Donna Summer - A Love Trilogy (1976)
Donna Summer『A Love Trilogy』(1976)
Donna Summerの『A Love Trilogy』は、1976年にUSのOasisから出た3作目のスタジオ・アルバムである。前年の『Love to Love You Baby』で一気に存在感を広げたあと、その流れを受けて作られた作品で、ディスコ期のDonna Summerを理解するうえで外せない一枚。プロデュースはGiorgio MoroderとPete Bellotte、録音はミュンヘンのMusicland Studios。ジャケット裏に「The “Munich Machine”」とある通り、当時のヨーロッパ制作陣の色がはっきり出ている。
アルバムの構成と聴きどころ
この作品でまず目を引くのはA面の構成だ。A面は「Try Me」「I Know」「We Can Make It」の3曲が切れ目なくつながる約18分のメドレーになっていて、1曲ごとに区切って聴くというより、長い流れの中で展開する作りになっている。『Love to Love You Baby』で強く打ち出された“片面まるごと大曲”の発想を、そのまま別の形で継続した内容である。
実際に聴くと、ビートの推進力を保ちながら、曲の輪郭を少しずつ変えていく作りがよくわかる。ベースとキックが前に出て、上物はきらびやかだが、派手さだけで押し切るタイプではない。Donna Summerの歌は、息づかいを含めてフレーズのつなぎ方が細かく、メドレー形式でも流れを切らない。ここが単なるダンス用の連続再生盤で終わらないところだ。
B面の「Could It Be Magic」
B面の中心はBarry Manilowの「Could It Be Magic」。元曲はショパンの《前奏曲 ハ短調》を下敷きにしたことで知られるが、このアルバムではそれをディスコのフォーマットに置き換えている。ピアノの輪郭が残るぶん、曲の芯がわかりやすく、Donna Summerの歌がその上で自然に伸びる。全米ダンス・チャートで3位、R&Bチャートで21位を記録したヒットで、アルバム内でも存在感が強い。
この曲が入ることで、アルバム全体が“長尺のダンス・トラック集”だけでなく、楽曲の認知度でも支えられていることが見えてくる。ディスコの時代にあって、カバー曲を素材にしながら独自の推進力へ作り替える手つきは、当時のミュンヘン・サウンドらしい仕事でもある。
制作背景と時代性
『A Love Trilogy』は、Donna Summerがディスコ歌手として固まっていく途中の作品でもある。前作の成功から間を置かずに出たこともあり、レーベル側の期待がそのまま作品の方向性に反映されている。とはいえ、単なる売れ線の反復ではなく、MoroderとBellotteの制作によって、機械的な4つ打ちと人間的な歌の揺れがきれいに噛み合っている。
同時代のディスコ作品と比べると、ファンクの骨格を持ちながらも、アレンジはかなりヨーロッパ寄りで、空間の使い方が明快だ。ニューヨークのクラブ・サウンドとも、ソウルの歌ものとも少し違う。Donna Summerの声がその中間をまとめている印象がある。のちのハウスやユーロ・ディスコに通じる感触も、この時期の作品群の中にすでに見える。
オリジナル盤の情報
このUS盤はOasisの初期ラベル仕様のひとつで、runoutにはKMCの刻印があり、Keel Mfg. Corp.プレスであることが示されている。録音地はMusicland Studios, Munich。制作地とプレス地が分かれている点も、この時代の国際的なディスコ制作の空気をそのまま映している。OasisはGiorgio Moroderが関わったレーベルで、Casablanca系のUS展開の一部として機能していた。
位置づけ
Donna Summerにとって『A Love Trilogy』は、スター性だけでなく、長尺構成とダンス・トラックの設計を定着させた時期の記録である。後の『I Remember Yesterday』や『Once Upon a Time』のようなコンセプト性の強い作品へ向かう前段として見ると、かなり重要な位置にある。ディスコ黄金期の流れの中で、歌手Donna SummerとプロデューサーMoroder/Bellotteの組み合わせが、どのようにフォーマットを固めていったかがよくわかる一枚だ。
トラックリスト
- A Try Me, I Know We Can Make It 17:55
- B1 Prelude To Love 1:07
- B2 Could It Be Magic 4:13
- B3 Wasted 5:10
- B4 Come With Me 4:20