Bee Gees - Bee Gees' 1st (1967)
Bee Gees『Bee Gees' 1st』
1967年に発表されたBee Geesの『Bee Gees' 1st』は、少年期をオーストラリアで過ごし同地で活動していたギブ三兄弟(バリー、ロビン、モーリス)が、ポップ・ミュージックの震源地ロンドンへ帰還し、世界市場に向けて放った記念碑的インターナショナル・デビュー・アルバム(通算3作目)である。ザ・ビートルズのマネージャーであるブライアン・エプスタインのビジネス・パートナー、ロバート・スティグウッドに見出され、英ポリドールおよび米ATCO(アトランティック傘下)からリリースされた。繊細な3部ハーモニー、バロック調のオーケストラ、そしてサイケデリックな陰影が美しく調和した、60年代英国ポップスの至宝である。
制作背景・エピソード
録音はロンドンの名門IBCスタジオで行われ、オジー・バーンとロバート・スティグウッドが共同プロデュースを担当した。兄弟3人に加え、オーストラリア時代からの盟友ヴィンス・メロニー(ギター)とコリン・ピーターセン(ドラム)が正式加入し、5人編成の本格的ロック・バンドとして制作に臨んだ。さらにアレンジャーのビル・シェパード(Bill Shepherd)による壮麗なオーケストレーションが加わり、彼らのメロディ・センスをドラマティックに引き立てている。
ビートルズの歴史的名盤『Revolver』のジャケットでグラミー賞を受賞したクラウス・フォアマン(Klaus Voormann)が描き下ろしたサイケデリックなカバー・アートも鮮烈な印象を与えた。先行シングル「New York Mining Disaster 1941」のプロモ盤が米国のラジオDJに配布された際、あえてアーティスト名を伏せた白ラベルで送られたため、「ビートルズの新曲ではないか」という噂が全米を駆け巡ったという逸話は、彼らのコーラスワークの並外れたクオリティを物語っている。
サウンドと聴きどころ
本作の最大の聴きどころは、ロビン・ギブの哀愁に満ちたヴィブラートと、バリー・ギブの熱っぽいブルー・アイド・ソウル歌唱という、対照的な二人のリード・ヴォーカルの妙味にある。炭鉱事故の地下に閉じ込められた男の絶望と妻への思慕を歌った「New York Mining Disaster 1941」では、静謐なアコースティック・ギターと緊張感あふれるストリングスが、ロビンの震えるような歌声を際立たせる。
そして世紀の名曲「To Love Somebody」では、バリー・ギブが敬愛するオーティス・レディングを意識して書いたソウルフルなバラードを熱唱。ビル・シェパードの重厚なホーンとストリングスが感情の昂ぶりを後押しし、胸を揺さぶるエモーションを生み出している。
さらに、グレゴリオ聖歌風の荘厳なチャントとモーリス・ギブによるメロトロンの怪しい響きが渦巻くヘヴィ・サイケ「Every Christian Lion Hearted Man Will Show You」、教会の讃美歌を思わせるオルガンとチェロが厳かな「Holiday」、疾走感あふれるビート・ポップ「Turn Of The Century」や「Cucumber Castle」など、万華鏡のように多彩なアレンジメントがアルバム全編を彩る。
時代の文脈
1967年はビートルズの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』が世界の音楽シーンを一変させ、「サマー・オブ・ラブ」のサイケデリック・ムーブメントが最高潮に達した年である。本作はその熱狂の渦中に登場しながらも、単なる流行の模倣にとどまらず、英国的なバロック・ポップの気品とアメリカン・ソウルの力強さを兼ね備えた独自の音楽性を確立した。
アルバムは全英アルバム・チャートで8位、全米総合チャート(Billboard 200)で7位を記録し、鮮烈な世界デビューを飾った。シングル「New York Mining Disaster 1941」が英米双方でTop 20入りを果たし、「To Love Somebody」が全米17位、「Holiday」が全米16位とヒットを連発。ギブ兄弟は瞬く間に世界的トップ・ソングライターとしての評価を確立した。
後世への影響
「To Love Somebody」はポピュラー音楽界の至宝となり、ニーナ・シモン(Nina Simone)やジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)、ロバータ・フラック、ロッド・スチュワートら数え切れないレジェンドたちにカバーされ、時代を超えて歌い継がれている。
また、本作が提示した緻密なコーラスワークとチェンバー・ポップ/サイケ・ポップの手法は、のちのELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)やクイーン、さらには90年代以降のエレファント6系(ニュートラル・ミルク・ホテル等)や現代のインディー・ポップ勢にまで深い影響を与えている。70年代後半のディスコ黄金期の爆発的ヒットとはまた異なる、若きギブ兄弟の瑞々しい才能とロマンティシズムが結晶した、不朽のサイケデリック・ポップ大名盤である。
トラックリスト
- A1 Turn Of The Century 2:24
- A2 Holiday 2:52
- A3 Red Chair, Fade Away 2:16
- A4 One Minute Woman 2:14
- A5 In My Own Time 2:12
- A6 Every Christian Lion Hearted Man Will Show You 3:32
- A7 Craise Finton Kirk Royal Academy Of Arts 2:15
- B1 New York Mining Disaster 1941 2:09
- B2 Cucumber Castle 2:02
- B3 To Love Somebody 2:58
- B4 I Close My Eyes 2:19
- B5 I Can't See Nobody 3:43
- B6 Please Read Me 2:13
- B7 Close Another Door 3:22
動画プレイリスト
このアーティストについて
Bee Gees(ビー・ジーズ)は、Barry Gibb、Robin Gibb、Maurice Gibbの3兄弟を中心に活動したロック/ポップ・グループだ。オーストラリアのブリスベ...
Bee Gees のプロフィール・作品一覧Bee Gees の他のレビュー