Scritti Politti - Cupid & Psyche 85 (1985)
Scritti Politti『Cupid & Psyche 85』について
Scritti Polittiの『Cupid & Psyche 85』は、1985年に登場したアルバムで、グリーン・ガートサイドを中心とするこのバンドが、初期のポストパンク的な出自から、非常に整えられたシンセ・ポップ/エレクトロニック・ポップへと大きく舵を切った作品として知られている。もともと1977年にリーズで結成されたScritti Polittiは、DIY精神の強い文脈から始まったバンドだが、このアルバムでは音の作り方そのものが大きく変わっている。歌詞には言語や記号、政治性に関わる視点が残りつつ、サウンドは80年代中期のスタジオ制作の到達点のひとつのような仕上がりになっている。
本作は、当時のポップ・チャートにしっかり届いた作品でもある。特に「The Word Girl」は全英シングル・チャートで6位を記録し、Scritti Polittiにとって最も大きな英国ヒットになった。知的な文脈を持つバンドが、ここまで明確に商業ポップの領域へ入っていった例としても、かなり印象的な一枚だ。
制作と音像の特徴
このアルバムは、ニューヨーク録音とアリフ・マーディンの関与が重要な要素になっている。さらにデヴィッド・ギャムソン、フレッド・マハーらの参加も大きく、演奏とアレンジの精度が高い。全体を通して、リズム・セクションは輪郭がはっきりしていて、シンセやギター、ボーカルの配置も細かく計算されている印象が強い。いわゆる“80年代らしい音”ではあるが、単に当時の流行をなぞっただけではなく、ひとつひとつの音の置き方に意図があるアルバムだ。
収録曲では「Absolute」「Wood Beez」「Perfect Way」「The Word Girl」あたりが代表曲として挙げられることが多い。「Perfect Way」は特にバージョン違いが多い楽曲で、後年のCD版に収録された別テイクも含め、作品の中で重要な位置を占めている。12インチやシングル向けの別ミックスが複数存在する点も、この時代のポップ・プロダクションらしいところだ。
収録曲の位置づけ
マスターノートを見ると、「Absolute」「Hypnotize」「Lover To Fall」「Perfect Way」「Wood Beez」にはそれぞれオリジナルLP版やリミックス、ロング・ミックスが存在している。つまりこの時期のScritti Polittiは、アルバムを単体の作品として完結させるだけでなく、シングルや12インチで別の聴かれ方をすることも強く意識していたと考えられる。「Wood Beez」の12インチ版や「Perfect Way」の各種ミックスは、その代表例だろう。
アルバム全体としては、ポップなフックを前に出しながらも、音の密度や構成はかなり作り込まれている。聴き進めると、ただ明るいだけでも、ただ実験的なだけでもない、両方の要素が引き合っていることがわかる。商業的な洗練と、ガートサイドの言葉へのこだわりが同居しているあたりが、この作品の核だ。
同時代との関係
同時代の英国ポップやシンセ・ポップと比べても、『Cupid & Psyche 85』は少し立ち位置が違う。単純にダンサブルな方向へ寄った作品というより、ポップの形式を使いながら、内容に別の層を持ち込んでいる。80年代中盤の洗練されたポップ・プロダクションという意味では、当時のスティーリー・ダン的な緻密さや、プリンス周辺のファンク/ポップの緊張感とも比較されやすいが、Scritti Polittiの場合は、そこに言語感覚の癖がはっきりある。
近年の回顧でも、このアルバムは1980年代の重要作として扱われることが多い。批評的には、完成度の高いポップ・アルバムとして見られる一方で、グリーン・ガートサイド本人にとっては、スターダムやプロモーションの負荷が大きかった時期でもあったようだ。作品の輝きと、その裏にある消耗感が同時に語られることの多いアルバムでもある。
日本盤の仕様
今回の日本盤はVirginからのリリースで、品番は25VB-1028。帯付きで、日本語と英語の4ページ歌詞・クレジットインサートが付属する。さらに初回プレスにはポスターが付く仕様だった。日本盤としては、当時の国内流通向けの丁寧なパッケージングが目を引く。なお、B-1の「Perfect Way」はCD版に入っていた別バージョンで、アナログ盤の中でも少し違った聴こえ方をする。
1985年という年に、Scritti Polittiがそれまでの出自を保ちながら、ここまで整ったポップ・アルバムを作ったことは、バンドの歴史の中でも大きな節目だと言える。『Cupid & Psyche 85』は、80年代ポップの表面のきらびやかさと、その裏にある作り込みの細かさを、かなりはっきり示した一枚になっている。
トラックリスト
- A1 The Word Girl
- A2 Small Talk
- A3 Absolute
- A4 A Little Knowledge
- A5 Don't Work That Hard
- B1 Perfect Way
- B2 Lover To Fall
- B3 Wood Beez
- B4 Hypnotize
動画
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Scritti Politti - Absolute
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Scritti Politti - Wood Beez (Pray Like Aretha Franklin)
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Scritti Politti - Perfect Way
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Scritti Politti - Hypnotize (Official Video)
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Scritti Politti - Absolute
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The Word Girl (2022 Remaster)
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Small Talk (2022 Remaster)
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Absolute (2022 Remaster)
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A Little Knowledge (2022 Remaster)
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Don't Work That Hard (2022 Remaster)
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Perfect Way (2022 Remaster)
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Wood Beez (2022 Remaster)
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Lover To Fall (2022 Remaster)
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Hypnotize (2022 Remaster)
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Flesh and Blood (2022 Remaster)