Al Stewart - Year Of The Cat (1976)
Al Stewart 1976

Al Stewart - Year Of The Cat (1976)

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Al Stewart『Year Of The Cat』(1976) ― 洗練された語り口で広く届いた代表作

Al Stewartの『Year Of The Cat』は、1976年にUKのRCAからリリースされた7作目のスタジオ・アルバムである。スコットランド出身のシンガーソングライターとして活動してきた彼が、より広い層に名前を広げた作品でもあり、初のプラチナ・アルバムになったタイトルとして知られている。アコースティック寄りのシンガーソングライター作品から出発しながら、この時期には演奏、編曲、録音の精度が高くまとまり、AORやソフトなロックの文脈でも語られる内容になっている。

プロデュースはアラン・パーソンズ。アビイ・ロード・スタジオでビートルズのアシスタント・エンジニアとしてキャリアを始めた人物で、音の見通しのよさ、定位の整理、細部まで詰めた構成に強みを持つ。このアルバムでもその持ち味がはっきり出ていて、歌と演奏がぶつからず、各パートがそれぞれの場所で機能している。ドラムのスチュアート・エリオット、ベースのジョージ・フォード、コーラスのトニー・リヴァース、オーケストラ編曲のアンドリュー・パウエルら、実力派の布陣も印象的だ。

表題曲「Year Of The Cat」

本作を語るうえで外せないのが表題曲「Year Of The Cat」。Al StewartとピアニストのPeter Woodの共作で、アルバムの顔として機能している。楽曲の原型は、1966年にコメディアンのトニー・ハンコックの舞台を観た際に着想した未発表曲「Foot Of The Stage」にさかのぼり、そこへWoodがサウンドチェック中に弾いていたピアノのイントロが重なって完成したという。歌詞冒頭の一節は、映画『カサブランカ』をテレビで観ていたときに思い浮かんだもので、ハンフリー・ボガートやピーター・ローレへの言及が入る。

曲名の「Year Of The Cat」は、当時の恋人が読んでいたベトナム占星術の本にあったフレーズから取られたもの。こうした由来を知ると、曲全体にある少し物語的で、都市的で、どこか遠景を眺めるような感触も腑に落ちる。実際に聴くと、歌の運びは落ち着いていて、メロディが前に出すぎない。そこにピアノ、ギター、オーケストラ的な広がりが重なり、曲の長さを感じさせにくい構成になっている。

ヒット曲としての役割

「Year Of The Cat」はシングルとしても大きな結果を残した。全米Billboard Hot 100で最高8位、カナダ3位、オランダ6位、ベルギー7位、イタリア5位など、各国でヒットしている。Al Stewartにとって初めてチャートインしたシングルでもあり、アルバムの知名度を一気に押し上げた楽曲だった。Billboard誌が「クールなヴォーカル」と「洗練されつつも気取らないアレンジ」に触れていたのも、この曲の性格をよく表している。

聴感上は、派手なフックで押し切るタイプではなく、旋律、語り口、編曲のバランスで引き込む作りだ。サビだけが強いのではなく、Aメロの進行や中盤の展開まで含めて印象が残る。70年代半ばの英米ロックの中でも、シンガーソングライターの個性とスタジオ作品としての完成度が両立した例として見やすい。

70年代の文脈の中で

『Year Of The Cat』は、同時代の英ロックやソフトロック、あるいは緻密なスタジオ制作を重視した作品群の中で位置づけやすい。アラン・パーソンズが手がけたこともあり、音の輪郭が明確で、過度に荒々しい演奏感よりも、整った響きが前面に出る。Al Stewart自身の作品の中でも、叙情的な歌詞や歴史・文学的な参照を保ちながら、より広いリスナーへ届いた節目の一枚として扱われてきた。

このアルバムを聴くと、曲の組み立てに無理がなく、言葉の流れも音の流れもきれいに接続している。タイトル曲だけでなく、アルバム全体にもその統一感がある。1976年という年の空気を背負いながら、いま聴いても録音の整理された感じが残る作品で、Al Stewartの代表作として定着している背景も理解しやすい。

UK盤について

今回のUK盤はRCAからのリリースで、スリーヴにはRCA表記、ラベルにはRCA Victor表記が見られる仕様である。オリジナルの1976年盤としての存在感があり、アルバムが世に出た当時のかたちをそのまま伝える一枚だ。『Year Of The Cat』というタイトルが、楽曲単体のヒットだけでなく、アルバム全体の印象まで引っ張っている点も、この作品の特徴として見逃しにくい。

トラックリスト

  1. A1 Lord Grenville 5:00
  2. A2 On The Border 3:22
  3. A3 Midas Shadow 3:08
  4. A4 Sand In Your Shoes 3:02
  5. A5 If It Doesn't Come Naturally, Leave It 4:28
  6. B1 Flying Sorcery 4:20
  7. B2 Broadway Hotel 3:55
  8. B3 One Stage Before 4:39
  9. B4 Year Of The Cat 6:40

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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