Lana Del Rey - Honeymoon (2015)
Lana Del Rey『Honeymoon』
2015年に発表されたラナ・デル・レイ(Lana Del Rey)の4作目(メジャー3作目)のスタジオ・アルバム『Honeymoon』は、彼女の美意識が極限まで研ぎ澄まされたコンセプチュアルな傑作だ。前作『Ultraviolence』(2014年)でザ・ブラック・キーズのダン・オーバックを迎え、ファズ・ギターを押し出したブルース/サイケデリック・ロックへ傾倒した彼女が、本作では長年の共作者リック・ノウェルズ(Rick Nowels)およびエンジニアのキーロン・メンジーズ(Kieron Menzies)との共同プロデュース体制へと回帰。ロサンゼルスを中心に制作された。
制作背景と引用の美学
本作には彼女のパーソナルな愛着と文学的・音楽的オマージュが濃密に刻まれている。先行シングルとなった「High By The Beach」は、ミニマルなトラップ・ビートを取り入れたドリーム・ポップで、パパラッチの執拗な視線や名声への倦怠感をクールに突き放すアティテュードが話題を呼んだ。
さらに、デヴィッド・ボウイ「Space Oddity」の有名な一節(Ground control to Major Tom)を引用し、本人も最も気に入っている曲として公言したジャジーな名バラード「Terrence Loves You」、T・S・エリオットの詩篇『四つの四重奏』の一節を朗読する「Burnt Norton (Interlude)」、そしてアルバムの幕を静かに閉じるニーナ・シモンで名高い名曲カバー「Don't Let Me Be Misunderstood」など、古き良きアメリカのロマンスと退廃を独自の筆致で紡ぎ出している。
時代の文脈とオルタナティヴ・ポップの夜明け
2010年代半ば、ポップ・チャートではEDMやアップテンポなダンス・ポップが圧倒的な主流を占めていた。そうした潮流に背を向けるように、ラナ・デル・レイは極限まで速度を落としたスローテンポとシネマティックなバロック・ポップを貫徹。ハリウッド黄金期のグラマラスな郷愁、カリフォルニアの陽光の裏に横たわるノワールな暗部を暴き出す独自の世界観は、後のビリー・アイリッシュやオリヴィア・ロドリゴらに連なるダークで内省的な「オルタナティヴ・ポップ」の時代を先取りする決定打となった。
サウンドと聴きどころ
ヴィンテージなジャズ・コード進行と、映画音楽のように優美で幽玄なオーケストレーション、そしてスモーキーで気だるいラナ・デル・レイの歌声が全編を包み込んでいる。
耽美的なストリングスがたゆたう「Music To Watch Boys To」や表題曲「Honeymoon」、イタリア映画のワンシーンを思わせるクラシカルなメロディが息づく「Salvatore」、そして重低音トラップ・ビートと浮遊感あふれるシンセが同居する「High By The Beach」まで、アルバム全体がひとつの壮麗なフィルム・ノワールのように響き渡る。
後世への影響
本作は全米Billboard 200および全英アルバムチャートで初登場2位を記録し、世界各国のチャートで首位を獲得。ローリング・ストーン誌やビルボード誌の年間ベスト・アルバムにも選出された。『Born to Die』のストリート感覚と『Ultraviolence』のロック的アプローチを経て確立されたこの静謐なスローコア/シネマティック・ポップの完成度は、2019年の名作『Norman Fucking Rockwell!』へと結実する重要な転換点として今なお高い評価を誇っている。
トラックリスト
- A1 Honeymoon
- A2 Music To Watch Boys To
- A3 Terrence Loves You
- B1 God Knows I Tried
- B2 High By The Beach
- B3 Freak
- C1 Art Deco
- C2 Burnt Norton (Interlude)
- C3 Religion
- C4 Salvatore
- D1 The Blackest Day
- D2 24
- D3 Swan Song
- D4 Don't Let Me Be Misunderstood
動画プレイリスト
このアーティストについて
Lana Del Rey(ラナ・デル・レイ)は、1985年6月21日生まれのアメリカ出身のシンガーソングライター、プロデューサー、アーティスト、詩人だ。ニュー...
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