Quasar - The Loreli (1989)
Quasar 1989

Quasar - The Loreli (1989)

Rock Prog Rock

Quasar『The Loreli』(1989)

Quasarの『The Loreli』は、1989年にUKのQ Recordsから出た2作目のアルバムで、英国ネオ・プログレ系バンドとしての姿がはっきり出た作品だ。バンドは1979年にKeith TurnerとMike Kenwrightを中心に始まり、プログレッシブ・ロックの文脈で活動を続けてきた。のちにSan Franciscoを拠点にした時期もあるが、この盤は英国内で制作され、Belair Studios(Potters Bar)で録音、CTS Studios(London)でマスタリングされている。

この作品の大きなポイントは、Tracy Hitchingsの存在だ。のちにLandmarqで知られる彼女にとって、このアルバムは商業録音としての初期作にあたる。歌唱だけでなく、4曲分の歌詞にも関わっており、バンドの中でかなり重要な役割を担っている。ラインナップは変動が多く、Keith Turnerを軸にしながらも、Paul Johnson、Greg Studley、Keren Gaiser、Robert Hunt Robinsonらが参加している。MIDIギターを使って鍵盤パートを補ったToshi Tsuchiyaの存在も、この時期の制作を語るうえで外せない。

作品の位置づけ

『The Loreli』は、前作『Forgotten Dreams』の流れを引き継いだ再構成盤としても知られている。1988年に別ラインナップのカセット版が先に存在し、1989年盤では同じ曲順と曲目を別編成で録り直している。Keith TurnerとDave Wagstaffe以外のメンバーが入れ替わっており、バンドの体制が固まる途中で作られた記録でもある。18か月で約270本のライブをこなしていたという活動量もあり、スタジオ作品というより、当時の演奏現場の勢いがそのまま入ったアルバムとして見えてくる。

サウンドと内容

同時代の英国プログレ/ネオ・プログレと比べると、シンセサイザーの使い方や音像には80年代らしい感触が残る。一方で、曲作りそのものはメロディと構成を重視した進行で、長尺の中でテーマを組み立てていくタイプの作りだ。Web上のレビューでは、前作より完成度が上がったという見方と、低予算ゆえの薄い音作りを指摘する見方が並んでいる。実際、派手な音響処理で押すタイプではなく、演奏と歌を前に出した設計に近い。

タイトル曲「The Loreli」は、ライン川の岩山に住む伝説の妖精ローレライを題材にしたナンバーとして紹介されている。物語性のある題材を扱う点は、プログレらしい構えが出た部分だ。代表曲としてこの曲が扱われることが多く、アルバム全体の輪郭をつかむ入口にもなっている。

クレジットと制作の細部

LPはピクチャー/歌詞入りインナー・スリーブ付きで出荷されている。スリーブのコンセプトはQuasar自身によるもので、細部までバンド主導の制作姿勢が見える。Special thanksの欄にはJim Greenへの謝辞があり、「without whom this album would not exist」と記されているのも印象的だ。John Timmsへの「for the bacon?」という一文も含め、堅いプログレ作品の中に少し肩の力が抜けた空気がある。

『The Loreli』は、Quasarのカタログの中では、ラインナップの変化と現場感の強さが同居した1枚として位置づけられる。英国ネオ・プログレの流れを背にしながら、Tracy Hitchingsの初期参加作としても記録性が高い。派手な成功作として語られることは少ないが、バンドの活動密度と制作の実態がそのまま残ったアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 The Loreli 5:10
  2. A2 Seeing Stars Part 2 (The Dark Star) 4:56
  3. A3 As You Fall Asleep... 10:34
  4. B1 Logic? 10:30
  5. B2 Power In Your Hands 7:02

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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