Renaissance - Azure D'or (1979)
Renaissance『Azure d'Or』──70年代末の転換点に置かれた一枚
Renaissanceは、1969年にロンドンで始動したブリティッシュ・プログレッシブ・ロックの重要バンドである。もともとはKeith RelfとJim McCartyを中心に、ロック、フォーク、クラシックの要素を組み合わせる方向へ進み、その後はAnnie Haslam、Michael Dunford、John Tout、Jon Camp、Terry Sullivanらを軸に、より完成度の高いシンフォニックな作風を築いていった。『Azure d'Or』は1979年に発表されたアルバムで、バンドの円熟期から80年代への入口に置かれる作品といえる。
作品の位置づけ
本作は、前作『A Song for All Seasons』で広がった聴きやすさを引き継ぎつつ、70年代末の空気に合わせて音像を整理した印象のアルバムである。録音はロンドンのMaison Rouge Studiosで1978年11月から1979年2月にかけて行われた。クレジット上ではJon CampとMichael Dunfordが主な作曲を担い、プロデュースはDavid Hentschel。Renaissanceらしい構築感を保ちながらも、曲の輪郭は以前より少し引き締まっている。
この時期のRenaissanceは、初期の長尺中心のプログレ色だけでなく、メロディ重視の方向でも知られていた。1978年のシングル「Northern Lights」が英チャートで上位に入った流れもあり、『Azure d'Or』にはその延長線上の期待がかかっていたはずだが、実際の評価は一枚岩ではなかったようである。英オフィシャル・チャートではアルバムは最高73位、1週のみのチャートインにとどまっている。前作の最高35位と比べると、商業面ではやや後退した位置づけになる。
音楽的な特徴
内容面では、アニー・ハズラムの透明感のある歌声を軸に、キーボードとギターが整然と組み上がる構成が目立つ。大げさな展開で押し切るというより、旋律の流れとアレンジの整理で聴かせるタイプで、70年代後半のシンフォニック・ロックに見られる「大作主義の余韻」と「ラジオ向けの明快さ」のあいだにある作品として受け止められてきた。実際、当時の米国メディアではAOR的な文脈で扱われる一方、保守的なロック評論では、やや辛口に見られたことも確認できる。
収録曲の中では「The Winter Tree」がシングルとして切り出されており、もう一曲のシングルも存在する。アルバム全体の中で特に目立つのは、この時期のRenaissanceが持っていた、クラシカルな旋律運びとロックの推進力の両立である。派手な技巧の見せ場を前面に出すより、曲の流れを丁寧に組み立てる方向に寄っているため、同じ英国プログレでもYesやGenesisの大仰さとは少し違う、上品なまとまりがある。
当時の評価と時代背景
1979年という年は、プログレッシブ・ロックにとって厳しい時代でもあった。パンクやニューウェイヴが台頭し、長尺の組曲やクラシック志向の編成は、以前ほど主流ではなくなっていた。その中でRenaissanceは、完全に時流へ寄せ切るのではなく、持ち味を残したまま音を整理している。『Azure d'Or』は、そのバランス感覚がどう受け取られたかを示す作品でもある。
一方で、批評面では意見が割れやすい。従来の壮麗さを保っていると見る向きがある一方で、作風の変化を中途半端と捉える見方もあった。こうした反応自体が、Renaissanceが70年代プログレの中でも独特の立ち位置にいたことを示している。大作一辺倒でもなく、完全なポップ路線でもない、その中間の設計。
日本盤について
この日本盤はWarner Bros. RecordsのP-10693Wで、1979年リリースのオリジナル期に出た盤である。レーベル表記や日本向けの仕様を除けば、作品そのものは同年のオリジナル・アルバムとして捉えてよい。Renaissanceの1970年代後半を追ううえでは、前作とのつながりと、80年代に入る前の空気を確認できる一枚である。
まとめ
『Azure d'Or』は、Renaissanceの代表的な美点である整ったハーモニー、伸びのある歌唱、クラシカルな構成感を保ちながら、70年代末の環境に合わせて輪郭をややすっきりさせたアルバムである。初期の壮大さと後期の洗練、そのあいだにある作品として見ると位置づけがつかみやすい。バンドの歴史の中では、勢いのピークというより、変化を受け止めながら次の時代へ移るための節目の一枚、そんな印象が残る。
トラックリスト
- A1 Jekyll And Hyde 4:38
- A2 The Winter Tree 3:02
- A3 Only Angels Have Wings 3:43
- A4 Golden Key 5:13
- A5 Forever Changing 4:48
- B1 Secret Mission 5:00
- B2 Kalynda (A Magical Isle) 3:43
- B3 The Discovery 4:23
- B4 Friends 3:30
- B5 The Flood At Lyons 4:57