Barock Project - Time Voyager (2024)
Barock Project『Time Voyager』について
Barock Projectは、イタリア・モデナで2003年に結成されたプログレッシブロック・バンド。中心人物はピアニスト、ボーカリスト、作曲家のLuca Zabbiniで、キース・エマーソンやEL&Pの系譜を踏まえつつ、バロック音楽や古典的な作曲感覚をロックとジャズの枠組みに落とし込むスタイルで知られている。『Time Voyager』はそのバンドが2024年に発表した作品で、2019年の『Seven Seas』以来となる長編作として位置づけられる。
本作はイタリア盤のヴァイナルで、全100枚のハンドナンバリング仕様。自主レーベル名義でのリリースで、グロッシーなゲートフォールド・ジャケット、2ページの印刷インサート、ブラックのポリライナー入り内袋という構成になっている。物理仕様からも、コレクター向けの少数生産盤として作られていることが分かる。
作品の輪郭
『Time Voyager』は、時間の層をまたぐ旅を主題にしたコンセプト作として語られている。各曲が異なる時代や場所の気配を持ち、単なる曲の寄せ集めではなく、全体でひとつの物語を形づくる構成。中でも「Voyager」と「Voyager's Homecoming」は、旅人の出発と帰還を軸にした組曲的な流れを担う中心曲として扱われている。
収録曲には、バロック風の導入を持つ楽曲、ジャズやファンクの要素が前に出る「Propaganda」、東洋的な音階や空気感を思わせる「Shibuya 3 A.M.」、フォーク・シャンティ調の「The Lost Ship Tavern」などが並ぶ。曲ごとに参照している語彙は違うが、どの曲もフックのある旋律を軸に組み立てられていて、演奏技術の誇示よりも、曲としての輪郭を保つことに重心が置かれている印象がある。
Barock Projectというバンドの中での位置
Barock Projectは、デビュー作『Misteriose Voci』以来、一貫してメロディックなプログレッシブロックを追ってきたバンドだが、『Time Voyager』ではその持ち味がかなり整理されている。初期からのクラシカルな鍵盤の存在感に加え、曲の展開やアレンジの密度が洗練され、以前よりも見通しの良い構成になっている。コロナ禍を経て制作されたこともあり、時間や記憶を扱うテーマが、単なる設定以上の重みを持っている。
海外のプログレ系メディアでは、本作をバンドの中でも特に完成度の高い一枚として見る声が目立つ。たしかに、Barock Projectがもともと持っていたEL&P直系の鍵盤感覚、シンフォニックな展開、ジャズ寄りのリズム処理が、ここでは過不足なく結びついている。派手な一発芸より、曲の並びと流れで聴かせる作り。
同時代の文脈
現在のイタリアン・プログレは、往年のシンフォニックな語法を引き継ぎつつ、メロディの分かりやすさや録音の明瞭さを重視するバンドが多い。その中でBarock Projectは、クラシック由来の構築感と現代的なロックの推進力を両立させる側にいる。比較対象としては、EL&Pのような鍵盤主導のプログレ、あるいはイタリアのメロディックなシンフォニック勢が挙がるが、単純な模倣ではなく、ジャズやフォークの要素まで自然に取り込む点に個性がある。
『Time Voyager』は、そうしたバンドの歩みを踏まえたうえで、コンセプト性と楽曲性の両方を強めた作品として受け取れる。派手な話題作というより、積み重ねてきた語法を整理し、アルバム全体の流れに落とし込んだタイプの一枚。100枚限定のヴァイナルという仕様も含めて、作品の性格がはっきりしたリリースになっている。
トラックリスト
- A1 Carry On 6:35
- A2 Summer Set You Free 4:44
- A3 An Ordinary Day's Odyssey 6:03
- B1 The Lost Ship Tavern 4:40
- B2 Voyager 8:08
- B3 Morning Train 6:08
- C1 Propaganda 6:33
- C2 Shibuya 3 A.M. 4:30
- C3 Lonely Girl 5:09
- D1 Mediterranean 5:17
- D2 Kyanite Jewel 5:35
- D3 Voyager's Homecoming 7:36