複雑さよりも、当時のハードめのポップ・ロック、アリーナ・ロックに近い輪郭で進む。収録曲の中心にあるのは大仰な組曲ではなく、リフとメロディを前に出した楽曲群で、3人編成らしい機動力がはっきり出た作り。

制作はロンドンのE-Zee StudiosとWestside Studios、ミックスはニューヨークのThe Record Plantで行われた。英米のスタジオをまたいだ仕上がりで、演奏の密度と1980年代らしい音の整理が同居している。盤面のクレジットには、ワーナー系の流通を背景にしたGeffenらしい当時の体制も見える。US盤ではSpecialty Records Corporationのプレスが確認でき、内袋にはフォト/歌詞スリーブが付属していた。

シングル「Talkin’ Bout」とアルバムの反応

このアルバムでいちばん目立つ存在は、先行シングルの「Talkin’ Bout」。BillboardのMainstream Rockチャートで9位まで上昇しており、アルバム全体よりもラジオ向けの曲として先に反応を得た形になる。80年代後半のロック市場では、長尺の演奏や技巧の見せ場よりも、すぐに輪郭がつかめる曲の強さが結果に直結しやすく、この曲もその流れの中で受け止められた。

一方でアルバム本体はBillboard 200で97位。大きな商業的成功には届いていない。評論面でも、ELP黄金期の期待と比べる見方が先に立ち、厳しめの評価が多かった。実際、作品の中心は“かつてのELPの再来”ではなく、ロバート・ベリーを前面に置いた新体制のロック・アルバムにある。エマーソンのシンセが当時の耳にはやや旧式に響いた、という指摘も残っている。

収録曲と小さなエピソード

収録曲の中では、バーズの「Eight Miles High」のカヴァーがよく知られている。サイケデリック・クラシックを素材にしつつ、アレンジと歌詞の処理で3流の解釈を加えた形で、オリジナル曲群の中でもひときわ異彩を放つ。もうひとつ、「On My Way Home」はトニー・ストラットン・スミスへの献辞が添えられている。プログレ周辺の歴史をたどるときに名前が出てくる人物への敬意が、作品の中に静かに置かれている。

1988年2月の時点でロサンゼルス・タイムズが収録予定曲として「Talking About」「Lover to Lover」「Eight Miles High」を紹介していたことからも、当初から“ELPの完全復活”というより、80年代仕様に再編した新しい3人組として見られていた様子がうかがえる。

作品の位置づけ

『… To The Power Of Three』は、ELPの名前が持つ重さと、1988年という時代の音作りがぶつかった記録として残っている。プログレの文脈では語られやすい一方で、実際の中身はポップ・ロック寄りの整理された曲作りが中心で、アリーナ・ロックの感触も強い。ロバート・ベリーが加わったことで、演奏の見せ方もボーカルの置き方も変わり、結果として3というバンドの輪郭がそのまま刻まれた一枚になっている。

のちに3は別形態へ移っていくが、このアルバムはその起点となる唯一のスタジオ作として位置づけられる。70年代プログレの巨大な構築性とは別の場所で、3人の個性を80年代のフォーマットに収めた作品。そういう意味で、ELP周辺のディスコグラフィーを追うときに外せない一枚になっている。

トラックリスト

  1. A1 Talkin' Bout 4:00
  2. A2 Lover To Lover 4:12
  3. A3 Chains 3:42
  4. Desde La Vida 7:06
  5. B1 Eight Miles High 4:08
  6. B2 Runaway 4:42
  7. B3 You Do Or You Don't 5:02
  8. B4 On My Way Home 4:46

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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