Gene Loves Jezebel - Discover / Glad To Be Alive (1986)
Gene Loves Jezebel / Discover
Gene Loves Jezebelの『Discover』は、1986年にUKのBeggars Banquetから出たアルバムで、バンドの音像がゴシック寄りの初期感覚から、より広いロックのフィールドへ向かっていく時期を切り取った作品だ。Porthcawl, Walesで1980年に結成されたこのバンドは、当時の英国インディー・シーンやゴシック・ロック周辺で存在感を強めていたが、この作品ではそうした土台を残しつつ、曲の輪郭を前に出した作りになっている。
UK盤は1986年のリリースで、レーベルはBeggars Banquet、カタログ番号はBEGA 73。Beggars Banquetは当時の英国インディーを語るうえで重要なレーベルのひとつで、パンク、ゴス、シンセポップ、インディーまで幅広い作品を出していた。Gene Loves Jezebelにとっても、このレーベルから出た『Discover』は、初期の活動をひと区切りさせる意味合いを持つ一枚になっている。
作品の位置づけ
このアルバムは、バンドのキャリアの中でも転機として扱われることが多い。英Official ChartsではUKアルバム・チャート最高32位、1986年7月19日初登場、チャート滞在4週。数字だけ見ても、インディー寄りのバンドがより大きな市場へ届いた時期の記録として分かりやすい。米国ではGeffenから別展開され、カレッジ/オルタナティヴ系で反応を得たとされている。
Gene Loves Jezebelは、のちにAston兄弟を中心とする別活動でも知られるが、『Discover』が出た1986年時点では、バンドとしての勢いがそのまま作品に反映されている。ゴシック・ロックの文脈で語られやすいグループだが、この盤では装飾よりも曲の推進力が前に出る。James Stevensonのギターが要所で存在感を持ち、リズムも比較的はっきりした形で進むため、同時代のUKゴス勢の中でも輪郭が明快な部類に入る。
収録曲と録音の話
このUK盤には、ライヴ・アルバム『Glad To Be Alive』が付属する限定仕様。ロック・シティ(Nottingham)で1986年3月にManor Mobileを使って録音されたもので、スタジオ盤とは別の熱量をそのまま閉じ込めた特典になっている。こうした付属ライヴは当時の初回盤らしい仕様で、作品の空気を補完する役割を持っていた。
録音面では、制作中にプロデューサーのGary Lyonsが心臓発作で離脱し、エンジニアのMike Dearnleyが完成を引き継いだというエピソードが伝えられている。結果として、厚みのある音の中にギターの押し出しが見えやすい仕上がりになっている。AllMusicでは、中心曲として「Desire」が挙げられており、この曲がアルバムの方向性を示す核として扱われている。米盤の初期プレスと後発盤でミックスの違いがあったことも知られている。
聴きどころ
実際に耳を通すと、まず感じるのは、ゴシック・ロックの暗さだけで押し切らない構成だ。低音の重さを保ちながら、ギターのフレーズが前に出て、歌も比較的はっきり届く。初期のUKゴスにあった湿度の高い質感は残るが、曲の進行はもっと直線的で、ポップ・ロックの手触りもある。そこが『Discover』の特徴になっている。
「Desire」のような代表曲では、その傾向が分かりやすい。リフの反復で引っ張るというより、展開の流れで聴かせる作りで、バンドが当時どこへ向かおうとしていたかが見えやすい。派手な技巧を前面に出すタイプではないが、音の配置が整理されていて、1986年の英国ロックのなかで独自の立ち位置を取っている。
同時代との関係
この時期の英国では、The MissionやSisters of Mercy、Bauhaus周辺の流れを引くバンドが注目されていた。Gene Loves Jezebelもその周辺に置かれながら、完全にゴシックの様式へ寄り切るのではなく、より開けたロックの形へ近づいていく。その意味で『Discover』は、ゴスからポップ・ロックへ接続する時期の記録として見やすい。後のオルタナティヴ・ロックやインディー・ロックの耳で聴いても、曲の押し引きの作り方に通じる部分がある。
当時の批評は賛否が割れつつも、バンドが以前より商業的な輪郭を持ったこと、新しい曲調を取り入れたことを捉えていた。『Discover』は、初期のGene Loves Jezebelを知るうえでの重要盤であり、同時に、1980年代半ばのUKインディー/ゴシック周辺がどこまで広がっていったかを示す一枚でもある。
まとめ
『Discover』は、Gene Loves Jezebelの持つゴシック由来の質感と、より広いロックの文法が交差するアルバムだ。UK盤にはライヴLP『Glad To Be Alive』が付く限定仕様で、1986年という年のバンドの勢いもそのまま伝わる。初期の代表作として扱われるのも自然な一枚で、当時の英国インディーからメインストリーム寄りの流れへ移る途中の空気が、きちんと残されている。
トラックリスト
- Discover
- A1 Heartache
- A2 Over The Rooftops
- A3 Kick
- A4 A White Horse
- A5 Wait And See
- B1 Desire
- B2 Beyond Doubt
- B3 Sweetest Thing
- B4 Maid Of Sker
- B5 Brand New Moon
- Glad To Be Alive
- C1 Up Stairs
- C2 Over The Rooftops
- C3 The Rhino Plasty
- C4 Worth Waiting For
- D1 Immigrant
- D2 Cow
- D3 Brittle Punches
- D4 Pop Tarantula