Jethro Tull - Aqualung (1971)
Jethro Tull 1971

Jethro Tull - Aqualung (1971)

Rock Prog Rock

Jethro Tull『Aqualung』――1971年UK盤で聴く、バンドの転機

Jethro Tullの『Aqualung』は、1971年にUKでリリースされた4作目のスタジオ・アルバムである。バンドの代表作として扱われることが多く、Ian Andersonのフルートと歌を軸に、ブルース・ロックの出自から一歩進んだ編成と構成がはっきり表れた作品でもある。発売時点でのJethro Tullは、すでに英国ロックの中で確かな存在感を持っていたが、この作品でその評価がより広い層へ届いた、という位置づけで見られることが多い。

本作は一般にコンセプト・アルバムとして語られることが多い。中心にあるのは、宗教と神の違い、そこから派生する個人の不安や社会への視線で、曲ごとに題材は違っていても、アルバム全体としては一つのまとまりを感じさせる。Jethro Tullの作品群の中でも、以後の方向性を決めた重要作として扱われる理由は、このテーマ性と、曲の並びが持つ流れにあるように思える。

UKオリジナル盤の仕様

ここで取り上げるのは1971年UK盤の初出仕様で、ChrysalisのILPS9145。厚みのあるテクスチャード加工の見開きジャケットに収められ、グリーンのレーベル面に赤いChrysalisロゴ、白いIslandの“i”ロゴが入る。内袋には厚手の歌詞シートが付属し、角は四角、表側の上部中央に開口部があり、裏面はフリップバック仕様。いま見ると、こうした作り込みも当時の英国プログレ作品らしい要素のひとつに感じられる。

レーベル表記はスリーブ側がILPS9145、ラベル側がILPS 9145。録音はロンドンのIsland Studiosで行われ、レイアウトはCCS、印刷と製本はE.J. Day Groupによるもの。こうしたクレジットが細かく残っているのも、オリジナル盤を手に取った時の資料性を高めている。実際の盤面はスタンパー刻印で、当時の英国盤らしい雰囲気が強い。

収録曲と聴きどころ

『Aqualung』でまず名前が挙がるのは、表題曲「Aqualung」と「Locomotive Breath」だろう。どちらもバンドの代表曲として知られ、ライヴでも重要な位置を占めてきた。特に「Aqualung」は、冒頭の印象的なギターとフルートの入り方、そこから進む曲の展開が明快で、Jethro Tullらしさを短い時間に集約したような楽曲である。「Locomotive Breath」も、リフの押し出しが強く、アルバム後半の中で存在感を保っている。

一方で、本作の魅力は有名曲だけではない。「Wond’ring Aloud」のような静かな曲は、歌とアコースティック楽器の距離感が近く、アルバム全体の中で息を整える役割を果たしている。「Hymn 43」では宗教への視線がより直接的になり、歌詞の内容と音の運びが結びついている印象がある。全体として、激しい曲と抑えた曲の配置がはっきりしていて、曲順そのものが作品の印象を作っている。

同時代の文脈の中で

1971年という時期の英国ロックには、ハード・ロック、フォーク・ロック、プログレッシブ・ロックが並行して存在していた。Jethro Tullはその中で、King CrimsonやYesのような純然たるプログレ勢とも、Led Zeppelinのようなハード・ロック勢とも少し違う立ち位置にいたと言える。フルートを前面に出し、ブルース由来の骨格を残しながら、フォークや室内楽的な要素まで取り込むこのバンドのやり方は、当時としてもかなり独特だった。

『Aqualung』は、その独自性が最も広く認識された作品のひとつである。発売後に評価が固まり、Jethro Tullの名を大きく押し上げたアルバムとして語られてきた。のちにIan Anderson自身が、この作品を巡る“コンセプト・アルバム”という受け止め方に距離を置いた、というエピソードも知られているが、その反応も含めて本作は次の『Thick as a Brick』へつながっていった。作品の評価が、次の創作へ直接影響した例として見ることもできる。

作品としての重み

『Aqualung』は、Jethro Tullにとって単なるヒット作ではなく、バンドの方向性を決定づけた節目の一枚である。宗教、社会、個人の視点が交差する歌詞、フルートを軸にした演奏、重さと静けさの切り替え、そしてUKオリジナル盤の作り込みまで、1971年という時代の英国ロックが持っていた緊張感がそのまま残っている。初めて聴くと曲ごとの色の違いが目につき、繰り返し聴くほどアルバム全体の流れが見えてくる作品だと感じる。

Jethro Tullの中でも、そして70年代初頭の英国ロックの中でも、長く参照されてきた理由はそこにある。代表曲の強さと、アルバム全体の構成、その両方がきちんと残っている一枚である。

トラックリスト

  1. Aqualung
  2. A1 Aqualung 6:25
  3. A2 Cross-Eyed Mary 4:02
  4. A3 Cheap Day Return 1:18
  5. A4 Mother Goose 3:45
  6. A5 Wond'ring Aloud 1:50
  7. A6 Up To Me 3:10
  8. My God
  9. B1 My God 6:58
  10. B2 Hymn 43 3:10
  11. B3 Slipstream 1:08
  12. B4 Locomotive Breath 4:23
  13. B5 Wind-Up 5:52

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