Hazel O'Connor - Cover Plus (1981)
Hazel O'Connor『Cover Plus』(1981年)
Hazel O'Connorの『Cover Plus』は、1981年にUKのAlbion Recordsから出たアルバムで、ニュー・ウェイヴとポップ・ロックの空気をまとった一枚だ。前年の『Breaking Glass』で広く名前を知られるようになった時期に続く作品で、本人のオリジナル曲とカバー曲を混ぜながら、当時の感覚で音を組み立てている。タイトルどおり、カバーを足しただけの企画物ではなく、Hazel O'Connorというシンガー/ソングライターの輪郭を保ったまま、選曲の幅を見せる内容になっている。
録音とリリースの背景
この盤はUK盤で、Albion RecordsのALB 108としてリリースされた。スリーヴにはALB108、レーベル面にはALB 108と表記されている。バック・スリーヴには、1981年5月から6月にかけてロンドンのGood Earth Studiosで録音・ミックスされたことが記されている。盤面には℗ & © 1981 Albion Records Ltd.のクレジット。付属物としては、ピクチャー/歌詞インサートが付き、初期プレスにはポスターとステッカー2枚も含まれていた。
レーベルのAlbion Recordsは、UKのインディー・シーンに属する会社で、パンクやパブロック系の流れとも近い位置にあった。そうした背景を踏まえると、『Cover Plus』は単独のポップ作品というより、80年代初頭の英国インディーとニュー・ウェイヴの接点に置かれたアルバムとして見えてくる。
収録内容と曲の配置
収録曲はオリジナルとカバーが混在している。インサートの著作権表記を見ると、複数曲がAlbion Music Ltd.名義で、ほかにApril Music Ltd.、The Emp. Co.、Dunbar Music Inc.などのクレジットも並ぶ。つまり、単に自作曲を並べるのではなく、既存曲を自分の作品群の中に組み込む構成だ。
シングルとしても知られる先行曲「(Cover Plus) We’re All Grown Up」は、このアルバムの性格を端的に示す1曲だ。タイトルに“Cover Plus”を冠しつつ、Hazel O'Connor本人の書き方が前に出ている。もう1つ、カバー曲の「Hanging Around」も知られている。こうした選曲があるため、アルバム全体は自作中心の作品集とは少し違う手触りになる。
サウンドの印象
実際に聴くと、音作りは当時の英国ポップ/ニュー・ウェイヴの文法に沿っていて、リズムの立ち上がりがはっきりしている。前に出る声、輪郭のあるギター、少し乾いた質感のバンド・サウンドが中心で、派手に音を重ねるタイプではない。曲ごとに表情は変わるが、全体としては歌を軸に進むアルバムで、演奏が歌詞やフレーズの運びを邪魔しない。
Hazel O'Connorの声は、硬さと芯の強さが同居している。語尾を引っ張りすぎず、言葉を置くように歌う場面が多いので、曲の輪郭が見えやすい。カバー曲でもその癖は崩れず、原曲の持っている要素をそのままなぞるより、歌い手の側に引き寄せる作りになっている。
位置づけと当時の流れ
1981年という時期は、英国のニュー・ウェイヴが広がりながら、ポップの作法とも強く結びついていた時期だ。Hazel O'Connorもその流れの中にいて、『Cover Plus』は、前作までで得た注目を受けつつ、自分の曲と他者の曲を並べて見せた作品として置ける。大きなヒットの勢いをそのまま引っぱるというより、表現の幅を確認するような作りだ。
チャート面では、アルバムはUKアルバムチャートで40位台に入り、シングル「(Cover Plus) We’re All Grown Up」はUKシングルチャートで41位、「Hanging Around」は45位を記録している。『Breaking Glass』ほどの大きな話題にはならなかったが、完全に埋もれたわけでもなく、当時の英国ポップの中で一定の存在感を保っていたことが分かる。
ジャケットや後年の見方
後年の回顧では、エドワード・ベルによるカヴァーアートもよく触れられる。作品の顔として印象に残る部分で、音だけでなく視覚面でも時代性がはっきりしている。再評価の文脈では、単なる便乗作ではなく、オリジナル曲とカバー曲を通してHazel O'Connorの作家性を保とうとしたアルバムとして扱われている。
『Cover Plus』は、ニュー・ウェイヴ期の英国女性シンガー/ソングライター作品の中でも、歌の強さと選曲の幅を同時に見せる一枚だ。派手な演出より、曲そのものの組み立てと声の存在感で聴かせる内容で、1981年という年の空気がそのまま閉じ込められている。
トラックリスト
- A1 (Cover Plus) We're All Grown Up
- A2 Hanging Around
- A3 Ee-I-Addio
- A4 Not For You
- A5 Hold On
- A6 So You're Born
- B1 Dawn Chorus
- B2 Animal Farm (We Will Be Happy?)
- B3 Runaway
- B4 Do What You Gotta Do
- B5 Men Of Good Fortune
- B6 That's Life