Poussez! - Poussez! (1979)
Poussez!『Poussez!』(1979)
1979年にUSのVanguardから出た、Poussez!名義のセルフタイトル作。ディスコ期のダンス・ミュージックを土台にしながら、ファンク由来のリズム感と、ジャズ・フュージョン畑の演奏家らしい手つきが同居した1枚である。中心にいるのはドラマー/プロデューサーのアルフォンス・ムザーン。Weather ReportやEleventh Houseで知られる彼が、自身の作曲・編曲・演奏をまとめて担い、ヴォーカル・グループを前面に置いて仕上げたプロジェクトになっている。
アルフォンス・ムザーン主導のディスコ・プロジェクト
ムザーンは1948年サウスカロライナ州チャールストン生まれ。10代でプロとして活動を始め、1960年代後半にニューヨークへ出てからは、ブロードウェイ作品への参加やWeather Reportの結成メンバーとしての仕事で存在感を強めた人物だ。その後もフュージョン界隈で演奏機会を重ねていくが、この『Poussez!』ではそうした経歴をそのままディスコのフォーマットに持ち込んでいる。単なる歌もののバック演奏ではなく、リズム隊、鍵盤、シンセ、コーラスの配置まで、かなり具体的に組み立てられた作品である。
ヴォーカル面では、クリスティーン・ウィルトシャーが核になっている。彼女はパトリック・アダムス制作のPhreek「Weekend」でもリードを取っていた人で、この時期のニューヨーク・ディスコの文脈とつながる存在だ。そこにコニー・ハーヴェイ、ジャネット・ライト、ホリー・オースが加わり、コーラスの厚みを作っている。こうした編成は、当時のクラブ向けソウル/ディスコ作品に見られる作りだが、本作ではムザーンの演奏力が前に出るぶん、音の輪郭がやや硬質にまとまっている。
収録曲とグルーヴの作り方
レコードの注記には、Side Oneが124 BPM、Side Twoが132 BPMとある。実際に聴くと、このテンポ設定がそのまま曲の推進力になっていて、ビートの置き方がかなり明確だ。ベースのうねり、キックの押し出し、ハイハットの刻みが前に出る場面が多く、ダンスフロアで機能することをかなり意識した作りになっている。演奏は滑らかに流すよりも、リズムを立てて見せる方向。ムザーンが打楽器奏者であることが、曲全体の設計にそのまま出ている。
代表曲として語られるのは「Come On And Do It」。後年、DJやプロデューサーのあいだでサンプリング素材として扱われ続けたことで、この曲の存在が広く知られるようになった。イントロやリフの切れ味、コーラスの入り方、反復のさせ方に、いかにも引用したくなる要素がある。ディスコの1曲として聴いても、短いフレーズを強く刻む構成がはっきりしていて、トラック単位での使いやすさが目立つ。
1979年という位置づけ
1979年のディスコは、すでに量産型の作品も多い時期だが、その一方で、演奏家主導のタイトルにはまだ独自性が残っていた。本作もその流れの中にある。パトリック・アダムス周辺の洗練されたニューヨーク・ディスコ、あるいはファンク寄りのダンス・ソウルと比べると、Poussez!はよりバンド感のある鳴り方をしている。ムザーンのフュージョン経験が、単純な四つ打ちの快楽だけに寄らず、細かなフィルや音色の切り替えを持ち込んでいる点が特徴になっている。
レーベルはVanguard、型番はVSD 79412。Vanguardは本来、クラシックやフォークの印象が強い老舗だが、こうしたディスコ作品もカタログに含んでいる。録音はニューヨークのVanguard 23rd Street Studioで行われ、アメリカ録音の1979年盤としてまとまっている。オリジナルの時点でこの内容が提示されているため、後年の再発盤というより、当時の空気をそのまま閉じ込めたタイプのレコードとして捉えやすい。
まとめ
Poussez!の『Poussez!』は、ジャズ・フュージョンの経歴を持つアルフォンス・ムザーンが、ディスコの現場感覚に寄せて作った作品である。歌、演奏、リズムの役割分担がはっきりしていて、特に「Come On And Do It」はこのグループを代表する曲として扱われてきた。1979年という年代のディスコらしさと、ムザーンの演奏家としての癖が同じ場所に置かれている、そんな1枚である。
トラックリスト
- A1 Come On And Do It 7:38
- A2 Boogie With Me 7:54
- B1 You're All I Have 8:40
- B2 Never Gonna Say Goodbye 7:53