East Of Eden - Snafu (1970)
East Of Eden『Snafu』
East Of Edenの『Snafu』は、1970年に発表された2作目のアルバムで、英国プログレッシブ・ロックの流れの中でも、かなり独特な位置にある作品だ。前作『Mercator Projected』で示していた東洋趣味やジャズ寄りの感触を引き継ぎつつ、本作ではさらに構成のまとまりよりも、演奏の流れや音色の変化を前に出した印象が強い。サックス、バイオリン、フルートを含む編成がそのまま個性になっていて、一般的なギター主体のプログレとは少し違う手触りを持っている。
バンドはDave Arbus、Ron Caines、Geoff Nicholsonを中心に、当時のメンバーで制作されている。East Of Edenは1960年代後半からメンバー変動が多く、Londonに拠点を移してDeramと契約したあと、より実験的な方向へ進んだ。本作『Snafu』は、そうした流れの中で出た作品で、バンドの演奏力が前面に出る時期の記録としても見やすい。
作品の位置づけ
『Snafu』は、East Of Edenのディスコグラフィーの中では『Mercator Projected』に続く中核作だ。後年よく知られる「Jig-a-Jig」のヒットはこの後の時期で、本作はまだシングル成功の前段階にある。アルバム単位で見ると、派手な押し出しよりも、曲ごとの展開や楽器の絡み方で聴かせるタイプで、当時の英国プログレの中でも、King CrimsonやSoft Machine周辺に通じる硬さと、フォーク寄りの素朴さが同居している。
ただ、前作にあったエキゾチックな色合いは少し後退し、まとまりのあるテーマ作というより、複数の要素がぶつかり合う構成になっている。そこがこの作品の特徴でもあり、評価が分かれやすい理由でもある。演奏はよく動くが、曲の印象は一曲ごとにかなり違う。
音の印象
実際に聴くと、まず耳に入るのは管楽器とバイオリンの扱いだ。ロックの基本編成に収まりきらない音が前に出ていて、リフで押す場面でも、メロディの輪郭が少しずれる。そのため、音の進み方に一定の緊張がある。リズム隊も堅実で、派手なソロの見せ場だけでなく、全体の推進力で持っていく場面が多い。
一方で、楽曲のつながりはかなりラフで、組曲的な流れを期待すると印象が変わるかもしれない。曲の切り替わりや展開の飛び方に、いかにも1970年初頭の英国バンドらしい手探り感がある。整った完成度より、素材の強さと演奏の瞬発力を残した作品、という受け取り方がしっくりくる。
当時の文脈
1970年前後の英国では、プログレッシブ・ロックが急速に広がり、同時にジャズ、フォーク、サイケデリックの要素を持ち込むバンドも増えていた。East Of Edenもそのひとつで、特にバイオリンを含む編成は同時代の中でも目立つ存在だった。The Moody Bluesのように管弦的な広がりを持つグループとは違い、こちらはもっと演奏者の身体感覚が前に出る。Soft Machineや初期Colosseumを思わせる部分もあるが、完全にどちらかへ寄り切らないところが面白い。
本作は英国アルバム・チャートでTop 30入りしたとされ、当時の実験色の強いロック作品としては十分な反応を得ている。後に広く知られる代表曲「Jig-a-Jig」はまだこの段階にはなく、『Snafu』はバンドが注目を集める前の、演奏重視の時期を示すアルバムとして見ておきたい。
1976年盤について
この日本盤は1976年リリースで、オリジナル発表から数年後の再登場になる。Deramのカタログの中でも、70年代前半から中盤にかけての再発は珍しくなく、本盤もそうした流れの中にある。初出時代の空気をそのまま封じ込めた作品が、少し時間を置いて日本で流通した形だ。オリジナル盤の時代感を知るうえでは、70年という発表年と76年の盤の違いを分けて見るのが大事になる。
East Of Edenの中でも『Snafu』は、完成された代表作というより、バンドの方向性がまだ揺れている時期の記録として残る。だが、その揺れがそのまま音になっているぶん、当時の英国プログレの空気はよく伝わる。楽器の配置、曲の切り替え、演奏の密度、そのどれもがこの時代らしい。
トラックリスト
- A1 Have To Whack It Up 2:20
- A2a Leaping Beauties For Rudy
- A2b Marcus Junior
- A3a Xhorkom
- A3b Ramadhan
- A3c In The Snow For A Blow (Medley) Part I
- A3d Better Git It In Your Soul
- A3e In The Snow For A Blow (Medley) Part III
- A4 Uno Transito Clapori 2:53
- B1a Gum Arabic
- B1b Confucius
- B2 Nymphenburger 5:46
- B3a Habibi Baby
- B3b Boehm Constrictor
- B3c Beast Of Sweden
- B4 Traditional: Arranged By East Of Eden 1:33