Karen Beth - The Joys Of Life (1969)
Karen Beth『The Joys Of Life』(1969)
Karen Bethの『The Joys Of Life』は、1969年にUSのDeccaから登場したデビュー作で、フォークロックとアコースティック主体の感触を軸にした一枚だ。アーティスト本人のオリジナル曲を中心に組まれた作品で、当時のシンガーソングライター作品群の中でも、かなり個性の立つ位置にある。後年の再評価では、Billboard Top 200入りを果たした珍しい女性フォーク系アルバムとして知られ、商業的な大ヒット盤というより、静かに残った作品として扱われている。
作品の輪郭
このアルバムの印象を一言でまとめるなら、弾き語りの素朴さだけで押し切る盤ではなく、室内楽的な編曲感とフォークの親密さが同居した作品だ。オルガンやトレモロの響きが曲の輪郭を少しずつ変え、軽い苦味、孤独、死、希望といった感情が、過度にドラマチックにならないまま置かれていく。タイトル曲「The Joys Of Life」、そして「Something To Believe In」「White Dakota Hill」は特に印象が残る曲として語られている。
歌声は、強く押し出すタイプではなく、控えめな音量の中で言葉の輪郭を保つタイプだ。Record Worldは「控えめでビター・スウィートなソプラノ」と紹介しており、声の質感そのものがこの作品の中心にあることがわかる。ギターの運びも前に出すぎず、楽曲の構成と歌の間を丁寧につないでいる。
同時代の文脈
1969年という時期は、フォークからシンガーソングライターへ、さらにフォークロックやサイケデリアへと接続していく流れが強かった。『The Joys Of Life』もその中に置くと、アコースティック主体でありながら、単純なフォーク・リヴァイヴァル盤には収まらない。後年は、フォークロック、初期シンガーソングライター路線、サイケデリアをまたぐ室内楽的フォークとして見られている。Joni MitchellやLaura Nyroのような女性ソングライターの時代とも重なるが、Karen Bethはより静かな室内感を持ち、曲の配置も含めて独自の空気を保っている。
当時の業界紙では、楽曲がすべてオリジナルであること、歌い方の繊細さ、ギター・ワークの個性が評価されていた。Cash Boxは、Deccaの強い後押しとFMラジオでの露出にも触れており、少なくとも発売時点でレーベル側が一定の期待を置いていたことがうかがえる。結果として大きなヒット盤にはならなかったが、チャート入りした事実自体がこの作品の特異性を示している。
制作面と収録曲
制作はMilton Okunがプロデュース/アレンジを担い、エンジニアはElvin Campbell。作曲はKaren Beth本人の曲に加え、Alan Jaroszとの共作も含まれる。制作の細部について大きな逸話は確認できないが、作品全体のまとまりからは、歌詞とメロディの輪郭を崩さないように組まれた設計が見える。曲ごとの強弱はあるものの、アルバムとしての流れは一定で、派手な山場よりも、通して聴いたときの温度差が印象に残る。
オリジナル盤とこの盤について
今回の盤は1969年US Decca盤で、白ラベルのプロモーションコピー。ラベル左側のスピンドルホール脇に「Promotion Copy Not For Sale」と入った仕様だ。一般流通盤とは違い、発売前後のラジオ局向け配布や販促用途が想定される。Deccaのこの時期のUS盤は、レーベルの表記やプロモ仕様に時代性が出やすく、コレクター的にも見どころのある部分だ。内容面は同年のオリジナル盤と同一で、作品そのものの性格をそのまま伝える。
位置づけ
Karen Bethにとって『The Joys Of Life』は、デビュー作であり、この名義の出発点になるアルバムだ。派手な代表曲が前面に出るタイプではないが、後年に「珍しいのにBillboard Top 200に入ったLP」として見直されたことで、存在感がはっきりした。大きな流行に乗った作品というより、当時のフォークロック周辺の空気を、女性ソングライターの視点からきちんと残した記録として受け止められている。
聴きどころは、曲の間を埋める音の少なさと、その少なさの中で保たれる情報量だ。歌詞、発声、ギター、オルガンの配置が近い距離でまとまり、アルバム全体に一貫した手触りを与えている。1969年のUSフォークロックの中でも、かなり静かな場所に置かれる一枚だ。
トラックリスト
- A1 It's All Over Now
- A2 In The Morning
- A3 I Know That You Know
- A4 The Joys Of Life
- A5 Something To Believe In
- A6 April Rain
- B1 White Dakota Hill
- B2 Come December
- B3 Song To A Shepherd
- B4 Nothing Lasts
- B5 Tomorrow's A New Day