Comus - First Utterance (1971)
Comus『First Utterance』(1971)
Comusの『First Utterance』は、1971年にUKのDawnレーベルから出た初期作で、英国のプログレッシブ・フォークを語るうえで外せない1枚だ。Bromley, Kent出身のバンドによるデビュー作であり、のちの活動を含めても、この作品がもっとも強く名前を残している。DawnはPye傘下の“アンダーグラウンド/プログレッシブ”寄りのレーベルとして知られ、このアルバムもその方針に沿うように、商業性よりも独自性を前に出した内容になっている。
作品の位置づけ
Comusは1960年代後半に結成され、1974年にいったん解散、2008年に再編された。『First Utterance』はその活動の出発点に置かれる作品で、バンドの名前を決定づけた重要盤といえる。公式情報でも、制作は1970年11月から12月にかけてPye Studiosで行われ、1971年にリリースされたことが確認できる。先行シングルとして「Diana」も存在するが、このアルバム全体の印象はシングル単位では捉えにくい。
サウンドと編成
編成は、ギター、ヴァイオリン、フルート、オーボエ、女性ヴォーカルを含む6人編成が核になっている。ロックの基本編成にフォーク寄りの楽器を足した、というより、最初から音色の設計そのものがこのバンドの個性になっている。演奏はアコースティックな響きだけで進む場面もあれば、急に緊張感の高い展開へ移る場面もあり、同時代の英国フォーク・ロックの中でもかなり独特だ。PentangleやFairport Conventionのような流れと近い部分はあるが、Comusはそこにもっと硬い輪郭と不穏な感触を持ち込んでいる。
実際に聴くと、音の配置がかなりはっきりしている。弦楽器と木管、歌声が前に出る一方で、リズム隊が単に伴奏に回らず、曲の空気を切り替える役割を担っている。民謡調の旋律が顔を出しても、すぐに安定した着地には向かわない。そのため、フォーク・ロックというより、フォークの素材を使った構成音楽として受け取られることも多い作品だ。
歌詞とテーマ
歌詞は民話、神話、暴力性を帯びた世界観に寄っていて、明るい物語性よりも、暗い情景の連続として耳に残る。Roger Woottonが語ったとされる“drug induced haze”という制作時の感覚も、このアルバムの特異さを示す要素になっている。とはいえ、単なる奇抜さだけで押し切る作品ではなく、言葉と音の組み合わせで緊張を維持する作りになっているのが面白いところだ。
当時の反応とその後
当時の評価はかなり割れたようだ。現在のレビューでは高く評価されることが多く、実験性の強いフォークロックとして位置づけられている一方、同時代の受け止め方はかなり厳しかったことがうかがえる。商業的には大きな成功に至らず、英国アルバム・チャートに入った記録も確認できない。売上も多くはなかったとされており、ヒット作ではなかったのは確かだ。
それでも後年の評価は高く、特に後続のプログレッシブ・メタルやアヴァンギャルド寄りのバンドに影響を与えた作品として語られることがある。たとえばOpethのようなバンドがこのアルバムに言及されることもあり、重さと静けさ、民俗性と不穏さを同居させる感覚は、のちの世代にも届いている。
盤の仕様
オリジナル盤はオレンジのDawnレーベルで、ゲートフォールド仕様。歌詞インサート付き、あるいはトラックリストとバンド情報を載せた三つ折りインサート付きで出ている。1971年盤としての存在感は、音だけでなくこのパッケージ面にもある。Dawnらしい“掘り出し物”感のある装丁で、内容と外観がきれいに一致している印象だ。
まとめ
『First Utterance』は、英国フォーク・ロックの枠に収まりながら、その枠を内側から押し広げた作品だ。メロディ、編成、歌詞、演奏のどれもが整いすぎず、しかし崩れ切らない。そのバランスがこのアルバムの核心にある。Comusにとっては出発点であり、同時にもっとも強く記憶される到達点でもある。1971年という年の英国プログレッシブ/フォークの空気を知るうえで、かなり重要な1枚だろう。
トラックリスト
- A1 Diana 4:28
- A2 The Herald 5:30
- A3 Drip Drip 11:35
- B1 Song To Comus 7:25
- B2 The Bite 6:20
- B3 Bitten 0:30
- B4 The Prisoner 6:20