Dino - 24/7 (1989)
Dino『24/7』について
1989年にUSの4th & Broadwayから出たDinoの『24/7』は、ソロ・シンガーとしての立ち位置を決定づけたデビューアルバムである。DinoことDean Espositoは、ラスベガスでラジオDJや番組制作に関わりながら音楽活動を進めた人物で、一般的なポップ歌手とは少し違う経歴を持つ。その背景が、そのまま作品の作りにも反映されている印象がある。クラブ寄りのビート、ラジオ向きのフック、R&Bの流れをつかんだ歌の運びが、無理なく一枚のアルバムにまとまっている。
作品の位置づけ
『24/7』は、Dinoにとって本格的なメジャー展開の出発点にあたる。1987年の「Summergirls」でまず名前を広げ、その後に4th & B'way/Island/PolyGramと組んで再発した流れのあとに、このアルバムが出ている。シングル先行型のポップ・ダンス路線を、アルバム単位でまとめた作品として見るとわかりやすい。1980年代末のUSポップ/R&B/ダンスの交差点に置かれた一枚で、当時のチャート感覚にかなり寄り添った作りになっている。
実際、このアルバムはBillboard 200で最高34位、R&B/ヒップホップ・アルバム・チャートでも47位に入り、RIAAゴールド認定を受けている。Dinoの作品の中でも、最も広い層に届いた時期の記録として扱われることが多い。
サウンドの輪郭
クレジットを見ると、Jeff Lorber、Paul Jackson, Jr.、Paul Pescoといったプレイヤーが参加している。いずれもその時代のポップ、R&B、フュージョン周辺で存在感のある名前で、演奏面の厚みを支えている。録音はロサンゼルスのJHL StudiosとGround Control Studios、A4とプログラミングはラスベガスのSon Songs Studiosで行われている。都市ごとの制作環境が分かれている点も、この作品の性格を示している。
音の中心は、打ち込みを軸にしたダンス・ポップだが、単に機械的なだけではなく、歌のフレーズにR&Bの滑らかさがある。シンセ・ポップ、エレクトロ、フリースタイル、Hi-NRG、コンテンポラリーR&B、バラードといった要素が並ぶが、聴き進めると、クラブ向けの推進力とラジオ向けの聴きやすさを両立させる設計が見えてくる。ベースラインやドラムマシンの動きは明快で、上に乗るボーカルはきっちり前へ出るタイプ。夜の空気に合う曲と、ミッドテンポで流れを整える曲が同居している。
代表曲「I Like It」
このアルバムを語るうえで外せないのが、3rdシングルの「I Like It」である。Billboard Hot 100で最高7位まで上昇し、ダンス系チャートでも強い成績を残した大ヒット曲で、ゴールド認定も受けている。カナダではダンスチャート1位も記録した。シングルとしての強さがそのままアルバムの推進力になっていて、『24/7』の中心に置かれる曲として機能している。
「I Like It」は、拍の取り方がはっきりしたダンス・ポップでありながら、歌の持ち運びに妙な軽さがある。フックの作りが分かりやすく、サビに向かう導線も素直だ。1989年当時のUSポップ・ダンスの空気、たとえばクラブ寄りの制作とメインストリーム志向の接点が、かなり濃く出ている。
アルバムとしての流れ
収録曲全体は、勢いのあるダンス曲だけで押し切る作りではなく、曲間の温度差がある。A4はSon Songs Studiosで録音され、プログラミングも同地で行われているため、制作の中でも少し別のニュアンスが入っている。こうした部分が、アルバムを単なるシングル集にせず、通して聴いたときの変化を作っている。
また、参加ミュージシャンのクレジットには、所属レーベルの関係で「courtesy of」と記された名前が並ぶ。Jeff LorberはWarner Bros.、Paul Jackson, Jr.はAtlantic、Paul PescoはSireからの参加表記で、当時のレーベル横断的な制作の空気も見える。こうした背景は、80年代後半のメジャー・ダンス作品によくあるものだが、『24/7』ではその仕組みがかなり自然に作品へ溶けている。
同時代の文脈
この時期のポップ・ダンス作品は、クラブ文化とテレビ・ラジオの両方を見ながら作られることが多かった。Dinoの『24/7』も、その流れの中にある。強いビート、整ったコーラス、耳に残るサビという構成は、同時代のダンス・ポップやフリースタイル、さらにR&B寄りのクロスオーバー作品と並べて考えやすい。派手な実験に寄るより、機能性の高いポップソングを積み重ねるタイプで、そこにこの作品のわかりやすさがある。
まとめ
『24/7』は、Dinoの経歴と80年代末のUSダンス・ポップの要素が、かなり実用的な形でまとまったデビューアルバムである。大ヒット曲「I Like It」を軸にしながら、ラジオ向けの明快さとクラブ向けの推進力を両立させた内容で、録音・演奏・プログラミングの配置にも当時の制作現場の感触が残る。ポップ・シンガーとしてのDinoを知るうえで、まず押さえておきたい一枚である。
トラックリスト
- A1 The Opening / No More Heartbreak 6:05
- A2 I Like It 5:16
- A3 Never 2 Much Of U 5:27
- A4 Summergirls (Remix) 6:12
- B1 Boyfriend-Girlfriend 4:21
- B2 Real Love 4:24
- B3 24/7 4:16
- B4 Sunshine 3:46
- B5 In The City 5:56