Eagles - One Of These Nights (1975)
Eagles『One Of These Nights』:カントリー・ロックの殻を破り、巨大スタジアム・ロックの頂点へ登り詰めた転換点
1975年6月にリリースされたEagles(イーグルス)の通算4作目となるスタジオ・アルバム『One Of These Nights』(邦題:呪われた夜)は、バンドを世界的なスーパースターの座へと押し上げた記念碑的な作品である。Billboard 200チャートにおいてグループ初となる全米1位を獲得し、4週連続で首位を独占した。初期の代名詞であった西海岸カントリー・ロックの牧歌的な枠組みを大きく飛び越え、R&Bやファンク、ディスコの要素を貪欲に吸収した洗練されたアンサンブルは、次作の歴史的傑作『Hotel California』(1976年)へと直結する黄金期のサウンド・フォーマットを完全に確立した。
フィリー・ソウルとロックの融合:マイアミCriteria Studiosとビル・シムジクの手腕
プロデュースは前作『On the Border』終盤から舵を取ったビル・シムジク(Bill Szymczyk)が担当し、名義上は彼のプロダクションであるPandora Productionsとしてクレジットされている。録音はロサンゼルスのThe Record Plantに加え、当時活況を呈していたフロリダ州マイアミのCriteria Studiosで行われた。マイアミの刺激的な空気とシムジクの明快なディレクションは、バンドのサウンドに鋭いエッジと分厚いボトムをもたらした。ドン・ヘンリーとグレン・フライは当時全盛を誇っていたフィラデルフィア・ソウル(フィリー・ソウル)のグルーヴに強い関心を寄せており、黒人音楽のしなやかなリズムと西海岸ロックのソリッドな質感を高次元で融合させることに成功している。
ドン・フェルダーの本格台頭とバーニー・レドンの惜別
本作は、バンドのラインナップにおける大きな分岐点としても語り継がれている。前作の終盤に加わったギタリストのドン・フェルダー(Don Felder)が初めて全編に正式メンバーとして参加し、ブルースを基調とした切れ味鋭いギター・リフと鮮烈なソロを随所で披露してバンドのロック色を決定づけた。彼が唯一リード・ボーカルを担当したハードなロック・ナンバー「Visions」も収録され、その存在感を強烈に刻み込んでいる。
その一方で、創設メンバーとしてバンジョーやペダル・スティール、マンドリンを自在に操り、初期イーグルスのカントリー・アイデンティティを支えてきたバーニー・レドン(Bernie Leadon)にとっては、本作が在籍最後のスタジオ・アルバムとなった。ドン・ヘンリーとグレン・フライが推進するメインストリーム志向のハードなロック路線と、ルーツ・ミュージックへの愛着を守ろうとするレドンとの間には埋めがたい音楽的亀裂が生じ、本作リリースに伴うツアー終了後にレドンはバンドを去ることとなった。後任にはジョー・ウォルシュが迎えられ、バンドはより過激なロック・サーカスへと突入していくが、オリジナル・メンバー4人にフェルダーが加わった5人編成の奇跡的な均衡を味わえるのは本作をおいて他にない。
収録曲の聴きどころ:全米を制したヒット曲から異色プログレまで
全9曲で構成されたアルバムは、どの楽曲も高い完成度と多彩な音楽性を誇る。
アルバムの冒頭を飾るタイトル曲「One Of These Nights(呪われた夜)」は、ビルボードHot 100で全米1位を記録した。ランディ・マイズナーによるファンキーでうねるようなベースラインに導かれ、ドン・ヘンリーが緊張感あふれるハスキーなファルセット・ボーカルを響かせる。中盤から後半にかけて炸裂するドン・フェルダーの鋭利なギター・ソロは、ディスコ・ビートとハード・ロックが完璧に調和したロック史に残る名演である。
グレン・フライがリード・ボーカルを取る「Lyin' Eyes(偽りの瞳)」は全米2位を記録し、第18回グラミー賞で最優秀ポップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)賞を受賞した。哀愁を帯びたメロディと美しいハーモニー・コーラスは、カントリー・ポップの至高の到達点を示している。また、ベーシストのランディ・マイズナーが全身全霊のハイトーン・ボーカルで歌い上げる珠玉のソウルフル・バラード「Take It To The Limit(テイク・イット・トゥ・ザ・リミット)」も全米4位に輝き、アルバムから3曲連続でトップ5ヒットを送り出した。
さらに注目すべきは、バーニー・レドンが作曲を手掛けた6分超のインストゥルメンタル「Journey Of The Sorcerer(魔術師の旅)」である。レドンの超絶的なバンジョーの独奏に、「The Royal Martian Orchestra」とクレジットされた壮大なオーケストラが絡み合う異色のプログレッシブ・フォーク/カントリー大作だ。ヘンリーとフライは当初インスト曲の収録に消極的だったとされるが、この楽曲は後にBBCのラジオドラマおよびテレビ版『銀河ヒッチハイク・ガイド(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy)』のテーマ曲に採用され、世界中でカルト的な知名度を誇る名曲となった。
アートワークとUSオリジナル盤の魅力
レコード・パッケージの美しさも特筆に値する。カバー・アートを手掛けたのは、テキサス出身のアーティスト、ボイド・エルダー(Boyd Elder、別名エル・チンガデロ)である。ガラスビーズやネイティブ・アメリカン伝統の羽根飾りで装飾された動物の頭蓋骨を、ノーマン・シーフ(Norman Seeff)が撮影した。この呪術的で神秘的なスカル・アートは、テクスチャー加工が施されたトップローダー仕様のエンボス・ジャケットによって立体的に表現され、後のメガヒットベスト盤『Their Greatest Hits (1971–1975)』へと受け継がれるイーグルスの象徴的シンボルとなった。
Asylum Recordsのカタログ番号「7E-1039」を持つUSオリジナルLPは、カスタム・インナー・スリーブが付属し、センターラベルには「Mfg. by Elektra/Asylum/Nonesuch Records」の表記が並ぶ。ランアウト部に刻まれた「ABS」などのカッティング刻印や、各プレッシング工場を示すコード(Specialty Records Corporationの「SP」など)が刻まれた初期盤のサウンドは、クライテリア・スタジオならではの温かみのある低域と、アコースティック楽器の繊細な響き、そしてフェルダーのエレキギターの鋭いアタック感を極めてダイナミックに再生してくれる。過渡期ならではの緊張感とエネルギーが濃密に封じ込められた、アメリカン・ロックの金字塔である。
トラックリスト
- A1 One Of These Nights 4:51
- A2 Too Many Hands 4:42
- A3 Hollywood Waltz 4:04
- A4 Journey Of The Sorcerer 6:39
- B1 Lyin' Eyes 6:21
- B2 Take It To The Limit 4:48
- B3 Visions 4:00
- B4 After The Thrill Is Gone 3:58
- B5 I Wish You Peace 3:45
動画プレイリスト
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One of These Nights (2026 Remaster)
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Too Many Hands (2026 Remaster)
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Hollywood Waltz (2026 Remaster)
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Journey of the Sorcerer (2026 Remaster)
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Lyin' Eyes (2026 Remaster)
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Take It to the Limit (2026 Remaster)
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Visions (2026 Remaster)
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After the Thrill Is Gone (2026 Remaster)
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I Wish You Peace (2026 Remaster)
このアーティストについて
Eaglesは、1971年にアメリカで結成されたロック・バンドだ。Glenn Frey、Bernie Leadon、Randy Meisner、Don Henleyの4人が出発点で、ジャンルはRock...
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